電子決裁とは?紙との違いやメリット、電子決裁システムの注意点を解説

Check!

  • 電子決裁とは、紙の書類に印鑑を押して承認を行っていた業務を電子化することである
  • 電子決裁はオンラインで申請・承認ができ、ペーパーレス化やテレワーク促進に繋がる
  • 電子決裁を行うには、解決したい課題や目的に適した電子決裁システムの導入が重要

電子決裁とは、紙の書類に印鑑を押して承認を行っていた業務を電子化することを言います。電子化することで、コスト削減や社外からでも申請・承認できるといったメリットがあります。本記事では、紙による決裁との違いやメリット、電子決裁システムの注意点を解説しています。

目次

開く

閉じる

  1. 電子決裁とは
  2. 紙による決裁と電子決裁の違い
  3. 電子決裁を導入するメリット
  4. 電子決裁システムを選ぶ際のポイント
  5. 電子決裁システムを導入する際の注意点
  6. 電子決裁システム導入の流れ
  7. まとめ

電子決裁とは

電子決裁とは、一連の決裁業務をコンピューター上で完結させるものです。稟議書は、従来のような紙媒体ではなく電子文書で作成され、稟議書の閲覧・捺印・回覧もすべてコンピューター上で行われます。

電子決裁の導入により、企業は紙やインク代のコストを削減できるほか、業務の効率化も期待できます。そのため、電子決裁は多くの民間企業で導入が増えています。

政府の「電子決裁移行加速化方針」

近年は民間企業だけでなく、行政や地方自治体でも電子決裁の導入が進んでいます。その背景には、政府が打ち出した「電子決裁移行加速化方針」があります。

電子決裁移行加速化方針とは、紙とハンコを使った決裁を廃止し、公文書の電子決裁を推し進める方針です。平成30年7月に行われたデジタル・ガバメント閣僚会議にて策定されました。

このような政府の後押しを受けて、近年は行政や地方自治体でも電子決裁の導入が進んでおり、今後も電子決裁の普及はますます進んでいくと予測されています。

参考:電子決裁移行加速化方針|首都官邸ホームページ

電子決裁とワークフローの違い

電子決裁とよく比較されるのがワークフローです。電子決裁とは前述の通り、電子上で一連の決裁業務を完結させる方法です。

対してワークフローとは、ある業務の一連の流れを指します。ワークフローを実現するワークフローシステムでは、業務を手順化し、その手順に沿ってシステム上で処理できます。

例えば、代表的なワークフローシステムには書類の作成・承認があり、電子上で書類の作成・提出・承認・保管などを一貫して行えます。この場合の書類とは、稟議書のほか、契約書・見積書・注文票など、多種多様なものを指します。

つまり、電子決裁は決裁業務に特化しているのに対し、ワークフローは多彩な業務を自動化できるのが特徴です。いうなれば、ワークフローの中のカテゴリの1つが電子決裁にあたります。

ワークフローとは?作り方や運用ポイントをわかりやすく解説

ワークフローとは、業務の申請・起案から承認、意思決定までの一連の流れのことです。ワークフローを作ることで、業務のスピードが上がり効率化が図れます。この記事ではワークフローの作り方や運用のポイント、またワークフローシステムを導入するメリットについて解説します。

紙による決裁と電子決裁の違い

従来の紙媒体での決裁に代わり、電子決裁の導入を検討している企業も多いでしょう。電子決裁は紙での決裁とはやや異なる点があるため、いきなり導入すると決裁業務が混乱する恐れがあります。

導入後のトラブルを避けるためにも、まずは紙での決裁と電子決裁の違いを適切に理解しておきましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

紙による決裁と電子決裁の違い

  1. 紙による決裁のやり方
  2. 電子決裁のやり方

紙による決裁のやり方

紙媒体での決裁は、一般的に以下のような流れで行われます。

  1. 部下が手動(パソコン)で稟議書を作成
  2. 作成した稟議書を印刷
  3. 部下が捺印
  4. 上長に申請(手渡しで提出)
  5. 上長(課長)が稟議書を閲覧
  6. 承認の証として稟議書に捺印
  7. 押印した稟議書を上長に手渡しで提出
  8. 上長(部長)が稟議書を閲覧・捺印
  9. 上長から役員に稟議書を手渡しで提出
  10. 役員が稟議書を閲覧・捺印
  11. 役員から社長に稟議書を手渡しで提出
  12. 社長が閲覧・捺印
  13. 決裁完了
  14. 稟議書を書類保管担当者へ手渡す
  15. 申請者に決裁完了の通知

紙での決裁は、稟議書の作成・申請・承認方法が限られている点にデメリットがあります。たとえば、基本的に稟議書の作成は社内のパソコンでしか行えず、上長が不在の場合は帰社するまで承認が受けられないため、決裁完了までに長い時間がかかることもあります。

また、支社から本社へ稟議書を提出する場合は郵送する必要があり、この場合も申請から決裁完了までに日数がかかります。現物(稟議書)を手渡しで回覧していく以上、決裁スピードは遅くなる傾向があり、紛失や破損のリスクもあります。

電子決裁のやり方

電子決裁の手順は、以下の通りです。

  1. 部下がパソコンで稟議書を作成
  2. 作成した稟議書をオンラインで上長に申請
  3. 上長(課長)がオンラインで承認・回覧
  4. 上長(部長)がオンラインで承認・回覧
  5. 役員がオンラインで承認・回覧する
  6. 社長がオンラインで承認
  7. 決裁完了

電子決裁は紙での決裁に比べて、申請から決裁完了までにスピード感があるのが特徴です。なぜなら、コンピュータ上で作成した稟議書はそのままオンライン上で回覧できるためです。

電子決裁システムとモバイル端末を連携させれば、社外でも稟議書の作成・チェックが可能になります。さらに、別の事業所への提出もワンクリックで済み、従来のように郵送する必要はありません。

このように電子決裁では、時間・場所にとらわれずに決裁業務を進められるため、決裁完了までにかかる時間を短縮できます。また、稟議書はすべてオンライン上でやりとりするため、紙媒体で起こりがちな紛失・破損のリスクも少なくなります。

電子決裁を導入するメリット

電子決裁には、決裁業務の効率化・コストカット・人的ミスの軽減といった、さまざまなメリットがあります。自社での導入を検討するためにも、まずは電子決裁のメリットを理解しましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

社外での申請・承認が可能

電子決裁システムの中には、スマートフォンやノートパソコンで利用できるものもあります。モバイル端末と連携できる電子決裁システムなら、社外からでも稟議書の作成・申請・承認が可能になるため、一連の決裁業務を効率化・迅速化できます。

従来の紙での決裁は、稟議書の作成のために部下が出先から帰社しなければならず、さらに上長不在の場合は回覧待ちが必要でした。一方で電子決裁システムなら、時間・場所に関係なく決裁業務に取り組めるため、従来よりもスピーディに決裁できます。

ペーパーレス化によるコストや手間の削減

電子決裁システムによって、従来のように稟議書を紙に印刷する必要がなくなるため、決裁業務にかかるコストや手間を削減できます。印刷の手間を省けるほか、紙・インク代も節約できます。決裁済みの稟議書の保管スペースも不要です。

また、ペーパーレス化は自社が環境に配慮しているというアピールにもなり、新規の取引先や顧客からの信頼性向上にも繋がるでしょう。ペーパーレス化・省スペース化を推し進めたい企業は、電子決裁の導入を検討しましょう。

人的ミスの軽減・不正な文書改変の抑制

電子決裁では、入力内容の不備といった人的ミスを軽減できます。電子決裁の多くは、システムに沿って必要項目を入力するだけで稟議書を作成できます。そのため、一から手動で稟議書を作成する場合に比べて、ミスが起こりにくいのが特徴です。

また、万が一ミスがあった場合でも、システムからすぐに稟議書を呼び出せるため、迅速修正できます修正履歴は保存され、誰が・いつ・どのように修正したのかを一目で把握でき、不正な文書改変の抑制にもつながるでしょう。

対して紙の稟議書を修正する場合は、まず現物を申請者に差し戻さなければならないため、修正完了までに時間がかかるのが難点です。また、誰が・いつ・どのように修正したのかを把握しづらい点もデメリットといえます。

迅速な意思決定と決裁の効率化

電子決裁は、従来の紙での決裁と異なり、回覧待ちの時間やミスがある場合の修正時間を大幅に短縮できるため、迅速な意思決定が可能になります。

また、電子決裁では決裁の進捗状況を一目で把握でき、回覧がどこで滞っているのかがすぐわかるため、ピンポイントで催促を行えます。この点も、決裁業務の迅速化・効率化につながります。

さらに、電子決裁なら過去の決裁書類もすぐに検索できて、類似案件の決裁の参考にできるため、意思決定が捗るでしょう。過去の事例を踏まえることで、より良い意思決定も可能になります。

テレワークの推進

電子決裁の導入は、テレワークの推進の面でもメリットがあります。従来の紙による決裁の場合、現物を手渡しで回覧したり、手動で捺印したりする必要があるため、決裁業務担当者はオフィスへの出勤が必要でした。

しかし電子決裁システムでは、稟議書の申請・回覧・承認はすべてコンピュータ上で行います。よって、個人保有のパソコンや、スマートフォンからでも決裁業務に取り組めるため、必ずしも担当者はオフィスにいる必要はありません。

テレワークやハイブリッドワークを推進したい企業は、電子決裁の導入によって、従業員の新たなワークライフバランスを確立することができるでしょう。

内部統制の強化・過去情報の容易な閲覧

電子決裁の導入は、内部統制の強化にもつながります。従来の紙の決裁では、稟議書が所定の承認ルートを通らずに決裁されたり、回覧途中での紛失や改ざん・偽造されるリスクがあります。

一方、電子決裁システムでは、稟議書はあらかじめ設定されたルートで回覧されるため、承認ステップの抜け落ちがありません。データはすべてオンライン上でやりとりされ、紙の稟議書のような紛失のリスクも少ないです。

また、電子決裁はシステム内に変更履歴が残ことで、誰が・いつ・どのように変更したのか一目で把握でき、紙媒体と比較して改ざんのリスクは大きく減ります。

さらに、システム内に過去の稟議書の情報が管理され、設定したID・日付・タイトルなどから必要な時にすぐ検索・閲覧ができ、過去に作成された稟議書を簡単に閲覧できます。

電子決裁システムを選ぶ際のポイント

電子決裁を実現するには、電子決裁システムの導入が必要です。搭載機能は、それぞれの電子決裁システムによって異なります。また、オンプレミス型・クラウド型などさまざまな種類があるため、自社のニーズに適したものを選びましょう。

電子決裁システムを円滑に運用するには、自社に適したものを選ぶことが大切です。ここからは、電子決裁システムを選ぶ際のポイントをご紹介します。電子決裁システムの導入を検討中の企業はぜひ参考にしてみましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

本人以外は利用できないログイン設定

電子決裁システムを利用する際、そのシステムを利用する本人以外は閲覧・承認ができないように設定をする必要があります。たとえば、システムを利用するには、管理者しか知らないログインID・パスワードなどを入力する必要があるといった設定をします。

決裁を必要とするデータは、企業にとって非常に重要な機密事項であり、基本的には役職が上のものしか管理できないものです。よって、その本人以外は利用できない環境を作ることは、なりすましの防止につながります。

大きなトラブルを防ぐためには、システムの利用者が本人であるということを証明し、オンライン上で申請・承認をする必要があります。

申請内容の改ざん防止と承認履歴

ログイン設定と付随して、申請内容の改ざん防止と承認履歴の管理も徹底する必要があります。申請内容が閲覧者によって改変・改ざんできてしまうと、申請時の決裁内容に違いが生じ、社内トラブルに発展する恐れがあります。

システムによっては、「コメントは可能であるが編集は申請者以外不可」といったものもあるため、システム選びにも注視しましょう。

また、誰が・いつ・承認可否についてを記録して、承認・決裁履歴も残せるとセキュリティ面の強化につながります。この履歴を社内で共有することで、システムとしての確立・今後の業務の効率化にも期待できます。

オンプレミス型・クラウド型の費用確認

電子決裁システムには、以下のようなオンプレミス型とクラウド型の2種類があります。

  1. オンプレミス型:自社のサーバーを利用する
  2. クラウド型:ベンダー会社が提供するインターネット上のサーバーを利用する

それぞれに特徴とメリット・デメリットがあるため、費用感と合わせて自社に適しているかを確認しましょう。以下では、オンプレミス型とクラウド型について詳しく解説します。

オンプレミス型

オンプレミス型はインターネットに接続せず、自社内のネットワークでシステムを完結させるため、データ流出が起きにくいです。また、自社にあわせて柔軟なカスタマイズができ、ユーザー数が増えるほど全体のコストが割安になるため、大規模な企業に向いています。

ただし、オンプレミス型は自社でインフラ整備を行うため、導入費用が高額になりやすいです。法改正などの際には手動でアップデートしなければならず、外部ネットワークに接続しないため、リモートワークや社外からの利用が難しい点にも注意しましょう。

クラウド型

クラウド型は、インターネットを介してベンダーのサーバーにアクセスして利用する形態で、リモートワーク・社外から利用したい場合におすすめです。

インフラ整備や法改正への対応は基本的にベンダーが行うため、オンプレミス型に比べるとランニングコストが安く、運用・管理も容易です。そのため、導入や運用にできるだけコストを抑えたい中小企業に適したタイプです。

ただし、クラウド型はインターネット上で情報を管理するため、セキュリティ面に気をつけなければなりません。また、月額利用料金はユーザーごとにかかるため、従業員数が多い企業は運用コストが莫大になる点にも留意しましょう。

自社に必要な機能を確認

電子決裁システムを導入する際は、自社に必要な機能を確認しましょう。たとえば、承認ルートの抜け落ちを防ぎたい場合は、ルート設定ができるシステムが適しています。社外での決裁業務を推進したい場合は、クラウド型のシステムが良いでしょう。

電子決裁システムの導入によって、解決したい課題・達成したい目標を明確にすることで、自社に必要な機能を見極めやすくなります。

無料トライアルがあるか確認

電子決裁システムに限らず、新しいシステムやツールは導入後にミスマッチが発覚することも多いです。ミスマッチを防ぐには、無料トライアルを利用するのも良い方法です。

無料トライアルを活用することで、そのシステムの操作性・使用感・効果が実感できます。電子決裁システムを検討する際は、まず自社が求めるシステムに無料トライアルがあるかどうかを確認し、ある場合は無料トライアルから試してみると良いでしょう。

電子決裁システムを導入する際の注意点

電子決裁システムにはさまざまなメリットがありますが、同じく注意点も存在します。導入・運用に失敗しないためにも、あらかじめ電子決裁システムの注意点を理解し、対策を講じておきましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

導入コストがかかる

電子決裁システムの導入の際は、インフラ整備費などの導入コストがかかります。特にオンプレミス型はすべて自社でまかなう必要があるため、クラウド型に比べてランニングコストは高くなります。

また、オンプレミス型・クラウド型にかかわらず、導入の際はシステムに精通した人材も必要です。管理者がシステムについて詳しくないと、その後の管理が厳しくなるため、人件費やシステムの運用・管理費が想像以上にかかる点にも留意しましょう。

電子化のための環境整備が必要

電子決裁システムを導入する際は、社内で電子化のための環境を整える必要があります。例えば、クラウド型を導入する場合、社内のインターネットの繋がりが悪いと、決裁完了に時間がかかったり、途中でシステムが固まってしまう恐れがあります。

また、従業員のITリテラシーが低い場合、電子決裁に慣れるまでに期間を要したり、セキュリティ意識が低いことで情報漏洩に繋がるリスクがあります。そのため、電子決裁システムを効果的に運用するために、インターネット環境の確認と従業員への教育が必要です。

業務フローの見直しが必要な場合がある

電子決裁システムを導入する際は、既存の業務フローの見直しが必要です。新しいやり方を取り入れる以上、古いやり方は廃止・見直さなければなりません。たとえば、稟議書の申請先・回覧の順番などに変更が出る恐れがあります。

新システムの導入直後は、混乱やトラブルが起こりやすいものです。できる限り混乱やトラブルを減らすために、マニュアルや使用ルールの策定・周知は早めに行いましょう。トラブル発生時に備えて、電子決裁システムの担当者・担当チームを設置するのも良い方法です。

全ての契約が電子決裁に対応できるわけではない

電子決裁システムを導入しても、全ての契約を電子化できるとは限りません。たとえば取引先のIT導入が進んでおらず、電子決裁を拒否された場合などが該当します。

システム導入を無駄にしないためには、あらかじめ取引先などの関係各所に電子決裁の対応可否を尋ねたり、理解を求めたりすることが大切です。

電子決裁システム導入の流れ

電子決裁システムを導入する流れは次のようなものです。

  1. 自社の課題の洗い出し
  2. 運用部署・利用ユーザーなどの利用範囲を明確化
  3. 自社に必要な機能・システムを確認
  4. ツール・システムの選定
  5. 無料トライアル
  6. 本格導入

まずは、電子決裁システムの導入によって解決したい課題・達成したい目標を明確にすることで、自社に必要な機能やシステムが見極められます。

ツール・システムの選定後は、いきなり本格導入するのではなく、無料トライアルを活用することでミスマッチを防げるでしょう。その無料トライアルで問題がなければ、本格的な導入に進みましょう。

まとめ

電子決裁とは、従来は紙とハンコで行っていた決裁業務をコンピュータ上で行うものです。従来と比べて、回覧待ち・修正にかかる時間を大幅に短縮できるため、決裁業務の効率化が期待できます。現在は民間企業だけでなく、行政や地方自治体でも導入が進んでいます。

電子決裁システムの多くは社外からの利用も可能なため、リモートワークの定着にもつながります。また、稟議書の紛失や改ざんを防止して内部統制を強化できるほか、ペーパーレス化を実現できる点もメリットです。

電子決裁システムを選ぶ際は、自社の課題や状況にあわせて、オンプレミス型・クラウド型を選択しましょう。導入前に業務プロセスを見直すことで、円滑な運用が可能になります。
自社に適した電子決裁システムを導入・適切に運用し、業務の効率化や生産性の向上につなげていきましょう。

Share

top