不動産業界におけるDXとは?DX推進のメリットや課題などを解説

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  • 不動産会社がDXを推進すると、業務の自動化による効率化や人手不足解消などに繋がる
  • 不動産業界でDXを進める際は、不動産テックの精通やDXの知識を持つ人材の確保が重要
  • 不動産業界でDXに役立つシステムには、電子契約システムや不動産管理システムがある

DXとは、ITシステムの導入により人々の生活をより良いものへ変革することを指します。不動産業界においては、対面式での内見や人手不足などの理由でDXの重要性が高まっています。本記事では、不動産業界のDX推進のメリットや課題、DXの進め方などを解説しています。

目次

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  1. 不動産業界におけるDXとは
  2. 不動産会社がDX推進を行うメリット
  3. 不動産業界におけるDX推進の課題と対策
  4. 不動産業界におけるDXの進め方
  5. 不動産業界のDX化に役立つ主なシステム
  6. DX推進システムの選定ポイント
  7. まとめ

不動産業界におけるDXとは

DXとは、「デジタルトランスフォーメーションの」略で、デジタル技術の浸透により、社会生活をより向上させる考え方です。ビジネスの場面においては、IT技術の活用によって、企業風土の変革・競争力の優位性の維持を図ることを「DX」と呼びます。

DXはあらゆる分野の企業で導入が進んでいます。不動産業界でもDXが推進されており、不動産業界におけるDXは「不動産DX」と呼ばれています。不動産DXには課題が多く、DXの導入が思うように進んでいないという不動産会社も少なくありません。

不動産DXと不動産テックの違い

不動産DXと似た言葉に、不動産テックがあります。不動産テックとは、「不動産」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語であり、最新のテクノロジーを活用して新たなサービスを創出したり、商習慣を変えたりすることを指します。

不動産テックには、最新の技術を駆使したサービスを創出して起業したスタートアップ企業も含まれます。

不動産テックと不動産DXは混同されがちですが、不動産テックは企業の課題解決や商習慣を変える「手段」であるのに対し、不動産DXはテクノロジーによって企業を「変革」させる点で異なります。

不動産業界におけるDXの重要性

今後の不動産市場の発展のためには、業界全体でDXを推進することが重要と考えられています。まずは、不動産DXの重要性について解説します。

古い体質の脱却

不動産DXが重視される理由の1つとして、古い企業体質からの脱却が挙げられます。不動産業界では、紙の書類・対面式の内見・レガシーシステムでの顧客管理などアナログな業務プロセスが多く根付いています

顧客と対面して物件の説明を行うことから、他業種に比べてリモートワークの普及も難しいです。

急速にIT化が進む現代において、従来のアナログ手法をとり続けることは、業界全体の衰退につながりかねません。時流に対応していくためにも、不動産業界でも早急なDXが求められます。

慢性的な人手不足

不動産業界では、マンパワー頼りの非効率なアナログ業務プロセスが根強く残っており、長時間労働が常態化している会社が少なくありません。その結果、不動産業界は離職率が高く、深刻な人手不足に陥っています。

限られた人手で事業を回していくには、ルーチンワークを自動化するなどして、業務の効率化を図る必要があります。人手を割かずに業務を効率化するには、やはりIT技術の活用が重要となります。

顧客ニーズの多様化

顧客の購買行動・ニーズが多様化していることからも、不動産DXの推進が必要です。従来の不動産の購買では、顧客が不動産会社に足を運び、紙の書類から物件を探し、気になる物件があれば現地に内見に行くといったスタイルが主流でした。

しかし、最近は3DCGやVRを活用して、スマートフォンやパソコン経由で物件の検索・内見を済ませる顧客が増えています。また、価値観の変化に伴い、新築ではなく中古物件やリノベーション物件を求める顧客も増加しました。

従来よりも多様化・複雑化している顧客の購買行動・ニーズに応えるには、不動産業界も従来のやり方から脱却し、DXを推進する必要があるでしょう。

DX推進における情報の不足

上述したように、不動産業界ではアナログ文化が根付いているケースが多いです。そういった企業では、ITリテラシーが不足している場合があるため、システム化によるDXの推進が難しい課題があります。

無理にシステムを導入してDXを進めようとしても、企業においてシステムに関するノウハウが不足している場合は、失敗に終わるリスクも高いです。したがって、不動産DXを推進するためには、ITリテラシーが豊富な人材を確保することが重要です。

不動産会社がDX推進を行うメリット

不動産DXを推進するには、まず不動産会社がDXのメリットを正しく理解しなければなりません。メリット・意義を知ることで、おのずとDXへの取り組み方も変わってくるでしょう。

ここからは、不動産会社がDXを行うメリットを5つご紹介します。

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業務の効率化

不動産DXによって業務の効率化が見込めます。不動産業務は、紙の書類作成・対面の接客といった手動の業務が少なくありません。不動産DXによりIT技術を導入することで、従来は手動で行っていた業務を一定程度自動化できます。

限りある人的リソースをよりコアな業務に集中させられるため、ひいては生産性の向上にもつながるでしょう。

人手不足の解消が見込める

IT技術を導入すれば、重要度の低い定型業務は一部自動化できます。つまり人件費をかけずに労働力を補充できるため、不動産業界で深刻化している長時間労働や人手不足の改善が期待できるでしょう。

また、不動産DXの導入は、採用人材の幅を拡大することにもつながります。たとえば不動産業務の中でも、物件査定などは経験値が必要な業務です。そのため、即戦力を求める不動産会社は、新卒よりも不動産業界経験者を中途採用する傾向がありました。

一方、DXを導入すれば、物件査定などの専門的な業務も一部自動化できます。新人でも業務遂行が可能となるため、採用の対象を不動産業界経験者だけでなく新卒にも広げられます。

採用対象の間口が広がれば志望者も増えやすくなるため、業界全体での人材不足の解消が見込めます。

顧客満足度の向上

不動産DXは多様化する顧客のニーズに応えることで、満足度を向上させてくれます。顧客満足度の向上に役立つIT技術としては、テレビ電話で賃貸借契約に関する重要事項を説明する「IT重説」や、VR機能を利用した「VR内見」が代表的です。

不動産会社や現地物件に足を運ばずに不動産契約を進められるため、遠方の顧客・不動産探しに時間をかけたくない顧客には便利でしょう。

コストの削減

不動産DXによって、金銭的・時間的コストを削減できます。たとえば、従来はデータ入力や物件の査定といった業務は手動でしたが、IT技術の導入によって一部を自動化できます。これにより、手動の業務遂行に割いていた人件費や時間をカットできます。

また、契約書などの各種書類も電子データ化することでペーパーレスを推進できるため、紙代・インク代といった消耗品費の節約につながります。

新たなビジネスモデルの確保

DXの導入により、ビジネスの加速や新しいビジネスモデルの創出のチャンスが生まれます。現代はどの市場でも、生き残りをかけて新しい付加価値・ビジネスモデルを生み出す動きが加速しています。

具体的には、不動産業界においては、中古物件をスマートホームや介護集合住宅などにリノベーションする事業が、新たなビジネスモデルとして注目されています。

新しい価値やビジネスモデルを生み出すには、既存の手法ではなく新しい仕組みが必要です。そこで注目されているのが、最先端技術を導入するDXです。

不動産業界におけるDX推進の課題と対策

DXはさまざまなメリットをもたらすにも関わらず、不動産業界ではなかなか導入が進んでいないのが実情です。その原因として、不動産業界ならではの課題が指摘されています。

ここからは不動産DX推進が抱える課題と、その解決方法についてご紹介します。

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前例が少なく負担が大きい

不動産業界でDXが進まない理由として、前例が少ない点が挙げられます。DXを導入したいと考えていても、手本とすべき「成功事例」がないため、二の足を踏んでいる不動産会社は少なくありません。

不動産会社は、部署独自の業務プロセスを築いているケースや、地域独自の風習に根付いた営業スタイルを取っているケースが多くみられます。特に全国に展開している企業は、DX導入にあたって業務ルールを画一化すると、かえって混乱が起こる可能性もあります。

また、DX導入にあたって、古い慣習を覆して新しい業務プロセスを一から築くのは負担の大きな作業です。そのため、DXを検討しているものの、実際には導入に至っていない不動産会社が一定数存在しています。

対策

この問題の対策として、無理のない範囲で業務プロセスを標準化する方法がおすすめです。部署・地域独自のルールは尊重しつつ、影響の少ない業務からデジタル化を始めてみましょう。

他の不動産会社のDX導入事例を参考にするのも良い方法です。不動産DXを進めている不動産会社は少ないものの、ゼロではありません。

特に大手不動産会社はDX導入に積極的で、成功事例も多くみられます。そういった事例を参考にしつつ、自社の状況にあった方法やペースでDXを推進していきましょう。

システムの選定が困難

システムの選定が難しい点も、不動産DXが進まない理由の1つです。DXを実現するためのツール・システムは多数あり、それぞれ搭載機能や料金形態などが異なります。

IT技術に慣れておらず、ツールを初めて導入する企業にとっては、どのようなツールを導入すべきか検討もつかず、導入を諦めてしまうケースは少なくありません。

対策

まずは、DXの導入の目的や達成したい目標を明確化することが大切です。DXによって実現したい業務プロセスやフローを具体的に設定することで、自社にとって必要なツールを絞り込みやすくなるでしょう。

システム導入時にコストや時間がかかる

金銭的・時間的なコストもDX推進を阻む課題です。DX推進にあたっては、さまざまなツール・システムの導入が必要となるため、それらの導入費用・維持費用がかかります。環境整備や月額料金だけでなく、ツールを使いこなす人材の育成費用もかかるでしょう。

また、システムの導入後は、社内に浸透するまでに少なからず時間がかかります。そのため、導入してからすぐにDXの効果が感じられるわけではないため、即効性を求める企業にとってDX推進はリスキーといえます。

対策

この課題の対策には、導入前に費用対効果を十分に検討しておくことが有効です。導入費・維持費が多少かかったとしても、それ以上に得られるメリットが大きければ、DXを導入する意義はあるでしょう。

費用対効果を最大化するためにも、自社が必要とする機能や、それに見合った料金かを検討しましょう。また、システムの早期浸透を促すには、従業員が積極的にDXを活用することが大切です。

DX導入の重要性を組織全体に周知・共有することで、積極的な活用を促進できるでしょう。

不動産業界におけるDXの進め方

不動産業界はDXを推進することで、不動産業務の効率化や人手不足の解消といったメリットを得られます。一方で金銭的・時間的なコストなどのデメリットもあるため、DX推進は慎重に行いましょう。

ここからは、不動産DXの進め方のポイントをご紹介します。

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不動産テックに精通しておく

不動産DXの推進にあたっては、不動産テックも必要となります。上述したように不動産テックとは、テクノロジー技術によって不動産業界の課題・古い体質を改善することを指します。

不動産DXが変革全体を指すのに対し、不動産テックは実際に変革に用いるIT技術そのものを指します。つまり、不動産DXを実現する手段が不動産テックと言えます。

よって不動産DXの推進を成功させるには、まず、そのための手段である不動産テックに精通しなければなりません。たとえばIT技術に精通した人材の招聘・育成といった対策が必要です。

組織的なDX推進体制を整える

DXを推進するには、組織全体でDXに対応する体制を整える必要があります。そもそもDXとは、IT技術によって組織・社会全体を根底から革新していく取り組みであるためです。

経営部門やIT部門は、全部門・全従業員が積極的にDXを活用するような体制作りに取り組みましょう。

DXを行う目的を明確にする

DX推進にあたって、まずは組織全体でその目的・重要性を共有しましょう。従業員がDXの意義を理解できなければ、どんなに高機能なシステムを導入したところで、積極的な取り組みにはつながりません。

体裁は整ったものの、中身は形骸化してしまったという事態を防ぐためにも、まずは上層部がDXの目的を明確化し、それを達成していく道筋を全従業員に具体的に設定する必要があります。

DXの知識を持つ人材を確保

DXを推進するには、ITの専門的な知識・技術・ノウハウを熟知した人材を確保することがポイントです。いくら高機能なIT技術を導入しても、使いこなせる人材がいなければ意味はありません。

人材の確保には、DXパートナー企業などからの招聘のほか、社内の既存の人材を育成する方法もあります。コストなどを比較しながら、どの方法が自社にとって最適か検討してみましょう。

DXを進められるシステムを導入

DXを実現するには、各種のシステム・ツールの導入が必要です。搭載機能はシステムによって異なるため、自社の状況に適したものを選定してください。

DX実現によく利用されているツールやシステムについては、次項でご紹介します。

不動産業界のDX化に役立つ主なシステム

不動産DXを実現するシステムは、多数提供されています。どのシステムを導入すべきかは各企業の業務状況などによって異なるため、機能面やコストを比較しながら十分に検討してみましょう。

今回は、不動産DXによく利用されているツール・システムを4つご紹介します。自社にとって最適なDXツールを理解するためにも、ぜひご覧ください。

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電子契約システム

電子契約システムは、オンライン上で各種契約を締結するものです。従来は不動産の売買・賃貸借には書面の契約書が必要でしたが、2022年5月からは電子データの契約書も認められています。

電子契約システムを導入すれば、対面で契約書を交わす必要がありません。時間・場所を問わず契約書を締結できるため、従来に比べて契約業務を時短化・効率化できます。

また、紙の書類のように紛失や破損のリスクが少ない点、保管場所が不要な点もメリットです。

Web接客システム

Web接客システムとは、たとえばビデオ通話によるリモート接客・IT重説・VR内見などが代表的です。従来のように顧客が店舗や現地に足を運ぶことなく商談を進められる点がメリットです。

不動産会社の従業員にとっても時短になるほか、物件への移動中の交通事故のリスクを減らせます。

チャットツール

チャットツールは、メッセージのやり取りを行うためのツールです。メールのようにその都度メールアドレスや件名を入力する必要がないため、気軽にメッセージ交換できる点がメリットです。従業員同士や従業員と顧客の盛んなコミュニケーションを促せるでしょう。

従業員同士のコミュニケーションの活発化は、スムーズな情報共有や業務連携につながります。顧客側にとっては、疑問点や不明点をすぐに従業員に相談できるため、物件探し・契約に関するハードルが下がります。具体的には、集客アップが見込めるでしょう

不動産管理システム

不動産管理システムとは、不動産業務を一元的に管理できるツールです。たとえば次のような機能を備えたものが一般的です。

  1. 物件管理機能
  2. 顧客管理機能
  3. 契約書・請求書管理機能
  4. 入金・支払管理機能
  5. 会計・収支管理機能

従来のような手動での管理が不要となるため、不動産業務の効率化が期待できます。また、人的リソースをよりコアな業務に集中できるため、成約率ひいては売上のアップも期待できるでしょう。

DX推進システムの選定ポイント

DXを実現するには、各種のシステム・ツールの導入が必要です。費用対効果を高めるためにも、自社状況に即した機能やコストのツールを選定しましょう。

ここからは、DX推進システムの選び方のポイントをご紹介します。

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中長期ビジョンを明確にする

まずは、DX推進の中長期的なビジョンを明確にしておきましょう。DXの効果は、導入後すぐあらわれるわけではないためです。即効性を求めるあまり高機能なシステムやツールを導入すると、使いこなしきれずに形骸化する恐れがあります。

まずは、DXにはそれなりの期間がかかることを考慮して、どういった道筋でDXを成功させていくのかを具体的に設定しましょう。KIPを設定すると、DXの成功に向けてどのような道筋を辿るべきかが明確に打ち出せます

すなわち目標達成のために必要な機能やツールも判明するため、自社にとって最適なシステムを導入できるでしょう。

柔軟性・拡張性を確認

DX推進システムは、状況に応じてカスタマイズできるものを選びましょう。ビジネス環境や顧客ニーズは日々変化していくものであり、それに対応するには、企業側も柔軟にDXの在り方を変化させていかなければならないためです。

たとえばDX推進システムの中には、AI⾃動帯替え機能・地図付き物件提案機能のリリースを予定しているものがあります。DXは中長期的に運用していくことを前提に、自社にとって使いやすいシステムを検討しましょう。

使いやすさを確認

DX推進にはさまざまなシステムやツールが必要ですが、いずれも使いやすいものを選定することが大切です。いかに高性能なシステムであっても、従業員が使いこなせなければ導入する意味がないためです。

DXは、経営部門・IT部門そして業務部門の全てが協力して運用していきます。ITに関する知識・技術は従業員によって差があるため、その点も考慮しながら組織全体で使いやすいものを選定しましょう。

まとめ

DXはIT技術の活用によって、企業風土の変革や競争力の優位性を保つものです。不動産業界でも、古い体質の脱却・業務の効率化・人手不足解消のためにDXの推進が重要とされています。

一方で、不動産DXには導入の際の負担やコストが大きい・システムの選定が困難といった課題があります。課題を解決してDXを推進するには、DXの目的の明確化・人材の確保・組織全体での体制作りといった対策が必要です。

不動産DXを実現するためのシステム・ツールとしては、電子契約システム・Web接客システム・チャットツール・不動産管理システムなどがあります。それぞれ機能やコストが異なるため、自社の状況に即したものを選びましょう。
不動産DXは中長期的な運用となるため、それを前提としたビジョン作り・柔軟性のあるシステム選びが重要です。不動産会社は自社に最適なシステムでDXを推進し、新しいビジネスモデルの創出・売上の拡大や顧客満足度の向上を図っていきましょう

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