データマイニングとは?メリットや種類、ビジネス活用事例を解説

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  • データマイニングとは、収集された情報を分析し、傾向・関連性・知見などを見出すこと
  • データマイニングにより、販売活動の効率化や顧客満足度の向上などが期待できる
  • データマイニングは金融業界や小売業、製造業などさまざまなビジネスで活用されている

データマイニングとは、収集した情報を統計学やAIなどを用いて分析し、傾向・関連性・知見などを見出すことです。データマイニングは、販売活動の効率化や顧客満足度の向上に繋がります。本記事では、データマイニングのメリットや種類、ビジネスでの活用事例などを解説します。

目次

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  1. データマイニングとは
  2. データマイニングのメリット
  3. データマイニングのデメリット
  4. データマイニングの種類・手法
  5. データマイニング実施のステップ
  6. データマイニングを行う際のポイント
  7. ビジネスでの活用事例
  8. まとめ

データマイニングとは

データマイニングとは、大量のデータからパターン・関係性・洞察などを発見するための分析手法のことです。分析によって将来の出来事や傾向を予測したり、分類したグループの相関関係を見出したりなど、ビジネスに活用することができます。

さまざまな業界や分野で活用されていますが、マーケティングの課題解決にも寄与します。例えば、データマイニングによって、顧客の嗜好や行動に基づくグループ分け・ターゲットへのキャンペーンの最適化・離反の可能性の予測などが可能です。

これらはあくまでも活用の一部分ですが、データマイニングはマーケティング戦略の立案や意思決定の根拠となる重要なツールです。

データマイニングで得られるもの

データマイニングで得られる知識は、階層的に分類されることがあり、以下の4つの階層モデルは「DIKWモデル」と呼ばれています。段階が進むにつれ、実用性の高い知識となり得ます。

DIKWモデル内容
Data(データ)未整理・未加工の数値やテキスト、事実や観測結果の集まり
【例】顧客の購買履歴・商品の売上個数
Information(情報)データを整理・構造化・要約したもの
【例】商品の人気ランキング・顧客のグループ分け
Knowledge(知識)情報から得られる発見・傾向、情報を解釈・関連付けたもの
【例】特定の商品が特定の顧客グループに人気であること
Wisdom(知恵)知識を活用した問題解決・判断力・洞察力など
【例】過去のデータからトレンドを予測すること

データマイニングとデータ分析の違い

データマイニングに似た言葉に「データ分析」がありますが、データ分析はより包括的な概念だったり、データマイニングと同様の意味で使われたりする場合もあります。

ただし、データマイニングが大量のデータからパターンや関係性を見出すのに対し、データ分析は統計的な手法を用いるとする解釈がよく見られます。この場合、統計学的なデータ分析では事前に仮説を立ててから、適切な分析方法を選択します。

データマイニングでは仮説はなく(あるいは仮説を立てる必要がなく)、未知のパターンや新たな知識を発見することに焦点をあてています。

データマイニングの今後の市場動向

データマイニングは業界や業種を問わず幅広い分野で活用されていますが、DXが推進されていることから、今後も市場が拡大していくと予想されています。

また、近年はAIなどの技術の発展が目覚ましく、これらの技術はデータマイニングとの親和性が高いです。こうした技術の発展も、データマイニングの市場拡大を後押しする見込みです。

データマイニングのメリット

データマイニングを活用すると、販売活動の効果を最大化でき、また、顧客との長期的な関係を築くことにもつながります。ここでは、データマイニングによって得られるメリットについて解説します。

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効率的な販売活動ができる

データマイニングは、顧客の傾向分析によって販売活動を効率化できます。顧客の行動や好みから細かくグループ分けし、ターゲットに合わせたマーケティング戦略の展開が可能です。

また、過去の販売データや購買履歴の分析によって売れ筋商品を特定でき、需要の高い商品を効果的に販売できます。在庫管理の最適化により、適切な在庫レベルを設定できるため、在庫コストも削減可能です。

さらに、どの顧客グループに重点を置くべきかも把握できるため、マーケティング予算を最適に配分して、販売活動の効果を最大化できます。

顧客満足度が向上する

把握した顧客の傾向に基づいたサービスやアクションを展開することで、顧客満足度の向上にもつながります。

優良顧客を特定できれば優良顧客にだけ割引クーポンや特典を提供することができ、特別感によって満足感を与えられ、企業やブランドへの忠誠心が向上につながります。

また、顧客の傾向や好みに応じて、個別化されたマーケティングを行うことも可能です。購買履歴や嗜好に基づくレコメンデーションや情報提供によって顧客は関心を持ちやすくなり、満足度向上にも寄与します。

さらに、顧客の行動データやフィードバックを分析することで問題や不満を早期に発見し迅速に対応できます。購買パターンやコミュニケーション履歴を基に最適なコミュニケーション方法やタイミングを選択し、顧客との関係を深めることも可能です。

データマイニングのデメリット

データマイニングは情報の「採掘」までしか行えず、その情報をどう活かすかは人が考える必要があります。データマイニングは新たな発見や洞察を提供するツールであり、最終的なアクションへの展開は人間の判断と経験に依存します。

例えば、顧客の傾向やパターンは重要ですが、キャンペーン戦略やメッセージの設計は人が行う必要があり、必ずしも成功するとは限りません。また、データマイニングによって得られる情報は、特定の状況や領域において解釈される必要があります。

状況を考慮せずに情報を活用すると、正確な結果が得られません。さらに、顧客や個人のデータを活用するため、倫理的な問題やプライバシー保護の懸念もあります。分析結果を適切に活用するには、人間の判断力・倫理的な意識が重要です。

データマイニングの種類・手法

データマイニングにはさまざまな種類とやり方があり、購入予測や収益最大化などマーケティングのヒントを得るのに役立ちます。ここでは、データマイニングの代表的な手法について解説します。

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クラスタリング

クラスタリングは、データの中から類似した特徴を持つグループ(クラスター)に分類する手法です。年齢・購買履歴・居住地・嗜好など、さまざまなグループに分けることで、グループごとに適したアプローチをしやすくなります。

例えば、若年層男性にはスポーツ系アイテムをリコメンドしたり、高収入層にはラグジュアリーブランドのターゲット広告を配信するなどのアプローチが考えられます。過去に購入した商品から関連商品の案内や割引を提供するなど、リピート率を上げる施策もあります。

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析とは、主に二値分類(Yes/No・買う/買わない・成功/失敗など)の予測に使われる統計的な手法です。分析には結果の要因となる説明変数と、二択の結果となる目的変数が使われます。

例えば、特定の商品を販売する時、特定の顧客が商品を買うか買わないかの結果を目的変数とします。この時、顧客の年齢・性別・購買履歴などを説明変数として、結果を予測します。

結果の予測だけでなく、どの説明変数が目的変数の予測に重要な影響を与えているのかを特定することもできます。購買予測・キャンペーンに対する反応の予測・ロジスティック回帰分析に基づく新たなグループ分けなども可能です。

ABC分析

ABC分析は、要素を重要度やランク付けの観点で分類する手法です。顧客のグループ分け・予算の配分などにも活用できますが、一般的には適正な在庫管理に活用されることが多いです。

商品の在庫管理では、売上や利益などに基づいて商品をA~Cのランク付けをし、各ランクに応じて在庫レベルや補充頻度を調整します。需要の高いAランクの商品には効率的な在庫管理を行い、需要の低いCランクの商品では在庫削減を目指すことが可能です。

他にも購入額・顧客の活動レベルなどに基づいて顧客をグループ分けして、それぞれに適切なマーケティング戦略を展開できます。重要度や貢献度の高い要素に優先的にマーケティング予算を割り当てるなど、ランクに応じた優先順位付けを行うことが可能です。

マーケット・バスケット分析

マーケット・バスケット分析は、顧客の購買データからアイテム間の関連性を抽出するための手法です。マーケティングにおいては、クロスセル(関連商品の販売)やアップセル(上位グレードの商品の販売)の機会を見つけるために役立ちます。

購入データの中から、頻繁に現れるアイテムの組み合わせを見つけ出して、顧客が一緒に購入する傾向のある商品の組み合わせを特定します。また、その組み合わせがどれくらい頻繁に現れるのかも分析します。

頻度の高い商品の組み合わせをセット販売することで、より高価な代替品や追加アイテムへの案内などがしやすくなります。さらに、店舗レイアウトや商品配置の最適化にも応用でき、収益最大化につなげることが可能です。

データマイニング実施のステップ

データマイニングで、データから有用な知見を引き出すためには、目的を明確にしてからデータを収集することが大切です。他にも重要なポイントを含め、以下にデータマイニングの手順をまとめました

  1. データマイニングの目的やテーマを明確にするために、知りたい情報を特定する
  2. 目的に合わせて必要なデータを収集する
  3. 収集したデータを加工・整理し、分析しやすい形式に整える
  4. データのパターンや関連性などを分析し、意味のある洞察を得る
  5. 分析結果から要因を特定し、その効果を検証する

データマイニングを行う際のポイント

データマイニングでは、大量のデータを扱うことから、分析に先立っていくつかのポイントを押さえておくことが推奨されます。ここではデータマイニングを行う際のポイントについて解説します。

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データウェアハウス(DWH)を設ける

データマイニングでは、大量の情報を収集することが不可欠です。大量のデータを収集することでより多くのパターンや関連性を発見し、有益な洞察を得ることができます。データが大量なほど精度が向上し、多様なデータを組み合わせて包括的な分析も可能です。

また、データの保管にはデータウェアハウスが一般的に使用されます。データウェアハウスは、異なるデータソースからのデータを集約し、統合的かつ一貫性のある形式で保存するためのデータベースです。

データウェアハウスの導入は、組織がデータ駆動型の意思決定を行い、競争上の優位性を確保するために重要です。データウェアハウスはデータの保管と迅速な分析を実現して、データマイニングの結果の効果的な活用に役立ちます。

データウェアハウス(DWH)とは

データウェアハウスは、さまざまなシステムからデータを集約して管理するデータベースであり、AIの分析やデータマイニングができる最適な形式でデータを保管できるシステムです。多くはセキュリティ保護に重点が置かれ、アクセス制御や暗号化に対応しています。

大量のデータでも高速でアクセスでき、効率的に処理できることに加え、データを視覚的に表現することも可能です。データマイニングだけにとどまらず、CRM(顧客管理システム)やMAツールのデータ活用にも便利です。

データクレンジングを行う

データクレンジングとは、データの欠損や不備を解消し、データの品質を向上させる作業を指します。欠損値・異常値・重複データなどは、データマイニングの結果に歪みを与えたり、予測の精度を下げたりする可能性があります。

データクレンジングのメリットは、データの正確性と信頼性の向上・データマイニングモデルの精度向上です。データの欠損や不備を解消することで、誤った意思決定や誤った戦略を回避することができます。

データクレンジングでは欠損値の代替処理・異常値の検出と修正・重複データの削除などが行われます。大量のデータからこれらを探し出して作業するため、専門のスキルを持つ人材の確保や、作業をスムーズに行える環境を整える必要があります。

データマイニングツールを利用する

データマイニングツールは、データの解析やパターンの発見を支援するソフトウェアやシステムです。これらのツールは、データの前処理・データの探索と可視化・データマイニング手法の適用などの機能があります。

ただし、ツールによって提供される機能・用途・分析対象などが異なるため、データマイニングの目的を事前に明確にしておくことを推奨します。

無料版・有料版がある

さまざまなデータマイニングツールがリリースされており、中には無料版と有料版に分かれるケースがあります。無料版は機能が限定的であり、サポートも受けられない場合が多いため、ツールの選定にあたって実際に使用感を確かめる目的に向いています。

一方で有料版は、導入や運用時のサポートを受けられる上に機能性も高く、ビジネスへと本格的に活用する場合に推奨されます。

ビジネスでの活用事例

ここでは、データマイニングが実際のビジネスシーンでどのように活用されているのか、業界別の事例を紹介します。販売戦略だけにとどまらず、不正や犯罪からの保護・機械設備の適切な管理など、さまざまな場面に応用できることを覚えておきましょう。

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クレジットカードの不正利用検知

金融業界では、データマイニングを活用してクレジットカードの不正利用を早期に発見する取り組みが行われています。データマイニングにより正常な取引パターンと不正な取引パターンを分析し、異常な取引を検出することが可能です。

例えば、特定の日時や場所での異常な取引や通常の顧客行動とは異なるパターンの取引を検知できます。また、過去の不正利用データから不正行為を予測するモデルの作成、リアルタイムな監視で不正利用の兆候を検知することも可能です。

不正利用者同士の関連性やネットワークを分析し、不正行為の背後にある組織やグループを特定することもできます。クレジットカードの不正利用の検知以外に、住宅ローンの与信審査・保険商品の開発などにデータマイニングが活用されることもあります。

小売業でのマーケティング施策

小売業はデータマイニングが活発に行われている業界です。ターゲット戦略のカスタマイズ・需要予測に対する適切なアプローチ・クロスセルやアップセルによる売上最大化などの事例があります。

データマイニングの手法であるクラスタリングやABC分析などは、マーケティングとの相性も良く、顧客の購買傾向を把握し、効率的なマーケティング戦略の立案に役立ちます。

キャンペーンに関するデータを蓄積し、分析することによって、顧客の購買行動の変化や応答率から、より効果の高いキャンペーンを生み出すことも可能です。

工場の設備管理

近年は、工場で稼働する機器について、さまざまなデータを収集することが一般的になっています。センサーで温度・振動・圧力などのデータを定期的に収集できれば、異常なパターンを検出して故障の予兆をつかむことができます。

センサーデータだけでなく、保守記録も活用することで、計画的なメンテナンスや修理を実施することもでき、生産停止のリスクを最小限に抑えられます。

教育機関での学習サポート

教育機関でデータマイニングを実施することで、生徒の進捗状況データに基づいた学習サポートが実現します。データマイニングにより生徒が求めているのかが把握できるため、eラーニングのような一方的な学習スタイルになりがちな学習環境の改善に適しています。

授業内容の見直しを実施しているケースもあり、データマイニングは教育分野でも活用されています。

まとめ

データマイニングは大量のデータからパターンや関連性を発見し、意思決定に活用する手法であり、クラスタリングや予測分析などさまざまな手法があります。

ただし、分析結果をどう解釈し、どう活用するかは人の判断力に委ねられます。活用する際は実施する目的を明確にし、データや手法の適切な選択に留意することが重要です。

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