リファレンスチェックは拒否できる?断られたときの対処法も解説

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  • リファレンスチェックは採用時の参考資料として役立つが、候補者は拒否することが可能
  • 候補者がリファレンスチェックを拒否したことによる内定取り消しは違法である
  • Webフォームを使うなど、推薦者の負担を減らすことで対応してもらいやすくなる

採用活動においてリファレンスチェックを実施したいと考える企業は多いでしょう。しかし、個人情報を扱う行為であるため、候補者の同意なく行うことはできません。本記事ではリファレンスチェックを行う際のポイントや、拒否されたときの対処法などを解説します。

目次

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  1. リファレンスチェックは拒否できるのか
  2. リファレンスチェックを実施する際のポイント
  3. リファレンスチェックが拒否される理由
  4. リファレンスチェックを断られたときの対処法
  5. 推薦者のなりすましに注意する
  6. まとめ

リファレンスチェックは拒否できるのか

求職者や採用候補者は、企業のリファレンスチェックを拒否できます。また、本人にリファレンスチェックを拒否された場合、企業側が強行することはできません。リファレンスチェックで取得できる情報は個人情報保護法の対象であるためです。

リファレンスチェックは、候補者の人となり・スキル・働きぶりを企業が知るために重要であり、拒否された場合、その人物を客観的に判断する手段を失います。しかし、内定後にリファレンスチェックを拒否されたとしても、それを理由に内定を取り消すのは違法です。

リファレンスチェックを円滑に行うには、企業側が、候補者がリファレンスチェックを拒否する理由を知る必要があります。加えて、リファレンスチェックに同意してもらえるような体制作りに取り組みましょう。

参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省

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リファレンスチェックとは

リファレンスチェックとは簡潔にいえば「身元照会」のことで、採用の場面では、応募者の前職・実績・勤務状況・職場の人間関係を、前の職場の上司・同僚に確認する作業です。

リファレンスチェックは、主に次のような目的で実施されます。

  1. 経歴・職歴・実績に偽りがないか確認する
  2. 周囲の意見から、応募者本人のスキル・働きぶり・人となりを客観的に判断する

リファレンスチェックによって本人の情報を多角的に集めることで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

リファレンスチェックはアメリカの採用活動では一般的な作業です。日本ではまだ馴染みが薄いものの、最近はマッチング率の向上などのために、さまざまな企業で導入が進んでいます。

リファレンスチェックの方法

リファレンスチェックは、候補者(応募者)がリファレンスチェックの回答者を推薦する場合と、採用を検討している企業が回答者を探す場合があります。リファレンスチェックの具体的な実施方法としては、書類形式とインタビュー形式があります。

書類形式は、質問事項を記載した書類を回答者に渡し、回答を記入してもらった後に回収する方法です。インタビュー形式は、採用担当者が回答者に対し訪問や電話で、候補者に関する質問を行う方法です。

書類やインタビューを通して、候補者の勤怠状況・人となり・業務経験・スキルなどの項目について質問します。

企業がリファレンスチェックを行うメリット

リファレンスチェックを行うことで、候補者の過去の実績や人物像を確認し、採用の意思決定の質を高められます。履歴書や面接だけでは得られない情報を収集し、総合的に判断することで、適切な人材の採用につなげることが可能になります。

また、応募者の提供する情報の真実性を確認する手段としても有効です。過去の勤務先に直接確認することで、詐称や偽りの経歴を発見し、不適切な採用を防げます。

さらに候補者の人柄や働きぶり、コミュニケーション能力なども確認できるため、企業の組織文化にマッチした人材であるかどうかを見極める材料となります。

リファレンスチェックを実施する際のポイント

リファレンスチェックは優秀な人材の確保や入社後のミスマッチを防ぐのに有効な手段です。しかし誤った取り組み方では、候補者に拒否されたり、採用後のトラブルにつながったりするおそれがあります。

無用なトラブルを防ぐためにも、リファレンスチェックを実施する場合、企業は次のようなポイントを抑えておきましょう

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内定を出す前に実施する

リファレンスチェックは内定を出す前に実施しましょう。具体的なタイミングは企業の判断によって異なりますが、一般的には最終試験の前後に実施されています

内定は一種の労働契約にあたるため、不当な取り消しは違法です。そのため内定後にリファレンスチェックを行い、ミスマッチが発覚した場合でも、それを理由に内定を取り消すことは原則としてできません

法的リスクを低減するためにも、リファレンスチェックは内定を出す前に実施するのが理想的です。

候補者の同意を得る

リファレンスチェックを行う場合は、必ず応募者本人の同意を得てください。リファレンスチェックで取り扱う情報は個人情報保護法の対象であり、無断でのリファレンスチェックは違法行為にあたります。

なお、リファレンスチェックを拒否された場合も、企業が断行することはできません。しかし、リファレンスチェックは重要な選考材料であるため、候補者側は、「リファレンスチェックの拒否=選考の辞退」とみなされることもある点を認識しておきましょう。

取得した情報の取り扱いに注意する

リファレンスチェックで取得した情報は個人情報保護法の対象となるため、企業側は取り扱いにくれぐれも注意してください。

取得した情報は人事部以外に流さない・強固なセキュリティシステムで管理するといった対策が必要です。

リファレンスチェックの実施を事前に伝えておく

リファレンスチェックを円滑に実施するには、事前に候補者に告知しておくのが望ましいです。たとえば求人票を出す段階で「リファレンスチェックあり」と周知しておけば、リファレンスチェックを受けたくない候補者の応募は少なくなります。

選考開始後にリファレンスチェックを拒否されて選考が行き詰まるのを防ぐためにも、リファレンスチェックの実施は前もって広く周知しておきましょう。

候補者へのメリットを提示する

リファレンスチェックを拒否されないためには、候補者側のメリットを提示するのも有効です。自分にメリットがあると知ることで、候補者もリファレンスチェックを受け入れる可能性が高くなります。

候補者側にとってのリファレンスチェックのメリットには次のようなものがあります。

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経験をアピールできる

候補者はリファレンスチェックを受けることで、自己アピールを補完できるというメリットがあります。たとえば履歴書や面接で伝えた経験・実績・強みを、リファレンスチェックで前職の上司や同僚が肯定してくれれば、それが真実だと応募企業に強く印象づけられます。

また、第三者の声を聞くことで、面接や履歴書で伝えきれなかったアピールポイントを発掘できる可能性もあります。自己発信という点では、リファレンスチェックは候補者にとって大きな意味があるでしょう。

適性を活かせる部署に配属されやすい

リファレンスチェックを受けることで、候補者は入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。企業は、リファレンスチェックを通して前職での経験や実績を把握したうえで、候補者の入社後の配属先を決定するためです。

自分の経験やスキルを活かせる場に配属されれば、即戦力として実績を上げられます。また、配属先の選定には、候補者の人となりもある程度考慮されることが多いため、配属先でもすぐに円滑な人間関係を築きやすいでしょう。

リファレンスチェックが拒否される理由

リファレンスチェックが拒否される割合はあまり高くありませんが、少なからず拒否されるケースがあるのも事実です。なお、リファレンスチェックの拒否は候補者本人ではなく、推薦者やリファレンス先企業が行う場合もあります。

リファレンスチェックが拒否される理由について、候補者・推薦者・リファレンス先企業の立場別にご紹介します

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候補者が拒否する理由

候補者がリファレンスチェックを拒否する背景には、転職活動を不利にしたくないという思いが隠れていることが多いです。具体的なリファレンスチェック拒否の理由をご紹介します。

在籍中の企業に転職活動がばれるのを防ぎたい

代表的な理由は、在籍している企業に転職活動を知られたくないというものです。リファレンスチェックは前職の上司や同僚に調査を行うため、リファレンスチェックの実施によって在籍企業に転職活動が知られることとなります。

無職を回避するために、別企業に在籍したまま転職活動をする候補者は少なくありません。そういった候補者は、職場に居づらくなるのを防ぐために、転職活動を秘密にする傾向があります。

リファレンスチェックによって職場に転職活動を知られれば、やはりその職場には居づらくなるものです。特に転職に失敗した場合、候補者のリスクは極めて大きくなるでしょう。

そういったリスクを軽減するために、別企業に在籍している候補者は、リファレンスチェックを拒否することが多いのです。

前職の人間と関わりたくないので頼めない

前職関係者に連絡を取りたくないという理由から、リファレンスチェックを拒否する候補者もいます。たとえば前の職場の上司や同僚と仲が悪いケースが代表的です。ネガティブな意見を言われる可能性があるため、リファレンスチェックを拒否する傾向があります。

あるいは、パワハラや嫌がらせを受けていた、ブラック企業だった、などの理由で正規の手続きを踏まずに退職し、連絡を取りづらいというケースも少なくありません。

前職関係者と関わりたくないことが理由の場合、必ずしも本人に原因があるとは限らないため、企業側は注意深くヒアリングを行う必要があります。

履歴書や面接で虚偽の申告をしている

履歴書や面接で偽りの経歴・実績を申告している候補者はリファレンスチェックを拒否する傾向があります。理由は当然、嘘をついたと知られるのを防ぐためです。

虚偽申告をする候補者は採用を見送るのが無難でしょう。しかし、リファレンスチェックを拒否されただけで、申告内容に虚偽があると判断はできません。

対策としては、リファレンスチェックを拒否する理由を尋ねる方法があります。明確な答えが返ってこない場合は、なにか後ろ暗いことがある可能性が高いです。再選考を検討しましょう。

推薦者が拒否する理由

「推薦者」とはリファレンスチェックに回答する人を指します。リファレンスチェックは、候補者が指定した「推薦者」から候補者本人の話を聞くものです。リファレンスチェックは次のような理由で、推薦者から断れるケースもあります

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候補者との関係が良くなかった

候補者と推薦者の関係が良くなかった場合、推薦者がリファレンスチェックを拒否する可能性があります。たとえば候補者と推薦者が喧嘩したケースが代表的です。あるいは候補者の勤務態度が悪く、上司や同僚が転職に手を貸したがらないというケースもあります。

候補者と推薦者の関係が良くない場合、仮にリファレンスチェックを実施できても、信頼性のある情報は引き出せない可能性が高いです。リファレンスチェック以外で、候補者の経歴や人となりを確認する手段を検討してみましょう。

人事異動や多忙で対応できない

都合がつかないため推薦者がリファレンスチェックを断るケースもあります。たとえば退職・人事異動により、職場にいないケースが代表的です。あるいは、単純に多忙のため協力できないというケースも少なくありません。

そもそもリファレンスチェックは、推薦者や前の職場に利益があるものではないため、時間や労力を割きたくないと考える推薦者も多いです。

協力を取り付けるには、決算期などの多忙な時期は避ける・人事異動シーズン前にリファレンスチェックを行うといった対策が必要です。

リファレンス先企業が拒否する理由

リファレンスを依頼した人物ではなく、その人物が所属する企業がそもそもNGを出すこともあります。リファレンス先の企業に拒否される理由としては、主に次のようなものがあります。

決算期などで多忙・担当者が不在

組織が全体的に多忙であり、リファレンスチェックに人員を割きたくないという理由から、リファレンスチェックを拒否されることがあります。たとえば繁忙期・決算期などはどの部署も忙しいため、拒否される確率が高いです。

また、候補者をよく知る人物が退職した、配属先が転換された、などの理由ですでに現場にいない場合も、企業がリファレンスチェックを拒否することが多くなります。

特に、候補者が長年休職していたり、退職してから数年経過していたりする場合は、リファレンスチェックに適した人材がいない可能性も高いです。候補者を知る人物がいなければ、信頼性の高い回答はできません。

あるいは、候補者の転職に手を貸したくないというのも、リファレンス先の企業の代表的な拒否理由です。たとえば候補者が優秀であり、手放したくない場合などが該当します。

法的なリスクを回避したい

法的なリスクの回避のために、リファレンス先の企業がリファレンスチェックを拒否することもあります。リファレンスチェックでやりとりする情報は個人情報にあたるものも多く、情報保護には十分注意しなければなりません。

もし個人情報保護法に違反するような行為があった場合、悪意はなくとも違法行為とみなされます。そういったリスクを避けるために、そもそも個人情報のやりとり(リファレンスチェック)をしないという企業もあります。

あるいは、リファレンスチェックは候補者の採用を大きく左右することから、重責を逃れるために拒否するケースもみられます。

リファレンスチェックを断られたときの対処法

リファレンスチェックが拒否された場合、企業は別の手段で候補者の経歴や人となりを調べることが可能です。たとえば次のような方法が考えられます。

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第三者に依頼する

候補者が過去に転職している場合、リファレンスチェックの対象を前職以前にまで広げてみましょう。たとえば前々職の上司・同僚などが該当します。

ただし、リファレンスチェックでは鮮度の高い情報を得たいことから、できれば直近の在籍企業の人物の話を聞くことが望ましいとされています。協力してもらうために、候補者・推薦者の両方に丁寧な説得を行ってください。

どうしても直近の職場にリファレンスチェックを頼めない場合は、前職以前に遡る必要があります。あるいは、前職の取引先相手に協力してもらうのも良い方法です。候補者本人に、依頼しやすい推薦人がいないか確認してみましょう。

オンラインを取り入れる

リファレンスチェックの拒否を回避するには、リファレンスチェックに協力しやすい体制を整えることも大切です。

従来のリファレンスチェックは、直接企業に出向いて対面式で行うほか、電話やメールで行うものでした。この方法は、リファレンスチェックに応える人物(推薦者)の時間や労力を削るのが難点です。

推薦者の負担を減らすには、リファレンスチェックをオンラインで行う方法があります。たとえば、「YES/NO」で応えられるようなアンケートならば、推薦者の負担もさほど大きくないでしょう。また、時間・場所を問わず取り組める点もメリットです。

このような点を踏まえて、リファレンスチェック用のオンラインフォームを作成したり、リファレンスチェックツールを導入したりするなどして、協力してもらいやすい体制作りを進めましょう。

リファレンスチェックを行えない場合もある

ここまで、リファレンスチェックを断られた際に、工夫を凝らしてリファレンスチェックを実施する方法を解説してきました。しかし、リファレンスチェックは強制できるものではないため、候補者によってはどうしても実施できない場合もあります

どうしても適切な推薦者がいない候補者も存在するため、そのような場合は、候補者に事情を確認した上で、柔軟な対応が必要です。

リファレンスチェックは企業の選考において重要な判断材料であるため、リスク管理の観点からリファレンスチェックを必須とするのであれば、リファレンスチェックを行えない候補者は不採用とするほかありません

しかし、中にはリファレンスチェック以外の方法で候補者を評価する取り組みを実施している企業もあります。例えば、業務テストや体験入社で候補者の能力を測るのが有効です。

推薦者のなりすましに注意する

リファレンスチェックにおいて、第三者が推薦者になりすまして虚偽の回答を行い、経歴を詐称するケースもあるため注意が必要です。このような、いわゆる替え玉を防ぐには、リファレンスチェックを行う際に、推薦者の身元確認を行う必要があります。

また近年では、SNSを転職活動やリファレンスチェックに活用するケースも見受けられます。しかし、中には候補者が印象操作を企てる悪質なケースも存在するため、細心の注意を払うことが不可欠です。

まとめ

リファレンスチェックは中途採用の選考で行われるもので、候補者の経歴・実績・人となりを、実際に一緒に働いていた人物に確認するものです。企業・候補者の双方に、ミスマッチの防止や適正な配属が可能になるといったメリットがあります。

しかし、リファレンスチェックは候補者や推薦者が拒否することもあります。拒否された場合、リファレンスチェックは個人情報保護法にも関連するため、企業側が独断で実施することはできません。

万が一拒否された場合、企業側はリファレンスチェックの対象を前職以前に広げる、協力してもらいやすい体制を整える、などの方法で対処し、企業にとって有益で魅力的な人材の確保に努めましょう。

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