ビッグデータとは|意味や分析手法、活用メリットなどを解説
Check!
- ビッグデータは、インターネットの普及やテクノロジーの発展により普及した
- ビッグデータを活用することで、高精度な検証や予測、顧客ニーズの把握などができる
- ビッグデータの活用で成果をあげるには、分析とアクションを繰り返す必要がある
ビッグデータとは大量に蓄積されたデータのことで、ビッグデータの活用により、リアルタイムにさまざまな検証や予測を行うことができます。本記事では、ビッグデータがビジネスで必要な理由や、メリット・課題について、身近な例を紹介しながら解説します。
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
ビッグデータとは
ビッグデータは、海外のデータエンジニアリング領域で誕生した概念で、膨大な量のデータを指します。ただし、何GB以上のデータならビッグデータ、といった明確な容量の基準はありません。
これまでデータの活用は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使用して行われてきましたが、ビッグデータは表計算ソフトでは処理が難しいほどのデータ容量です。
分析・活用するには、データの高速処理を得意とするデータエンジニアリングツールが必要です。言い換えれば、データの分析にExcel以上のツールを要するデータが、ビッグデータと言えるかもしれません。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
総務省のビッグデータの解釈
総務省は、「平成29年版 情報通信白書」の中で、個人・企業・政府が産出するビッグデータの構成要素を大きく4つに分類しています。
現在、日本では仮想空間と現実空間を高精度に融合させた次世代社会「Society5.0」の実現を目指しています。次世代社会の実現には、この4種類のデータを連携して効果的な分析などへ活用することが重要です。
各ビッグデータの連携によって社会問題の解決や未来予測に繋げるなどの活用法が期待されています。
参考:平成29年版 情報通信白書|ビッグデータの定義及び範囲 | 総務省
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
オープンデータ
オープンデータは政府が主体となって生成しうるデータであり、公開された情報を指します。主に、国や地方自治体が公開し、そのデータ分野は多方面にわたります。個人や民間企業では調査が難しい公共データを、誰であっても活用できるのが特徴です。
膨大に累積したオープンデータの活用で、経済や地方自治体の活性化などを目的とした施策が展開されます。それにより、絶えず新しいサービスや価値が創出されています。
オープンデータは、誰でも無償で活用や収集ができる・誰でも簡単に利用できる・誰でも手軽に二次利用ができる、の3つが特徴です。
知のデジタル化
知のデジタル化として捉えられるデータは、企業が主体となって生成しうるデータの一部であり、ノウハウをデジタル化・構造化したものを指します。具体的には、農業・インフラ管理・ビジネスなどの産業や企業が所有するパーソナルデータ以外のデータのことです。
「勘」「知識」「経験」といった暗黙知(ノウハウ)をデジタル化することで、次の世代にもわかりやすく、スムーズに引き継いでいくことを目的としています。
M2Mデータ
M2Mデータも企業が主体となって生成しうるデータです。M2Mは「Machine to Machine」の略であり、自動運転車のセンサーや産業用ロボットなど、企業の製品やサービスから収集できるデータをM2Mデータと呼んでいます。
M2Mデータはトラブルなどが発生した場合などに、解決策を考えるのに参考にされたり、事前にトラブル発生を予測して防衛策を立てたりするのに活用されています。上記の「知のデジタル化」と「M2Mデータ」を合わせて「産業データ」と呼ばれます。
パーソナルデータ
パーソナルデータとは、個人識別ができるかどうかに関わらず、個人に関しての情報全般を指します。似た言葉に個人情報がありますが、パーソナルデータはあまり馴染みのない言葉かもしれません。
パーソナルデータとして、個人の位置情報・商品の購買履歴・スマートフォンのIPアドレス・インターネットの閲覧履歴などが挙げられます。
これらの情報は、直接個人に結び付けられないようにアレンジされており、個人情報とは言えません。言い換えれば、パーソナルデータとは、個人情報を内包した広い概念を表す言葉だと言えます。
「構造化データ」と「非構造化データ」
データの形式や構造に注目すると、ビッグデータは「構造化データ」と「非構造化データ」に分類することもできます。正確で実用的な情報を得るためには、構造化データと非構造化データの特性を認識し、それぞれに合わせた操作が要求されます。
構造化データ
構造化データとは、特定の形式で整えられたデータを指します。行と列からなる表形式になっているデータ、あるいはすぐに表形式に変換できるデータのことです。
具体的には、顧客データ・デモグラフィックデータなどの統計情報・在庫データ・販売データ(POSデータ)などが構造化データに含まれます。
構造化データは形式が整っているため、集計や分析も行いやすいです。例えば、顧客データや販売データを分析し、適切なマーケティング戦略を考えることができます。
非構造化データ
非構造化データとは、規則性がなく、一定の形式に整えられていないデータを指します。例えば、SNSの投稿などインターネット上へのさまざまな書き込みも非構造化データに含まれます。
非構造データには、テキストデータだけでなく、デジカメやスマホなどで撮影された写真や、紙の書類をスキャンした画像などのデータ、さらには音声・映像データなども含まれます。
非構造化データは構造化データに比べて集計・分析が難しく、データの整理や変換に手間がかかりますが、実に多様なデータが含まれているため活用の幅は広いと言えます。
ビッグデータを特徴づける3つの「V」
ビッグデータの特徴は、3つのVで表現できます。一つ目はVolume(容量)です。ビッグデータはデータ量が膨大で、最大で数PByteの容量が必要です。従来の技術では対応が難しかったのですが、コンピュータ機能の向上により対応が可能になりました。
二つ目は、Variety(種類)で、テキスト・画像・動画音声などは言うまでもなく、ログファイルや位置情報など広範囲な情報が存在します。
そして三つ目が、Velocity(頻度・スピード)です。データは、リアルタイムで収集・蓄積・分析する必要があります。ビッグデータとしてビジネスに活用するためには、スピーディーな対応が要求されます。
近年では「5つのV」に
近年では、上記の3つのVに加えて新たに「Veracity(真実性)」と「Value(価値)」も重視されるようになっています。
フェイクニュースなど嘘の情報について話題になることも多いですが、そのような不正確なデータやノイズの多いデータは分析しても信頼できる結果を得られず、効果的な利活用に繋がりません。そのため、データの真実性の高さが重要になってきます。
「Value(価値)」は、そのデータを分析することでどのような知見を得られるか、ということを表しています。ビッグデータは使い方次第で企業や組織に大きな利益をもたらすのです。
ビッグデータに注目が集まる背景
ビッグデータは、政府や公的機関だけでなく民間企業からも注目されていますが、その背景にはIT機器の進歩やネットワークの拡大が影響しています。
特に、2000年代初期からのインターネットの急成長で、多くのWebサービスやデジタルデバイス上で稼働するアプリケーションが登場しました。
その後、政府による指針を始めとして、経済や社会でのビッグデータ活用が注目されるようになった経緯があります。ここでは、最近のビッグデータが普及した背景を詳しく解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータが普及した背景
データ量が爆発的に増えた
ビッグデータの急成長には、FacebookやX(旧Twitter)など、SNSから発信されるデータ量の加速度的な増加が影響しています。
インターネットやモバイル製品の普及を背景に、SNSは身近なツールになっています。例えば、2015年時点でFacebookユーザーの「いいね」数は1分あたり410万個、X(旧Twitter)アクティブユーザーが発する「つぶやき」は1分あたり35万個と言われています。
さらに、各種SNSのユーザー数やコンテンツ投稿数はますます増加傾向にあり、X(旧Twitter)のアクティブユーザー数は日本だけでも2021年度末で2億1700万人と、SNSを通じて収集されるビッグデータは世界的に膨大な量となっています。
テクノロジーが発展した
データの採集・蓄積・分析を行うための技術の進歩も、ビッグデータの普及につながった要因です。
企業がビッグデータを活用するうえでの土台としては、インターネットやクラウドサービスの普及・データ分散管理の技術確立・データ分析ツールの発達など、技術の進歩が挙げられます。
これらの技術の進歩が、ビッグデータの採集・蓄積・分析に伴う技術的・金銭的な課題の軽減にもつながっています。つまり、IT関連の技術の発展が、ビジネスにビッグデータを有効利用するトレンドを拡大させたと言えます。
ビッグデータとIoT・AIの関係性
ビッグデータと密接な関わりがあるとされるものの中に、IoTとAIがあります。ここでは、ビッグデータとそれぞれの関係性を解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータとIoT・AIの関係性
ビッグデータとIoTの関係性
IoT(Internet of Things)とは、「モノのインターネット」とも呼ばれる技術で、さまざまなモノやデバイスをインターネットに接続し、データの収集や処理を行うことを指します。
近年、IoTはスマート家電やウェアラブルデバイス、車の自動運転など多くのシーンで活用されており、暮らしにかかわる大量のデータをリアルタイムで取得できるようになりました。
IoT技術によって収集・蓄積された情報は、ビッグデータとしてサービス向上や売り上げアップのためのマーケティング活動に利用されています。
IoTとは、モノのインターネットという意味で、家電製品や自動車といったモノをインターネットに接続する技術を指します。本記事では、IoTの仕組みやIoTの活用事例を交え、ビジネスにおける活用方法などを簡単に分かりやすく解説します。
ビッグデータとAIの関係性
IoTが収集したビッグデータを活用するためには、データの分析や取捨選択を行わなければなりません。その役割を担うのがAI技術です。AIを利用することで、ビッグデータの中から有用なデータを取り出し、正確な分析も行なうことができます。
また、IoTとAIを組み合わせれば、IoTが収集したビッグデータによってAIが学習を深め、新たなAIモデルを誕生させるというサイクルも実現可能です。このように、ビッグデータ・IoT・AIは相互に補完し合い、相乗効果を生み出す関係性と言えます。
AI(人工知能)とは?意味やビジネスにおける活用メリットを解説
AI(人工知能)とは、人間の思考プロセスを再現するコンピュータプログラムを指します。AIは機械学習の技術で成り立っており、種類も複数あります。本記事では、「そもそもAIとは何なのか」という所から、AIの基礎知識やビジネスでの活用について分かりやすく解説します。
ビッグデータがビジネスで必要な理由
ビッグデータが注目され始める以前から、企業や組織ではデータを活用して事業の運営などに繋げています。例えば、アンケートを実施してその集計結果を商品開発に活かす、といった活用の仕方です。
ビッグデータの活用も従来のデータ活用の延長ではありますが、そのデータ量の多さから、ビッグデータからはより充実した知見や今までとは異なる観点の知見が得られます。
総務省も「情報通信白書(平成24年版)」においてビッグデータの重要性を訴求しており、さらに「情報通信白書(平成29年版)」では、データ活用に関する法整備やIoT・AIなどの技術の普及に伴い、ビッグデータが効率的に採集・共有できる環境が実現される傾向にあることが記載されています。
ビッグデータの主な分析方法
ビッグデータ解析で、今までは見出せなかった新しい知見を獲得するには、目的に合った分析方法の選択が必要です。ここでは、ビッグデータの主なデータ分析方法の概要を紹介します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータの主な分析方法
クロス分析
クロス分析は、データを属性ごとに分類し、その属性の傾向を把握する分析手法を指します。例えば、マーケティングにおいては顧客を居住地・年齢・性別などの属性によって分類し、それぞれのニーズを把握するのに用いられます。
複雑な計算が不要なため、ビッグデータの分析手法の中でも比較的扱いやすい手法と言えます。一目でデータの意味を把握しやすいため、プレゼンなどでの活用も珍しくありません。
クロス分析は、マーケティング以外にも、アンケート集計・世論調査など多岐にわたる方面で用いられています。
ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析は、ある事象の発生確率を説明・予測する分析方法を指します。要因と結果をそれぞれ数字で表して集計し、その関連性を分析します。
例えば、マーケティング部門が今後の戦略を練るために問い合わせとその発生要因を分析する際、問い合わせが合った場合を「1」とし、それを誘発したと思われる要因のデータを変数として設定します。
それらの数値を分析することにより、問い合わせ客が増加した原因が広告の効果なのか、口コミの効果なのか、また、施策を行うことで問い合わせがどのくらい増加するかといったことが具体的に分かります。
アソシエーション分析
各データの関係性は、人間が一目見た限りでは分からないことがありますが、それを明確にする分析手法がアソシエーション分析です。マーケットバスケット分析とも言われます。
例えば、「商品Aは商品Bと同時に購入されやすい」といった関係性を簡単に発見できます。これにより、店舗で商品Aと商品Bを一緒に陳列するなどの施策を講じられます。
また、電子商取引でよく見られる「この商品を買った人はこちらの商品もチェックしています」といったレコメンドもアソシエーション分析を利用しています。
クラスター分析
クラスターは「集団」という意味で、クラスター分析とはデータを似た性質ごとに分類し、その集団ごとの特徴を分析する手法を指します。
クロス分析では、年齢や性別といった明確な属性によってデータを分類しますが、クラスター分析では類似性によってグループ分けが行われます。その後、グループそれぞれの特性を分析し、マーケティング施策やブランド戦略などに活用します。
例えば、顧客のアンケート結果や購買履歴に基づいて、「流行への関心が強い」「高級志向」の2グループに分類したと仮定します。この場合、前者には新商品情報を提供するメルマガ、後者には高級商品情報を紹介するメルマガを配信するといった施策が講じられます。
決定木分析
決定木分析は、データをツリー構造に分類する手法の一つで、主にデータ分類に活用されます。変数の分岐点を見つけ、分岐を細かくしていくことでツリーを作成します。決定木は、分析結果が分かりやすく可視化しやすいのが特徴です。
活用例としては、医療診断・商品分類・金融の信用リスク分析などが挙げられます。決定木分析の実行により、ある条件下でどういった結果が発生するかの予測が可能になります。
また、複数の決定木を作成してランダムフォレストを構築することで、より高い精度の予測モデルの構築も可能です。
主成分分析
主成分分析は、主にマーケットリサーチに役立ちます。複数の量的な説明変数を、より少ない説明変数に絞ったり、合成変数にまとめたりする手法です。データを構成する要素が多数ある場合、主成分分析によってより少ない要素でデータを表わすことができるようになります。
例えば、ある商品の評価について、評価のための質問と回答を質問の内容を軸にいくつかのグループ(主成分)に分類します。そのままだと要素(質問)がたくさんありますが、主成分にまとめることで評価をより端的に表すことができます。
ビッグデータを活用した身近な例
ビッグデータは、飲食業界・小売業界・農業業界・スポーツ業界など、さまざまな業界において活用が可能です。得られたデータを基に今後の効果的な施策が図れます。ビッグデータが活用されている身近な例をいくつか解説していきます。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
天気予報・災害情報
気象観測では、地上・上空・海洋などのさまざまなロケーションで膨大な気象データの収集が行われています。これらのデータを収集して数値予報を行うことで、天気予報や防災気象情報としての発信が可能です。
気象データを取り扱うスーパーコンピュータは、5~8年ごとにリニューアルされ、そのたびにデータ量は大幅に増加し、より高精度の予報が行われるようになっています。
観光施策
GPS機能による位置情報のビッグデータを活用する業界の1つが、観光業界です。スマートフォン・タブレットなどの普及やSNS利用者の増加で、位置情報や投稿内容をデータとして記録できるため、観光客の行動形態の分析が可能です。
例えば、スマートフォンのアプリを活用して、観光客の混雑する時間帯や高い人気があるショップを把握したり、観光客の構成(家族連れ・カップル・友人同士)を把握したりすることで、町づくりや観光客向けサービスの展開、広報活動などに活用されています。
SNS広告
SNSではアカウント登録時に、年齢・性別・学歴・趣味などの個人情報が求められます。そのため、SNS上の投稿履歴(いいね・シェア・動画再生など)をもとに、狙いを絞ったアプローチが可能です。
例えば、30代女性でダイエットに興味を持つ方に対して、購入が期待できるダイエット食品の広告を表示する、などです。SNS広告の活用で、ターゲットに適切な広告を表示できるため、商品の認知度向上に結びつきます。
病気の診断や治療
医療分野においては、これまでの診察や治療などのデータや論文を世界中から収集したビッグデータの活用で、病気の予測や早期発見が期待できます。ビッグデータの分析で、類似した症状の患者が受診してきた場合、診断結果の精度が向上します。
これにより、早期治療が必要な病気や未知の病気の適切な処置が可能となり、一人でも多くの命を助けられるようになるでしょう。また、ビッグデータとAI画像分析技術の組み合わせでレントゲンやMRIなどの画像診断の精度も向上し、より精度の高い医療が受けられます。
ECサイト
レコメンドにビッグデータを運用している例として、ECサイトがあります。ECサイトを利用している顧客に対して、過去の購入履歴・閲覧履歴・クリック履歴などを参考にして、顧客一人ひとりの嗜好に合わせたおすすめ商品の提案が可能です。
また、ECサイトではデータベースシステムを構築し、会員の属性・利用履歴・ポイント活用状況などの蓄積されたデータ分析結果を参考に広告配信を行うことで、クリック率や購買率の向上を目指しています。
検索エンジン
ビッグデータを運用した分析は、ビジネスなど多種多様な業種に改革を及ぼすと言われています。その理由は、利用可能な情報が増え、これまで実現できなかった複雑な分析が可能になり、新たに信頼度の高い回答を発見することが容易になったからです。
例えば、Googleは、利用者がインターネットで検索した情報を蓄積・分析することで、利用者の興味・関心に合った広告を表示しています。蓄積する情報が多ければ多いほど明確な分析が行えます。
Googleは、1日に24PB(ペタバイト)以上のデータ量を処理していると言われています。これは、米国議会図書館に所蔵されている全印刷物の何千倍もの情報量と同じデータ量です。
ビッグデータを活用するメリット
ビッグデータの活用分野は、インターネット検索・金融分野・健康管理・位置情報システム・気象分野・ゲノム分野など、ビジネスから科学の分野にまで拡大しています。これからもさまざまな分野で活用が広がっていくと予想されます。
ここでは、三つの例を紹介しながら、ビッグデータの活用に期待できるメリットについて解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータのメリット
データに基づいて意思決定ができる
ビッグデータを活用することで、正確なデータ分析に基づく意思決定が可能です。AIとビッグデータの共用活用で、人が行うよりも正確で効率的な分析が行えます。
現在の企業が保有するデータ量は非常に膨大で、人がすべてを分析するのは、そもそも不可能です。とは言っても、データを活用せず経験や勘だけに頼るには今日のビジネス状況は非常に複雑で、先行きが見通せません。
この点で、コンピューター特有の高度な情報処理能力をもつAIの活用で、ビッグデータからスピーディーに有用なデータの抽出が可能となり、迅速でデータドリブンな意思決定が実現できます。
顧客のニーズを正確に把握できる
現在の技術進歩により、ビッグデータをリアルタイムで処理し、可視化が実現できるようになりました。これにより、企業は顧客が今求めているのは何かを敏感に察知し、素早くそのニーズに対応ができます。
場合によっては、顧客自身もまだ気が付いていないといった潜在的ニーズを発見し、新たな商品・サービスの開発に活かして、市場に新たな価値を提供できる可能性もあるでしょう。
高精度な検証・予測をすることができる
ビッグデータの活用で、高精度な検証・予測の分析が行えます。例えば、特定商品の販売データを分析し、いつ頃・どの程度のペースで購入されたかなどを把握すれば、今後の販売ペースについてもある程度の見通しが立てられます。
これにより、在庫数の調整をしたり、需要が増えるシーズンにキャンペーンを行ったりするなど、時機に対応した施策も講じやすくなります。統計に基づいたこのような予測分析は、参考になるデータが多ければ多いほど精度が高まります。
ビッグデータ活用における課題・問題点
ビッグデータの活用技術は、最近になって飛躍的に進展しました。その一方で、将来に備えての課題・問題点も多く残されています。ここでは、そのようなビッグデータの課題・問題点を4つに分けて詳しく解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータの課題・問題点
プライバシー侵害のリスクが高まる
個人情報を含むデータを収集する場合、ユーザーのプライバシーにも配慮する必要があります。ビッグデータにはあらゆる情報が含まれているため、個人情報や機密情報などのデリケートな情報が取り扱われる場合もあります。
特に、欧米諸国においてプライバシー問題は重要視されており、2018年にはEU内における個人データ保護についての法律「GDPR(General Data Protection Regulation)」も施行され、日本企業にとっても無視できない存在となっています。
個々のデータには関連性がなくても、複数データの組み合わせで個人を特定できるデータになる可能性があるため、プライバシーの課題はビッグデータを活用するうえで、特に注意する必要があります。
専門スキルを持った人材が必要
ビッグデータを活用する際、課題の一つに、スキルを身につけた人材の不足が挙げられます。企業がビッグデータを効率良く活用するためには、データエンジニアリング・データサイエンス・機械学習・データの収集方法・ビジネス知識などの高度なスキルが必須です。
しかし、これらのスキルを身につけた人材は限定されており、企業が必要とする人材の確保が困難な場合があります。また、データ分析や機械学習に必要なツールや技術は絶えずアップデートされており、スキルを身につけた人材を継続的に教育する必要があります。
効果を得るのに時間を要する場合がある
ビッグデータは、取得・保存するだけではなく活用してこそ、価値があるものです。データを活用できる環境を整備することが必要ですが、有意義な形で分析ができるようにデータを整理するには、かなりの作業と時間が必要になるでしょう。
一般的に、データが使える前の準備と整備に、AI分析にかかる工程の約70%を費やしていると言われています。
保守管理・運営コストがかかる
ビッグデータの活用には、管理や維持にかかるコストが発生します。また、導入にも多額の費用が必要です。導入時には、膨大な情報を保存できるシステムを構築する必要があり、ツールの導入だけでも多額のコストがかかります。
また、運用時や保守管理においてもバグの修正、必要であれば分析手法の改善などにより、コストがかかります。クラウドの活用で導入コストを抑えられますが、それでも多くのリソースを活用するため、多額のランニングコストがかかることもあります。
ビッグデータの活用で効果を出すためのポイント
さまざまなサービスや商品が豊富な現在では、従来の経験や勘に頼ったマーケティング手法では成果を出すのが困難な状況になっています。そのため、持続的な成長の実現に向け、より高精度の判断材料が得られるビッグデータの活用を推進する企業が増えています。
ここでは、ビッグデータを効率良く活用し、成果を出すための重要なポイントを3つ紹介します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
ビッグデータで効果を出すためのポイント
活用目的を明確にする
ビッグデータを収集し分析を行って、売上を向上させるといった曖昧な目標を決めるだけでは不十分です。これでは、どういったデータが必要で、どのように分析すれば良いのかが分からなくなります。
現状で背負い込んでいる課題は何か、その課題にビッグデータの活用が可能かなど、もう一歩踏み込んで、目的を明確にすることが重要です。収集された膨大なデータの分析途中に、目的が曖昧になったといった例も少なくありません。
ビッグデータの分析結果から何を得たいのか明確にするためにも、ゴールである目的を決めておきましょう。
長期的視点をもって取り組む
ビッグデータは、収集・入手しただけでは無意味に終わります。また、分析して、そこで終わりにしてしまうと効果はありません。重要なのは、分析結果を踏まえて、どういった行動を取るべきかです。
場合によっては、1度の分析で効果が得られないこともあるでしょう。そういった場合はまた別角度から分析結果を踏まえ、改めて実行に移す必要があります。こういった試行錯誤を重ねて有効なアクションに到達することで、はじめてビッグデータの活用効果が現れます。
これにより、ビッグデータを活用するためには、長期的な活動であることを踏まえ、すぐに効果が得られないといった理由で中断しないことが大切です。
自社に合ったツールやサービスを利用する
ビッグデータを分析するにはツールが必要です。しかし、データを収集・分析・活用するためのツールには多くの種類・製品があります。使えそうなデータがあっても、ツールが自社のニーズに合っていなければ適切な分析や活用はできません。
また、AIやビッグデータを活用するために必要な人材が不足していることはすでに上述した通りですが、これを乗り越えるためには社外の専門家やサービス提供会社に協力を仰ぐのも1つの手です。
AIやビッグデータに精通した専門企業と協力して連携すれば、ビッグデータを上手く有効活用できないといった事態も回避しやすくなります。
まとめ
この記事では、ビッグデータについて解説しました。総務省の「情報通信白書」の中でビッグデータの必要性が訴求されているように、特に企業ではビッグデータの活用がコスト削減や顧客数の拡大といった現状課題を解決する糸口につながっています。
ビッグデータに含まれる多様なデータの分析により、今まで把握できなかった消費者行動心理を理解できたり、見えていなかった課題に気付けたりと、従来とは違う視点での知見が得られます。
企業に好影響をもたらすビッグデータは、今後もさまざまなデータの組み合わせで、新しい知見を産出する可能性が期待されます。企業だけでなく、環境問題などの社会的な問題の解決手段としても、ビッグデータの活用は進んでいくでしょう。