スマート農業とは?|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説

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- スマート農業では、ロボット技術や情報通信技術といった最先端技術を活用する
- スマート農業により、農作業の効率化や農業技術のスムーズな継承が可能となる
- スマート農業の導入には、コストや人材の確保・育成といった課題がある
スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用した新たな農業のことで、日本の農業の現場における課題の解決策にもなると注目されています。本記事では、日本の農業の現状・スマート農業の定義と期待される効果、メリット・デメリットについて解説します。
目次
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スマート農業とは

スマート農業とは、農業に最新の技術と情報通信技術(ICT)を組み合わせ、生産性の向上と効率化を図る取り組みです。センサーとIoTを活用し、土壌や作物の状態をリアルタイムにモニタリングします。
また、ビッグデータとAIの活用によって、生産計画や作物管理の最適化も行われています。さらに、ドローンや自動化された機械による労力の削減や農作業の効率化も進められています。
農林水産省もスマート農業を推進しており、ICTの導入支援やデジタル技術の普及を進めています。スマート農業は、生産性向上や資源効率化、環境保護などの目標を掲げており、持続可能な農業の実現を目指しています。
スマート農業の目的
スマート農業には、労力の削減や高品質な農作物の生産といった目的があります。ここでは、スマート農業の5つの目的を解説します。
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超省力・大規模生産を実現
スマート農業によって、少ない労力で大規模な生産を実現することが期待されています。具体的には、自動化技術やロボットを使って農作業を効率化します。
例えば、GPS自動走行システム等を活用すれば、人員リソースに関係なく複数の農業機械を走行させたり、夜間に稼働させたりすることが可能です。
作物の能力を最大限に発揮
スマート農業のセンサーやIoT技術を使用すれば、作物の能力を最大限に発揮させることも可能です。
作物の成長状況や過去のデータに基づき、最適な条件で栽培すれば、作物のポテンシャルを最大限に引き出せるようになります。結果、収穫量の増加や品質の向上が期待できます。
きつい作業、危険な作業から解放
農作業の自動化やロボット化により、きつい作業や危険な作業の負担を軽減できます。重量物の持ち上げを楽にする「アシストスーツ」や、除草を自動化するロボットを使うことで、軽労化が可能です。
また、重労働から解放されることによって、労働条件の改善や労働者の安全性向上も図れます。
誰もが取り組みやすい農業を実現
農作業を行うには一定の知識や経験が必要になりますが、スマート農業ではアシスト装置のある農業機械を活用し、未経験の人でも気軽に農業にトライできるようになります。
また、ノウハウがデータ化されることで知識の継承も容易になり、若い世代や経験が浅い人も高精度な作業が可能になります。
消費者・実需者に安心と信頼を提供
クラウドシステムをはじめとするスマート農業の技術によって、生産者と消費者・実需者の間での情報共有も促進されます。食品の安全性や品質に関する情報が生産者から提供されることで、消費者も安心・信頼できます。
スマート農業が注目される背景

日本でスマート農業が注目されている理由には、農業従事者の高齢化や人員不足、食料自給率が低下傾向にあることなどが挙げられます。そもそも日本の人口は減少しており高齢化も進んでいますが、農地の多い地方ではより深刻です。
しかし、スマート農業による自動化で作業が効率化されれば、少ないリソースでも農作業を進めることが可能になります。また、重労働のイメージが払拭されることで、新しい世代を農業へ取り込みやすくなるでしょう。
スマート農業がもたらす効果

スマート農業には、作業の自動化や情報共有の簡易化など、様々なメリットがあります。ここでは、スマート農業がもたらす効果について、3つの項目に分けて具体的に解説します。
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作業の自動化
スマート農業では、最先端技術やロボットを活用して農作業を自動化することができます。例えば、自動収穫機や自動散布機を使用することで、収穫や農薬散布などの作業を効率的に行うことが可能です。自動化されることで、労働力削減や作業時間の短縮にも繋がります。
情報共有の簡易化
センサーやIoT技術を活用して農場や作物のデータを収集すれば、リアルタイムで情報を共有することが可能となります。スマートフォンやタブレットからデータにアクセスし、農作業の状況や作物の成長状態を簡単に確認・共有できるようになります。
データの活用
収集したデータからは、作物の生育状況や土壌の状態を把握できます。これらのデータを活用することで、最適な栽培計画を立てたり、生産性や品質を向上させたりすることが可能です。データは遠隔地からでも確認でき、わざわざ農場まで出向く手間も不要になります。
スマート農業のメリット

スマート農業の導入は、労働力不足の解消や生産性の向上、環境負荷の軽減など、さまざまなメリットを農業業界にもたらします。以下で、スマート農業の主なメリットを解説します。
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農作業が効率化・省力化される
自動化技術やデジタル化の導入により、農作業を効率化・省力化できます。例えば、自動化された機械やロボットで収穫や農薬の散布作業を行えば、作業時間を短縮できるだけでなく、より精度の高い作業が可能になります。
また、作業時間が短縮されれば、農業生産効率が向上し、労働力不足の解消や生産コストの削減にも繋がります。さらに、効率化・省力化により、農業者は作物の生育環境の整備や品質管理に多くの時間を充てられるため、収量や品質を向上させることもできます。
コストが削減できる
スマート農業は、コスト削減を促進できます。例えば、自動化技術やロボットの導入により人手を削減し、作業も効率化できるため労働力コストの削減に繋がります。
また、センサーやデータ分析により農薬や肥料の最適使用量を把握し、過剰分を減らすことで資材コストを削減します。さらに、データに基づいた生産計画や在庫管理により、生産効率を最大化し過剰在庫を回避することで、生産コストの削減が可能です。
生産性が向上する
センサーやモニタリング技術により作物の成長状況や最適な栽培条件がわかるため、収量や品質が高まり、生産性が向上します。また、労働力の効率化や自動化により、作業効率が向上し、生産コストを削減できます。
さらに、生産性の向上により、より多くの食料を生産できれば、食料自給率の向上にも貢献します。スマート農業の導入により、国内の食料供給が安定し、持続可能な食料生産が可能になります。
農作物の品質が向上する
スマート農業によって、農作物の品質向上も図れます。具体的には、センサーやIoT技術を活用して作物の成長状況や環境要因をリアルタイムでモニタリングすることで、最適な栽培条件を把握できます。
適切な灌水や肥料の与え方、温度や湿度の調整などが可能となり、品質の向上に繋がります。また、データ分析や予測モデルを活用すれば、適切な収穫時期や出荷タイミングの把握も可能です。これにより、作物の熟度や鮮度を最適化することもできます。
さらに、トレーサビリティシステムを導入することで、生産から消費までの品質情報を追跡・共有し、安心・安全な農作物を提供することができます。スマート農業の導入により、農作物の品質向上が図れ、消費者からの信頼も得られるでしょう。
農業技術をスムーズに継承できる
農業ノウハウをデータ化し、活用することで、次世代の農業者や未経験者でも効果的な農業手法を学ぶことができます。例えば、センサーやモニタリング技術によって収集されたデータや栽培記録を基に、過去の成功事例や最適な栽培方法を分析できます。
データとして蓄積された農業のノウハウは、新たな農業者が活用できる貴重な情報源となります。また、オンラインプラットフォームの活用によって、地域や国内外の農業者との情報交換やコミュニケーションが容易になり、知識や技術が継承されやすくなります。
SDGs実現に貢献できる
スマート農業は、SDGs(持続可能な開発目標)実現における環境保全に貢献します。SDGsとは、人類が地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標とされており、貧困や飢餓を減らすことなどを含む、17のゴールが設定されています。
農業においてもSDGs実現に向けた取り組みは進められていますが、ここでは以下2つを紹介します。
参考:SDGsとは?|外務省
食品ロスの削減
SDGsの推進において、スマート農業は特に食品ロスの削減に大きく貢献することが期待されています。
スマート農業では、センサーやモニタリング技術を活用して作物の成長状況や収穫時期を正確に把握し、最適な収穫タイミングを判断できます。これにより、作物の品質を最大限に保ちながら、過剰な収穫や廃棄を防ぎます。
また、データ分析や予測モデルを活用して需要予測も可能です。生産量を適切に調整することができるため、過剰生産や在庫の発生を抑え、食品ロスを削減します。
このように、スマート農業を導入することで、持続可能な食料生産と食品ロス削減が実現され、環境保全とSDGsの実現に貢献できます。
農薬の使用量削減
スマート農業を活用すれば、化学肥料や農薬の使用量を削減することも可能になります。モニタリングによって、農薬を使用する適切なタイミングや量を把握できるためです。
また、農作物にとって最適な温度や湿度に調整できるようになるため、場合によっては農薬量を減らしたり全く使わなかったりしても、安全でおいしい農作物を作ることが可能です。
化学肥料や農薬は安定的に農作物を生産するためには欠かせませんが、過剰に使用すると環境に悪影響を及ぼします。スマート農業の技術によって、SDGsが掲げる「気候変動に具体的な対策を」や「陸の豊かさも守ろう」などの目標達成に貢献できます。
スマート農業のデメリット・課題

多くのメリットをもたらすスマート農業ですが、導入には、いくつかのデメリットや課題も存在します。以下にスマート農業のデメリット・課題を解説します。
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スマート農業のデメリット・課題
導入コスト
スマート農業には、センサーやモニタリングシステム、自動化装置、データ管理システムなどの先進的な技術や機器が必要です。これらの導入には、高額な投資が必要であり、農業経営者にとって負担となる可能性があります。
また、導入後の運用コストも考慮する必要があります。さらに、スマート農業の技術やシステムは急速に進化しており、新たな機器やソフトウェアの追加が必要になることもあります。このため、継続的なアップデートや追加投資のコストが発生する場合もあります。
人材不足
スマート農業は先進的な技術を活用するため、高度な知識を持った人材が必要です。しかし、その人材の不足が課題となっています。人材育成には時間がかかり、専門家や研究機関の支援が必要です。
行政や農業関連団体が人材育成プログラムを拡充し、専門教育や研修の提供、情報共有の活性化を図ることが重要です。
機器間の互換性
スマート農業には、新しい機器の導入による既存の機器との互換性の問題があります。新しい機器が登場すると、既存の機器と連携しなくてはなりません。互換性がない場合、接続や連携が困難になる可能性があります。
その結果、データの一元管理が難しくなり、最大限の導入効果が得られなくなってしまう場合があります。
農業従事者への新たな作業負担
スマート農業は、一部の作業を自動化し、生産性を向上させることを目的としていますが、同時に新たな作業負担を生むこともあります。
例えば、新しい技術や装置を導入する際、農業従事者はその操作やメンテナンス方法を学ぶ必要があります。これには時間と労力がかかります。
また、センサーやデバイスから得られるデータを活用するため、これらのデータを収集・管理し、適切な判断を下す必要があります。しかしデータ入力・分析などの作業は、慣れない人にとって非常に難しい作業です。
このように、スマート農業は効率化と負担増加の両面を持つことを理解しておかなくてはなりません。
収穫した作物の味
スマート農業の導入により作業効率が向上し、作物の収穫量が上がっても、その作物が美味しくなければ、消費者は購入してくれません。効率化・省力化ばかりに偏らず、美味しい作物を作るという大前提を忘れないようにすることが大切です。
スマート農業ではさまざまなデータを活用して、作物にとって最適な環境を整備し、品質を向上させることが可能です。しかし、消費者の中には、最先端の技術により作られた食品ということで抵抗感や不安を感じている人もいます。
スマート農業を推進していくためには、作物の安全性と品質について広く周知し、消費者の不安を取り除くための取り組みも必要になります。
スマート農業の種類と活用例

スマート農業にはさまざまな種類があり、農業の効率化や生産性向上に貢献しています。以下では、いくつかのスマート農業の種類と導入例を解説します。
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ロボット技術の活用
スマート農業では、自動運転トラクターや自動収穫機などのロボットが農作業を行います。
これらの機械の操作には技術や経験が必要ですが、スマート農業によって自動化されれば、人員不足をカバーし、作業効率を上げることが可能です。
また、ロボットは人のように疲れることがないため、長時間正確な作業を行うことができます。結果、品質と安全性を高く保てるようにもなります。
IoTの活用
IoT(Internet of Things)とは、様々な物やデバイスがインターネットを通じて相互に通信し、データを収集・共有する仕組みのことです。農業においては、農業用ドローンや自動選別機、モニタリングシステムなどがIoTの一例です。
これらの技術を導入することで、農業業務の効率化と生産性向上が実現します。農業用ドローンは広範囲の畑や棚田を迅速に調査し、病害虫の早期発見や適切な肥料散布が可能です。
また、モニタリングシステムはセンサーを用いて土壌状態や気候をリアルタイムにチェックし、適切な栽培管理を可能にします。これらの技術導入により、農業の生産性や品質が向上し、持続可能な農業を目指すことができます。
AIの活用
スマート農業ではAIも活用されています。例えば、カメラで撮影した農作物の画像をAIが解析し、病気や虫害の状況を検出することができます。農作物の健康状態をリアルタイムに把握でき、迅速な対処が可能になります。
また、AIは膨大なデータを高速で処理し、蓄積されたデータから傾向やパターンを学習するため、より精度の高い判断や予測が可能です。
ビッグデータの活用
ビッグデータの活用は、農業の経営・生産管理システムにおいて重要です。例えば、農場のセンサーやモニタリング装置から収集された大量のデータを分析することで、土壌状態や気象条件、作物の生育状況などを正確に把握できます。
データ分析によって、適切な施肥や灌漑のタイミング、作物の収穫時期を判断することができます。また、生産量や品質のデータを集約し、生産計画や市場需要の予測に活用することも可能です。
スマート農業を導入する方法

ここでは、スマート農業をこれから導入していくにはどういったところから始めればいいのかを、農林水産省の資料を参考に紹介します。
参考:スマート農業|農林水産省
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スマート農業を導入する方法
補助金・助成金等を活用する
スマート農業を導入するには、補助金や助成金を活用することでコストを削減しながら始めることができます。農林水産省の資料「農業支援サービス」によると、さまざまな事業者がスマート農業のための機械導入、人材育成等への支援を受けることができます。
取り組む事業や内容により、活用できる補助金の種類は数多くあります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 農業支援サービス事業育成対策
- 産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策)
- 雇用就農資金
- 農業労働力確保支援事業
これらの補助金を受けるには、対象となる事業の内容や細かい条件などが設定されています。詳細は「農業支援サービス関連施策パンフレット」を確認しましょう。
リース・レンタル・シェアリングサービスを利用する
スマート農業の初期段階では、あまりコストをかけずに農業機械等を活用することが重要です。まずは、リース・レンタル・シェアリングサービスなどで機械等を揃えていきましょう。
「農業支援サービス」では、以下のような農業機械等のリースにおける補助金サービスを紹介しています。
- 強い農業づくり総合支援交付金(農業支援サービス事業支援タイプ)
- 産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策)
- 農業支援サービス事業緊急拡大支援対策(スマート農業機械等導入支援)
まとめ

スマート農業は効率化と持続可能性を実現する革新的なアプローチです。労働力不足や作業時間の削減による生産性向上・コスト削減・品質向上・環境保全・食料安全性の向上などの効果が期待されます。
自動化・IoT・ビッグデータなどの技術を活用することで、農業がより効率的かつ持続可能なものになります。スマート農業は農業の未来を模索し、持続可能な農業システムの構築を推進しています。
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