インボイス制度とは?概要から影響まで簡単にわかりやすく解説

インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式のことで、取引の正確な消費税額と消費税率を把握するためのものです。本記事では、インボイス制度によって変わることや影響することの他、導入にあたって準備すること・個人事業主への影響について解説します。

目次

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  1. 請求書発行システムを検討するならこのサービスがおすすめ
  2. インボイス制度とは
  3. インボイス制度導入での変更点
  4. インボイス制度導入前後の対応・検討内容
  5. インボイス制度によるフリーランス・個人事業主への影響
  6. 免税事業者が適格請求書発行事業者になる必要はあるか
  7. インボイス制度における支援措置
  8. インボイス制度への対応はシステム導入で効率的に
  9. まとめ

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インボイス制度とは

2023年10月に開始されたインボイス制度とは、消費税率を明確化し、正確な仕入税額控除を行うための制度です。正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、要件を満たした「適格請求書(インボイス)」の提出・保管で、正確な仕入税額控除を行えます。

インボイスを発行できるのは、税務署で登録した「適格請求書発行事業者」だけです。課税事業者もしくは免税事業者、フリーランス・個人事業主かなどで影響が異なる当制度を、わかりやすく解説していきます。

参考:インボイス制度の概要|国税庁

仕入税額控除とは

仕入税額控除とは、売上で預かった消費税から、仕入で負担した消費税を差し引くことです。仕入先がインボイスを発行できる適格請求書発行事業者の場合、売上で預かった消費税50万円から、仕入にかかった消費税30万円を差し引いた20万円が納付税額となります。

一方、仕入先がインボイスに対応していない場合は、仕入税額控除は受けられません。売上で預かった消費税50万円をそのまま納税する必要があります。

仕入先がインボイスを発行し、課税事業者がインボイスを保存することではじめて消費税の仕入税額控除が適用されるようになります。

インボイス制度導入による影響

インボイス制度は消費税が関わることで、以下のようにさまざまな影響が出ます。

課税事業者への影響経理事務への影響免税事業者への影響
●適格請求書発行事業者の登録申請
●請求書書式の変更
●対応ツール導入の費用
●事務手続きの複雑化
●請求書・帳簿の書式変更
●事務手続きの複雑化
●取引先のインボイス突合作業
●税率ごとの処理
●適格請求書発行事業者への検討
●消費税の納税・管理(インボイス登録後)

インボイス制度において最も影響を受けるとされるのは、課税売上が1,000万円以下の免税事業者です。免税事業者が適格請求書発行事業者としてインボイスを発行するためには、課税事業者になることが求められます。

インボイス登録を行えば消費税を納税する義務が生じるため、利益が減ることや課税事業者と同じく事務作業や管理業務の発生など、デメリットになる点が目立ちます。

インボイス制度導入での変更点

インボイス制度は消費税の扱いが変わるため、それに伴った変更点が生じます。ここでは、インボイス制度で変わることを解説します。

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仕入税額控除の適用要件が変更

インボイス制度の施行後は仕入れ税額控除の適用要件にインボイス(適格請求書)の発行・保存が必要となります。そのため、仕入税額控除を受けられるのはインボイスが発行された取引のみということになります。

仕入税額控除は二重課税を解消するために必要な制度です。売り手側と買い手側の双方に適用されるためには、売り手側はインボイスの交付、買い手側は交付されたインボイスを保存しなければなりません。

区分請求書から適格請求書へ書式が変更

インボイス制度が開始されると、区分請求書から適格請求書(インボイス)に書式が変わります。インボイスを発行できるのは、インボイス登録して登録番号が発行された適格請求書発行事業者のみです。

税率の計算を8%と10%に分けて計算することも含め、適格請求書として追加される項目を確実に把握しておく必要があります。区分記載請求書の項目に、「登録番号・適用税率・税率ごとに区分した消費税額等」の3点が追加された以下の形式で発行する必要があります。

  1. 請求書発行事業者の氏名又は名称および登録番号(課税事業者のみ登録可)
  2. 取引年月日
  3. 取引の内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

なお、適格請求書発行事業者ではないのにも関わらず、インボイスと誤解されるような請求書を交付することは禁じられており罰則の対象になります。

インボイス制度導入前後の対応・検討内容

ここでは、インボイス制度の導入前後に必要な対応・検討内容を売り手と買い手、課税事業者と免税事業者の立場に分けて解説します。

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自社が売り手の課税事業者の場合

自社が売り手の課税事業者の場合、適格請求書発行事業者への登録やインボイスの交付が必要です。導入後の取引においてインボイスとするもの(請求書、納品書、レシートなど)を明確にし、インボイスの交付方法を検討しておくことが大切です。

経理に関わるシステムは、インボイスに対応できるよう改修が必要になることもあるため、改めて見直す必要があります。

インボイス制度の導入後も取引を続ける買い手に対して、インボイス登録の有無や登録番号、インボイスの様式や交付方法などについて打ち合わせしておく必要もあるでしょう。

自社が買い手の課税事業者の場合

買い手の場合は、インボイスへ対応するため経理関係や発注システムの見直しが必要です。インボイス制度の導入後も取引を続ける売り手に対し、インボイス登録の有無やインボイスの様式、受領法の確認などをあらかじめ行うことが求められます。

また、経理や契約に関わる社員には必要な知識となるため、研修を実施することも大切です。税額計算方法などの確認を含め、知識を更新しておきましょう。

取引先が課税事業者の場合

取引先が課税事業者の場合は、売り手が何をインボイスとして取引を行うか確認しておく必要があります。買い手としてはシステムなどの導入により、インボイスを保存するための環境を整えておくことが大切です。

取引先とはインボイス登録番号や受領方方法、請求書がインボイスになったときの変更点などを踏まえ、取引先と認識を合わせておきましょう。

取引先との関係に合わせて書面やアンケート形式、メールでのやり取りなどが挙げられます。

取引先が免税事業者の場合

取引先が免税事業者である場合はインボイスが発行できず、自社が支払った消費税の仕入税額控除が受けられません。そのため、自社が費用を負担することになります。また、免税事業者と課税事業者で区分を分ける手間も発生するでしょう。

ただ、自社の課税売上高が5000万円以下の場合、仕入税額控除の計算が簡素化されたり、節税できたりする簡易課税制度もあります。必要に応じて導入を検討しましょう。

自社が売り手の免税事業者の場合

自社が売り手の免税事業者の場合、インボイス登録するか否かで必要な準備が異なります。インボイス登録を行う場合は税務署へ書類の提出またはe-Taxで申請が必要です。

登録後は取引先との登録番号やインボイスの交付に関わる打ち合わせ、インボイスに対応した会計ソフトの導入が必要です。

インボイス登録を行わず免税事業者を継続する場合は、現行と同様で特に準備することはありません。しかし、取引先の意向により契約が打ち切りとなる可能性もあります。特に取引先が企業である場合は、インボイス制度導入後の取引の継続について確認する必要があるでしょう。

自社が買い手の免税事業者の場合

自社が買い手の免税事業者である場合は、インボイス登録する必要がありません。インボイス制度にあたって準備は不要ですが、消費税の仕入税額控除が受けられないことに留意しておく必要があります。

インボイス制度によるフリーランス・個人事業主への影響

年間の売上が1000万円以下で免税事業者とされる個人事業主は、インボイス制度に受ける影響が大きくなりがちです。ここでは、インボイス制度への個人事業主への影響を解説します。

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インボイス制度によるフリーランス・個人事業主への影響

  1. 免税事業者のままでいる場合の影響
  2. 課税事業者になった場合の影響

免税事業者のままでいる場合の影響

インボイス登録を行わず、免税事業者のままでいるという選択もできます。免税事業者のままでいる場合、取引先が課税事業者か免税事業者か、また取引先の免税事業者の扱い方によって受ける影響が異なります。

特に取引先が課税業者である場合は、売上や取引の点に大きくかかわるため、インボイス登録をするかどうか慎重に決めなければいけません。

主な取引先が課税事業者の場合

免税事業者の取引先が課税事業者である場合、取引先の消費税負担が増加するため取引を中止される可能性があります。また、取引先はインボイス対応のために課税事業者と免税事業者を分けて管理するため、事務作業に時間がかかるというデメリットもあります。

インボイス事業者(課税事業者)にとっては、税務上で免税事業者との取引自体にデメリットしかないので、取引相手をインボイス事業者に限定しようと試みる動きも予想されます。

主な取引先が免税事業者の場合

主な取引先が免税事業者の場合、現行通りで受ける影響はありません。免税事業者は仕入税額控除を受けず、インボイスの保存も必要ないためです。免税事業者は、取引相手が免税事業者であればインボイス登録やフォーマットの変更も不要です。

課税事業者になった場合の影響

免税事業者が課税事業者になった場合、消費税の納税義務が発生します。そのため、売上から消費税が引かれるということになります。取引は継続できたとしても売上の利益が減るため、インボイス登録にためらう事業者も多いでしょう。

免税事業者が適格請求書発行事業者になる必要はあるか

免税事業者が適格請求書発行事業者になる必要性は、業種により異なります。例えば飲食店やタクシー会社など顧客が一般消費者である場合は、インボイス登録しなくても顧客に影響はありません。そのため、売上や取引先における懸念点は少ないと言えるでしょう。

しかし、接待利用や移動費で経費として精算される場合、一般消費者とはなりません。そのため、インボイス登録を行い、適格請求書発行事業者になったほうが良い場合もあります。

インボイス制度における支援措置

インボイス制度導入にあわせ、事業者の多方で発生する負担を軽減するためさまざまな支援措置が取られています。

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登録申請の期限延長

適格請求書発行事業者の登録手続きが柔軟化されました。免税事業者が登録申請書の提出日から15日以降で設定した「登録希望日」から登録完了となります。

ですが、実際の登録番号発行に時間がかかることを考慮し、検討や申請は余裕を持って行いましょう。

参考:登録制度の見直しと手続の柔軟化に関する概要|国税庁

仕入税額控除の経過措置

インボイス制度は2023年10月より開始されるものの、課税事業者が免税事業者との取引で発生する負担が急増するのを防ぐため、一定期間の経過措置が設けられています。経過措置の対象となるのはインボイス登録していない事業者と取引している課税事業者です。

経過措置は2023年10月1日から3年間の2026年10月1日までは免税事業者からの課税仕入れの80%仕入税額控除、そこから3年間の2029年10月1日までは50%の仕入税額控除ができることになっています。

経過措置を受けるため、帳簿には区分記載請求書等保存方式の記載事項に加えて、適用を受ける課税仕入れであることを記載する必要があります。例えば、「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などの記載方法があります。

請求書は区分記載請求書等保存方式と同様の記載事項で、8%と10%の税率ごとに合計した税込み価格での作成が必要です。

納税額を売上税額の2割にできる(2割特例)

2割特例では、売上税額の8割が控除され、業種に関わらず一律で2割の消費税の納付が認められる措置です。

免税事業者から課税業者になった事業者であれば、事前の届け出は不要です。ただ、消費税の確定申告書の際には2割特例を受ける旨を記載しておく必要があります。

2割特例はずっと続くものではなく、2023年10月1日から2026年9月30日までの属する課税期間が対象となります。個人事業では確定申告の対象となる2023年12月31日までです。

参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁

インボイスなしで仕入税額控除できる(少額特例)

少額特例は、少額(税込10,000円未満)の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくても条件を満たせば仕入税額控除ができる課税事業者向けの措置です。取引先がインボイス登録をしていない免税事業者に対しても適用されます。

少額特例の対象は基準期間における課税売上が1億円以下の事業者や特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者です。少額特例を受けるためには、一定の事項を記載した帳簿の保存が必要です。

参考:少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要|国税庁

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、インボイス制度や働き方改革など今後直面する制度変更に対応するため、小規模事業者等の一部の経費を補助する取り組みです。

通常の補助額に加え、インボイス特例の要件を満たしていることで50万円を上乗せされます。年内の公募は終了しているため、今後の受付スケジュールは以下の公式サイトからご確認ください。

参考:小規模事業者持続化補助金

インボイス対応ツール導入への補助金

インボイス対応ツールの導入費用が支援される補助金制度もあり、環境整備が難しい企業でも取り入れやすく、制度開始を機にDX化推進が図れます。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の課題やニーズに応じたITツールの導入を支援し、業務効率化や売上アップに繋げることを目的とした補助金です。

インボイス制度導入に向けて新しいシステムを導入した場合、「デジタル化基盤導入枠」が利用できます。場合によってはその他の枠を利用できる可能性もあるため、詳細はIT導入補助金の公式サイトをご確認ください。

参考:IT導入補助金2023

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が直面する制度変更に対応できるよう、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。

ものづくり補助金の一般型には、通常枠・回復型賃上げ・雇用拡大枠・デジタル枠・グリーン枠の4つの枠があります。

インボイス制度導入に向けて新しいシステムを導入した場合、DXに資する設備・システム開発の支援を目的とした「デジタル枠」に該当する可能性があります。

参考:ものづくり補助金

特定の取引をインボイス対象外にする

基本的に買い手はインボイス等を保管することが原則ですが、以下のようなケースについてはインボイスの保存義務が免除されます。

  • 3万円未満の公共交通機関を利用した際の乗車券
  • 3万円未満の自動販売機での購入
  • 入場券等が使用時に回収される取引
  • ポスト投函での郵便サービス利用費
  • 卸売市場における出荷者等の生鮮食料品等の販売など
  • 古物営業者の一般人からの古物購入
  • 質屋営業者の一般人からの質物の取得
  • 農林水産物の販売など
  • 従業員に支給する通常必要とされる出張旅費等

インボイスの保存義務自体は免除となりますが、帳簿への記載で補足する必要があることを忘れてはいけません。

「3万円未満」と提示している要件は、1回の取引全体の税込価格で判断します。遠方や長距離移動を伴うシーンだけでなく、日頃の外出から領収書の保管を習慣づけておきましょう。

インボイス制度への対応はシステム導入で効率的に

インボイス対応は各種対応システムの活用によって業務を効率化できます。請求書発行システムや会計ソフトなどがその対象となります。例えば仕入用の税区分を登録することで、取引に応じて課税事業者・免税事業者どちらにも即座に対応した業務処理が可能になります。

また、あわせて押えておきたいのが「電子帳簿保存システム」です。電子帳簿保存法に則り、受け取ったインボイスや経費精算で提出されたレシートは7年間保存することが義務付けられています。適切に電子保存されなければ罰則を受けることもあるため注意が必要です。

インボイス制度、電子帳簿保存法両者に対応するシステムもあるため、自社に適したシステム選びのもと導入しましょう。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

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まとめ

インボイス制度は、課税事業者が仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」を導入するシステムです。インボイス制度の導入により請求書の内容や事業者間での取り決め、免税事業者が課税事業者への切り替えなど、様々な方面に変更点が生じます。

特にインボイス登録しない免税事業者と取引が課税事業者の場合、消費税や事務作業を負担することを懸念し、取引を停止することもあります。免税事業者が課税事業者となって消費税を負担し、利益の減少につながると理解していても、厳しい選択をせまられることもあるでしょう。

ですが、経過措置や支援措置もとられているため、理解した上で取引先と相談することも可能です。事務作業が増えると懸念されるインボイス制度ですが、新システムの導入が業務効率化を図る機会になるともいえます。インボイス制度の開始と同時に理解を深め、確実な納税を行いましょう。

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