マイクロマネジメントとは|意味や特徴・対処法をわかりやすく解説
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- マイクロマネジメントとは、上司が部下に過度に干渉してしまうマネジメントのこと
- マイクロマネジメントにより、部下のモチベーション低下や上司の業務負荷が起きる
- マイクロマネジメントが起きないように、マネジメント方法を見直す必要がある
マイクロマネジメントでは、上司が部下を細かく管理してしまうことで、部下のモチベーションを下げ、パフォーマンスが低下するリスクがあります。本記事では、マイクロマネジメントがおきる心理的要因や上司の特徴を解説し、対策についても紹介します。
目次
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マイクロマネジメントとは
マイクロマネジメントとは、上司やリーダーが部下に対して細かすぎる管理をするなど、過干渉を意味する間違ったマネジメント手法です。マイクロマネジメントは、社内の人間関係を崩す要因のひとつとして、危険視する企業も増えています。
具体的には、業務の進捗状況の報告を過度に求めたり、所作ひとつひとつに対しても指摘をしたりすることが挙げられます。このようなケースは、上司が心配性だったり、失敗を恐れていたりする心因的要因が原因のひとつです。
マイクロマネジメントにより、部下のパフォーマンスが低下するため、業務の生産性も低下していく傾向があることから、対処を検討する必要があります。
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マイクロマネジメントとは
マイクロマネジメントの例
マイクロマネジメントは上司が部下に対して干渉し過ぎることを指し、場合によってはパワーハラスメントやモラルハラスメントと受け取られる危険性もあります。ここでは、実際にどこからがマイクロマネジメントになるかについて、具体的な事例を挙げて紹介します。
- 電話の内容を盗み聞きされ口出しされる
- 業務の進捗状況を頻繁に報告させられる
- 服装や持ち物を必要以上にチェックされる
- 休日や休憩中も連絡がある
- 長時間の説教がある
- 社内メールやチャットの返信時間に無理な期限を付けられる
以上の事例は一部ですが、一般的に必要以上の管理と見受けられます。このようなマイクロマネジメントは、従業員全体にさまざまな悪い影響を与え、円滑なコミュニケーションを阻害します。
従業員の定着率悪化や、パワハラ問題への発展を避けるためにも注意が必要です。
マイクロマネジメントの対義語
マイクロマネジメントの対義語となるのが「マクロマネジメント」です。マイクロマネジメントとは異なり上司からの干渉は最小限で、基本的には部下の自主性に任せます。
マクロマネジメントでは自ら学ぶ機会が増えるため、自主性の育みとキャリアアップ形成に役立ちます。また、上司からの指示を仰がないと行動できない「指示待ち人間」が減り、自ら考えて行動できる主体性を持った人材が増えることも期待できます。
マクロマネジメントによりチーム内でのモチベーションが高まれば、創造力に溢れた柔軟な考え方が生まれやすくなると言われています。
マイクロマネジメントが増えている背景
なぜ、マイクロマネジメントが増加傾向にあるのかというと、テレワークやリモートワークの普及、働き方の多様化など現代における、勤務スタイルの変化が要因のひとつになっていると考えられます。
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マイクロマネジメントが増えている背景
テレワーク・リモートワークの普及
新型感染症の流行をきっかけに、テレワーク・リモートワークを導入する企業が増えました。在宅勤務の場合、上司は部下の行動が見えないため、過度な監視体制がマイクロマネジメントに繋がったのではないかという見解があります。
上司側では、部下が見えない場所で行っている仕事は、生産性が低下しているという思い込みが発生するケースが多く見られます。部下はテレワークでも生産的に仕事をしていると自覚があっても、思い込みのギャップは埋めにくい状況になってしまいます。
常に監視下にないことで発生する、心因的要因がマイクロマネジメントを引き起こしている可能性があります。
働き方や人材の多様化
最近では、育児・介護と両立しながら働く形や、中途採用など、働き方も多様化し大きく変化しているため、従業員同士のコミュニケーションや、情報共有の機会が減少傾向にあります。
そのような状況の中、全員に情報が共有されているか上司が不安を感じることで、部下に対して頻繁な確認や報告を求めるなど、過度な干渉をするケースが増えています。
また、人材不足や働き方改革による労働時間の減少も要因のひとつです。上司は効率よく、短時間で仕事を行おうと自分のやり方を押し付けてしまい、マイクロマネジメントに繋がっているケースも考えられます。
主力市場の競争激化
主力事業がある程度成熟すると、市場の競争は激化して業績が伸びづらくなります。この課題に対応するためには、新規事業や新しい価値の創出など、これまでの事業を大きく転換しなければなりません。
しかし、主力事業で大きな成功を収めてきた上司ほど、変化に対する抵抗が高まりやすくなります。そのため、部下にこれまでの慣例を押し付けたり、新しい考え方を認めなかったりと、マイクロマネジメントが強まる傾向にあります。
マイクロマネジメントになる心理的原因
上司はなぜ部下に対し、マイクロマネジメントを行うのでしょうか。原因としては、心配や不安を抱えやすかったり、自己顕示欲が強かったりする特性が挙げられます。以下で具体的に解説します。
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心配や不安が強い
基本的に、上司が指示を出し部下が業務を実行しますが、指示が伝わっているか、また管理できているのか不安になる上司も少なくありません。なぜなら、上司は管理監督責任があるため、部下のミスは自身の監督不行き届きと見なされるためです。
上司自身が業務を実施していないため、進捗状況が気になり、頻繁に報告を求めたり、メールやチャットを細かくチェックしたりなど、心配や不安を払拭するためにマイクロマネジメントを行ってしまうケースが多い傾向にあります。
自己顕示欲が強い
上司が「自分の能力を部下にアピールしたい」「自分を目立たせたい」など自己顕示欲が強い場合、部下からの尊敬や信頼を手に入れたい、という欲求を満たすためにマイクロマネジメントを行ってしまうケースがあります。
たとえば、業務に対し自分のやり方や考え方、服装など持ち物まで同じものを強要したり、デスクや小物などの使い方に口出しをしたりします。しかし、部下から信頼を受けるどころか、間接的に否定をしているため、信頼関係を失ってしまいます。
マイクロマネジメント型の上司の特徴
マイクロマネジメント型の上司は、職場の雰囲気を壊して部下のやる気を潰すことから、「クラッシャー上司」と呼ばれることもあります。しかし、本人はマイクロマネジメントを行っていることに気付いていないケースも少なくありません。以下の特徴に、自分や上司が該当していないか確認してみましょう。
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マイクロマネジメント型の上司の特徴
部下に仕事を任せられない
できるだけ自分のやり方で仕事を進めたいと考えていたり、部下の業務内容に不満を持ったりと、なかなか部下に仕事を任せられない上司は、マイクロマネジメントを行う傾向があります。
常に自分の考え方や業務の進め方を押し付けるタイプは、過去に数多くの成功経験を持つ上司である場合も多いです。自分が管理しやすいように細かいルールを作ったり、「なぜできない」などと、自分と同じ行動を強要したりするケースが見られます。
部下の考えや意見を聞かない
常に自分が正しいと考えている上司は、部下の考えや意見を聞き入れない傾向があり、マイクロマネジメントを行いやすいです。部下は自分の指示で、自分の思い通りに動いてほしいと考えます。
そのため、部下が思い通りの行動をとらないと、マイクロマネジメントを行います。仕事を行う上で、自分の考えや意見が通ることは、大きな喜びとなり業務に対するモチベーション維持にも繋がります。
しかし、自分の考えや意見をシャットアウトされてしまうと、部下の業務に対する意欲は低下する一方です。
実力至上主義で自身の間違いを認めない
自分の能力に対して強い自負心を持っている上司も、マイクロマネジメントを行いやすい傾向です。実力で今の地位を築いた自分は、他の人々よりも優れていると感じ、その考えが行き過ぎると、部下を見下したり横柄な態度をとったりするようになります。
そのような上司は、万が一自分が間違っていても決して間違いを認めず、謝ることもしません。一方、部下がミスを犯した際は、必要以上に叱責したり責任を追求したりしがちです。
問題ばかり指摘して褒めない
部下に対し、問題ばかり指摘して褒めない上司は、マイクロマネジメントを行う傾向があります。基本的に指示を行った業務に対し、問題があれば指摘しなければなりません。しかし、指摘だけでなく褒めることも大切です。
指摘ばかりでは、自分が肯定されていないと考え、心理的に負担を感じてしまいます。上司は教育のつもりで指摘をしていても、部下にしてみれば否定されてばかりで、仕事を押し付けられているだけと感じてしまいます。
否定するだけではなく、肯定することを正しいと考えていないため、些細なミスでも追及するなどのマイクロマネジメントを行いやすいです。
細かいルールを設定する
マイクロマネジメントを行いやすい上司の特徴として、業務に対し細かいルールを作る傾向があります。自分の思い通りの業務を進めたいと考えるため、細かくルールの設定を行います。
ルールの設定は、業務を行う上で必要ですが、細かすぎると監視されているようで、窮屈さを感じます。そのため、部下のモチベーション低下を招く要因になりかねません。完璧主義・神経質・頑固な性格の人が起こしやすい傾向があります。
マイクロマネジメントによる組織や部下への影響
マイクロマネジメントは、部下のモチベーション低下や離職のきっかけになるなど、デメリットになるケースが多いです。以下で具体的に、マイクロマネジメントによる組織や部下への悪影響やデメリットを解説します。
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マイクロマネジメントによる組織や部下への影響
部下のパフォーマンスが低下する
マイクロマネジメントが及ぼす最大の悪影響が、部下のパフォーマンス低下です。部下は上司にこと細かく業務を指示され、監視化のもと上司の求める行動を取らなければなりません。
そのため、自分の意思で行動できず、指示されないと業務が進まなくなります。自分の意思で行動すると、上司に指摘されることを恐れてしまうためです。
従業員がそれぞれの業務に責任を持って取り組むことが、組織全体のパフォーマンス向上に繋がりますが、マイクロマネジメントの存在により、部下だけでなく組織全体のモチベーション低下を招いてしまいます。
主体性のある人材が育たない
マイクロマネジメントが及ぼす悪影響には、自分で考えられる、主体性のある人材が育たないことも挙げられます。マイクロマネジメントを行う上司は、自分の考え方ややり方が絶対であるため、部下には同じ考えややり方を強要しがちです。
部下が自分の考えを述べることは許されない環境であるため、施作などを考えるモチベーションは低下します。上司の指示通りに動くことが安全と考え、指示待ち人間となり考える力も低下していまいます。
そのため、主体性のある人材育成は、マイクロマネジメント下では困難です。
部下のキャリア形成が阻害される
マイクロマネジメントが及ぼす悪影響として、部下のキャリア形成の阻害が挙げられます。上記で解説したような、指示待ち人間による考える力の低下を招き、成長に伸び悩む人材が増えてしまいます。
マイクロマネジメントにより、成長するチャンスを失い、部下が目指していたキャリアを積むことができず、キャリア形成が阻害されます。
メンタルヘルスが悪化する
マイクロマネジメントは、メンタルヘルスへの悪影響も及ぼします。上司による行き過ぎた監視や、細かいルール設定の強要、また些細なミスへの過度な追求などに萎縮してしまうため、部下へ大きなストレスがかかります。
マイクロマネジメントが原因で、部下のメンタルヘルスが悪化した場合、うつ状態になるリスクも高いです。最悪の場合、ハラスメント問題に繋がり訴訟などに発展する可能性もあります。
離職率が上がる
優良な社員の離職率が上がることも、マイクロマネジメントによる悪影響のひとつです。自分の意見や考え方が通らず、否定ばかりされているため、業務だけでなく組織に対しても理不尽さを覚えます。
キャリア形成を目指して取り組んでいた人材は、モチベーションを維持できず離職を選択します。採用や育成にコストをかけてきた社員を手放すことは、組織にとっても大きなダメージです。競合他社に有力な人材が回ってしまう原因にもなりかねません。
上司の業務負荷が増える
マイクロマネジメントは、マイクロマネジメントを行う本人にも悪影響を及ぼします。部下の仕事のクオリティに満足できない上司は、部下に仕事を任せられないため、自分で処理せざるを得なくなります。
そのため、業務負担が大きくなり、全体に目が行き届かなくなるため、上司や管理職の役割を果たせない状況になりかねません。その結果、組織としての生産性やパフォーマンスの低下に繋がるケースもあります。
マイクロマネジメントをしないための対策
以上では、マイクロマネジメントを行う上司の特徴や、悪影響などを解説しましたが、該当する内容があった場合は、改善を考える必要があります。改善のための対策について具体的に解説しますので、部下との関係性に合う対策を試みましょう。
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マイクロマネジメントをしないための対策
進捗報告のルールを見直す
マイクロマネジメントを行う上司は、部下の業務の進み具合が気になり、頻繁に進捗状況を確認しがちです。頻繁な確認や報告を求めることは、マイクロマネジメントに該当するため改善する必要があります。
改善策としては、部下にとって、適切なタイミングや方法をヒアリングすることから始めましょう。報告の方法やタイミングを、部下とともに決めることで、お互いに一日のスケジュールを設定しやすくなります。
また、上司も部下に対し必要以上の報告を求めたい欲求が抑えられます。
上司としての役割を認識する
マイクロマネジメントを行っている上司は、部下の業務に対する過干渉の影響で、本来の役割とは異なる業務を行っている可能性が高い傾向にあります。原因は、仕事を部下に任せられない特性が引き起こす、自身で作った業務負担があるためです。
上司は、本来の役割を再認識し自覚しなければなりません。そのためには、上司自身が抱える不安や心配を明らかにする必要があります。問題を明らかにすることで、必要な改善策の可視化が期待できます。
「できて当たり前」という思い込みを捨てる
上司が「これくらいできて当たり前」という思い込みをもっていると、マイクロマネジメントに陥りやすくなります。部下の仕事ぶりが上司の思う基準に見合わなかった場合に、厳しく追求することになってしまうためです。
自分ができたからといって、部下もできるとは限りません。人にはそれぞれ得意・不得意があり、仕事を覚えるスピードも異なります。まずは個人の能力や特徴を客観的に評価することが大切です。
その上で、部下に合った教育方法を検討できれば、苦手の克服をサポートし、得意をさらに伸ばせるようなマネジメントが行えるでしょう。
オープンクエスチョンで質問する
部下に対しては、オープンクエスチョンで質問することを心掛けましょう。オープンクエスチョンとは、相手にYES/NOで答えてもらう質問ではなく、自由な回答を求める質問のことです。
オープンクエスチョンを用いることで、自然と部下は自分でどうしたら良いか考えられるようになり、上司も部下の意見や感情を知ることができます。まずは自分で考えるきっかけを与え、部下の自主性を高めることを意識しましょう。
部下に権限を委ねる
マイクロマネジメントを行う上司が、部下に仕事を任せられないため、上司はプレイングマネージャーの立場になってしまい、組織の生産性やパフォーマンスに悪い影響を及ぼす可能性があります。
まずは、部下に仕事を任せる努力を試みましょう。部下に権限を委ねることで、部下は責任感が養われ、主体性のある人材育成も望めます。キャリアアップを目指す部下の成長を促すきっかけにもなるでしょう。
部下のマネジメント方法を見直す
マイクロマネジメントは、上司の心配や不安、または自己顕示欲が要因で行われているケースが少なくありません。しかし本来は、部下に寄り添ったマネジメントが大切です。部下の考え方や特徴を理解するよう努め、良い信頼関係を築けるマネジメントを行いましょう。
マイクロマネジメントのメリットを活かす方法も
上述したように、マイクロマネジメントは負の側面が強いマネジメント手法です。しかしながら、全くメリットがないかといえばそうでもありません。
例えば、入社したばかりの新卒社員や、ほかの部署から異動してきた社員は、仕事に対して少なからず不安を抱えています。こういった社員に対しては、経験のある上司や先輩が、一定期間深く関わってあげる必要があります。
また、人によっては時間や仕事内容をある程度管理してもらった方が、安心して仕事を進められるという場合もあります。人や状況を考慮して、行き過ぎないマイクロマネジメントを上手く取り入れることも大切です。
まとめ
マイクロマネジメントは部下に対して、業務のやり方や行動まで干渉してしまうマネジメント方法です。上司の心配や不安などの心因的要因や、自己顕示欲の強さが原因でマイクロマネジメントが行われていると考えられます。
過度なマイクロマネジメントは部下の業務に対する意欲を低下させ、キャリアアップのチャンスも奪い、離職へと繋がるケースもあります。以上で解説した特徴に、自分や上司が当てはまる項目があれば、マネジメントの手法を見直してみましょう。