医療DXとは|主な機能・できること・活用事例・課題・注意点を解説

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  • 医療DXとは、医療現場でデジタル技術を駆使して、社会や生活を変革することである
  • 医療DXを活用することで、人材の有効活用や業務の効率化を図ることができる
  • 医療DXの推進により、離れた場所にいるスタッフと連携でき、オンライン診療が可能

医療業界は、人材不足や医療格差といった課題があり、その中で医療DXが求められています。本記事では、医療業界が抱える課題について解説し、医療DXの主な機能やできること、活用事例の他、導入に当たっての課題や注意点について紹介します。

目次

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  1. 医療DXとは
  2. 医療業界が抱える現状の課題
  3. 医療DXの主な機能
  4. 医療DXを活用することでできること
  5. 医療DXの活用事例
  6. 医療DXの課題
  7. 医療DXをはじめるにあたっての注意点
  8. まとめ

医療DXとは

医療DXとは、データやデジタルを駆使して、医療におけるさまざまな業務やそれに追随する環境を変革することを指します。主に、医療提供上で課題となる問題の解決を行うことを目的としています。

具体的には、病院や診療所、保健・看護や介護など、医療が関わる現場で扱う膨大な情報を、データ化します。そして、必要な場所と時間に、速やかに共有できるためのプラットフォームを構築し、いつでもどこでも必要なデータを使える仕組み作りを目指します。

医療DXの目指す方向性は、「医療の効率的かつ効果的な提供により、 診療の質の向上や治療等の最適化を推進」することですデジタル化により、医療現場での業務負担が軽減され、適切な医療措置が行える環境が整います。

参考:「医療DX令和ビジョン2030」|厚生労働省

医療業界が抱える現状の課題

医療DXを推進するためには、医療業界が抱える現状の課題を理解しなければいけません。ここでは、医療業界が抱える現状の課題について解説します。

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人材不足

そもそも医療業界では、従事者の離職が懸念されており、慢性的な人材不足状況です。これは、過酷な労働環境が主な原因であり、人材や人手が足りないことで、現場の医療従事者が長時間労働を強いられている状態とも言えます。

長時間労働による慢性的な疲労や睡眠不足によって、医療ミスやヒヤリ・ハット(事故までには至らないものの、事故につながる危険のある事例)などの発生を促しかねません。

少子高齢化

2025年に、最も人口が多い世代が75歳以上になります。これは、日本国内の人口の約2割を後期高齢者が占める割合です。そのため、医療や介護の必要性はますます高まる傾向にあります。

厚生労働省の「令和4年版厚生労働白書」によると、経済成長と労働参加が進むと仮定されたケースにおいても、2040年度には医療・福祉分野の就業者数が96万人不足すると述べられています。社会保障を支える人材の確保が今後の最重要課題ともいえるでしょう。

参考:令和4年版厚生労働白書|厚生労働省

デジタル化の遅れ

日本の医療業界のデジタル化は、世界においても遅れをとっています。その理由は、医療現場の「ITリテラシーの低さ」が原因です。

ITリテラシーが低いと、システムを導入しても使いこなせる人材がいません。また、システムを導入するメリットを理解できないため、消極的になりがちです。

システムの導入ができないと、以前は複数人で行われていた業務を、人手不足の状態で引き継ぐことになります。結果として業務過多となり、医療現場の崩壊を引き起こす懸念があります。IT人材の確保も難しいため、誰にでも理解できるシステムの導入が早急に必要です。

医療格差

日本は都市部に人口が集中しているため、それに伴い、医療従事者や医療設備も集中化が進み、地方との医療格差が広がっているのが現状です。そのため、地域によって患者が受けられる医療サービス差があります

たとえば、地域の過疎化が進んでいる場所においては、高齢者が多いのに専門の診療所がないケースがあります。また、豪雪地帯などは、雪が降ると交通の便が悪くなり外出できず、受診ができないなどの課題もあります。

電子カルテは2030年までに普及完了

2022年5月に、自民党政務調査会により「医療DX令和ビジョン2023」が発表されました。これは「医療DX令和ビジョン2030」を実現するために、「医療DX令和ビジョン2030厚生労働省推進チーム」を設置し、国が中心となって執り行う施策として考えられています。

医療DXの骨格として挙げられている3つの提言のうちのひとつが、「電子カルテの標準化」です。ここでは、すべての医療機関で情報共有を行えるように、電子カルテの普及率を2026年には80%、2030年までに100%と設定されています。

厚生労働省の「医療分野の情報化の推進について」によると、2020年の時点では、病院や一般診療所での電子カルテシステムの普及状況は、どちらも5割ほどの普及率です。しかし、400床以上を備える大病院の9割で、電子カルテが定着化してきています。

参考:医療分野の情報化の推進について |厚生労働省

医療DXの主な機能

医療DXが導入されると、どんなことができて、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、特に下記の3点について、詳しく解説します。

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データ活用

医療DXの主な機能のひとつに、データの活用があります。このデータとは、医療や看護・介護現場におけるあらゆる情報を電子化したもののことを差し、現場における情報共有が促進されます。

たとえば、カルテやレセプトの電子化が進むことで、それまで同じ情報を各現場で入力していたものが、一元化されます。これにより、リアルタイムのデータを確認できることに加え、電子化によるペーパーレスが進み、資料の保存や検索が簡素化します。

他にも、レントゲン写真や心電図など、検査データとカルテを紐づけて管理できるため、事務的な作業の負担軽減にも繋がるでしょう。

開発環境の搭載

医療DXは、さまざまな環境変化に迅速な対応を実現します。現場における情報の共有は、電子データで速やかに行われるため、医療対応の速度が上がり、求められる要求に素早く対応できます

また、新型感染症などの大規模なパンデミックや災害が起きても、即座にオンライン診断などを利用して、遠隔受診に切り替えることができます。さらに、システム障害や書類の破損によるデータの損失などを防げます。環境や状況に見合った柔軟な対応が可能です。

システム間の連携

診療内容を記録するカルテを電子データ化することで、各医療機関の連携がとれ、医療情報のプラットフォームが最適化されます。そのため、離れた現場でも必要な情報を活用できます。

また、電子カルテと診療報酬情報を管理するレセコンを連携させることで、患者が行う受付・診療・会計といった流れを一元管理できます。その結果、入力業務の重複が減り、レセプトの請求作業が簡素化されて、医療事務作業の軽減が図れます。

医療DXを活用することでできること

医療DXが導入されると、どんなことができて、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、医療DXを活用することでできる4つの点について、詳しく解説します。

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人材の有効活用

医療DXを活用することで、業務の簡素化が測れ、必要な場所に必要な人材を確保できます。また、患者の情報を電子データ化により、各機関での情報の重複入力作業を減らせるため、その分の時間を他の業務に充てることができます

さらに、診療報酬改定などのさまざまなルール変更による業務の増加にも、すぐに対応できます。レセプトに関する作業は、医療DXの導入前後により大幅に効率化され、医療従事者だけではなく、医療情報システムに携わる人材を有効に活用できます。

業務の効率化

業務のRPA(Robotic Process Automation)化を進めることで、業務の効率化が図れます。RPAとは、ソフトウェアロボットを活用してPCなどを使用した定型作業を自動化するツールです。

診療以外の医療・看護・経理・総務・人事業務において、日々繰り返される定型業務をロボットに任せられます。ロボットなら24時間稼働できるため、夜間の通常業務が行われない時間に動かせば、業務の効率化に最適です。

個人でデータ把握ができる

医療データの電子化は、個人のデジタルヘルスケアにも活用できます。生涯データの一元管理により、同じ症状を持った患者の疾病データの参照が可能です。そのため、病気の発症を予測ができ、早期発見・早期治療を行えます。

また、個人のアレルギーデータなどを自分自身で把握ができることで、個人の健康増進につながります。ヘルスケアアプリとの連携で、自身の身体の調子を把握したり、蓄積した健康データを受診時に利用できたりするため、病気を予防する意識を持って生活を送れます

BCP対策の強化

医療DXを導入することで、BCP対策の強化にも繋がります。BCP対策とは、災害や事故などが発生した場合に、被害を最小限にとどめて迅速な復旧できる体制を整えるリスクマネジメントのことを指します。

もし、カルテなどの医療データを紙で保管していたり、単体のサーバーのみで管理していたりする場合、災害などが起きるとデータが損失するリスクが高いです。そのため、一般企業だけでなく、医療業界においてもDX化を進めて、BCP対策を強化することが重要です。

医療DXの活用事例

実際に医療DXは、どのような場面で活用できるのでしょうか。ここでは、離れた場所にいるスタッフとの連携や、患者の待ち時間対策に有効な医療DXの活用事例について紹介します。

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現場から離れた医療スタッフとの連携

医療DXの導入によって、現場から離れた医療スタッフとの連携ができるようになります。必要な情報をデータ化することで、いつでもどこでもデータの利用が可能なため、患者とのオンライン診療もでき、地方にいながら都市部の医療機関の診察を受けられます

また、カルテやレセプトなどのデータ化により、患者への対応をより迅速に行えます。データの共有によって病院内でカルテを運ぶ手間がなくなり、データを瞬時に離れたところにいる医療スタッフへ送ることが可能です。

患者の待ち時間を減らす

従来の受診では、受付で受診の予約を行い、順番が来るまで待合室で待つことが通常でした。しかし、医療DXを活用して予約システムを利用することで、患者の待ち時間の大幅な短縮が可能になります。

待ち時間の短縮は、院内感染を防ぐほか、患者の待ち時間へのストレスや身体の負担を減らす効果が期待できます。また、処方箋の原本が電子データ化されれば、薬局側はプリントアウトや情報の再入力などの作業の手間を省け、さらなる時間短縮に繋がります。

患者側も薬局に電子データを送信し、自分で好きな時間に取りに行くこともできるため、効率的に薬を受け取れます

医療DXの課題

医療DXの導入には、まだまだ課題も多いです。ここでは医療DXの課題として6つの重要なポイントについて解説します。医療に限らず、どの分野にも共通する課題も多いです。現状の理解と課題への対応を明確にしておきましょう。

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IT人材の確保

医療に携わる人材と同様に、IT人材の確保も医療DXの深刻な課題となっています。医療機関において、システムの活用は年々重要性を増しており、さまざまな医療機器の導入や接続方法、トラブルが起きた場合の対応など、知識を要する人材の確保は必須です。

しかし、「医療」と「IT」の知識を要する人材は、非常に重要視されている反面、人材が不足しています。特に中小規模の病院や診療所、介護施設などでは、IT人材の不足がシステムの導入に踏み切れない一因ともなっています。

医療データ形式の標準化

医療DXの推進と同時に、医療データ形式の標準化が進められている背景には、医療機関と患者側両者にとってメリットがあるためです。特に療情報をデータ化し、他機関との連携を行うためには、電子カルテ情報の標準化は重要です。

しかし、元来カルテに書き方の統一規定などはないため、病院や医師ごとに異なる書き方が行われており、デジタル化への対応が難しい一因となっています。同時に、ITリテラシーの低さ、専門家の不在も課題です。

システムのオンライン常時接続

病院における医療DXには、病院情報システムのオンライン常時接続が必要となります。しかし、現状では制限された活動内で接続が行われている場合がほとんどです。

大規模病院では、情報システムの専門部を設置していることも多く、万全な対応ができます。しかし、中小規模の病院では病院SEの確保が難しいため、ベンダーとの契約が不可欠です。また、非常時に備えて、日ごろから訓練を実施しておく必要もあるでしょう。

システムのダウンだけでなく、不正なアクセスやサイバー攻撃により、個人情報が危険にさらされる危険性もあります。そのため、ITリテラシーの低い医療現場は、オンラインの利用に慎重になり、医療DXが進まないのが現状です。

市場の競争原理が働きにくい

医療業界では、一般市場にある競争原理が働きにくいため、積極的なDX導入への誘導が難しいです。一般DXにおける「競争上の優位性を確立する」という意識が、病院DXでは「医療の質向上をはかるため課題解決に取り組む」といった意識に置き換えられるためです。

医療サービスは、ローカルな市場です。ほとんどの患者は、地元のかかりつけ医に受診するでしょう。患者が病院に行く場合は、急性症状のケースが多いため、わざわざ時間をかけて離れた場所にある評判のいい医者にかかろうとは思いません。

また、ひとつの地域に同じような機能をもつ病院が複数あることは稀なため、比較ができません。患者側が受診前に自身の病気を理解し、どんな検査が必要で、どれくらいの値段がかかるのかを前もって知ることはできないため、比べるのが難しいです。

デジタル格差が生じる

医療DXを進めることで、患者はオンラインによる予約や診療を受けることが可能になります。しかし、その一方でデジタルに慣れていない高齢者やIT知識のない患者は多い傾向にあります。

そのため、オンライン予約の仕方が分からないなどから、医療DXの恩恵を受けることが難しいのが現状です。必要なときに診療を受けられないリスクが生じる可能性もあり、デジタル格差は大きな懸念点になっています。

導入コストが生じる

医療DXは、将来的には医療業界全体のコスト削減につながりますが、パソコンや付随する機器などのデジタルツールを導入するには、一定のコストが発生します

現在、大規模な病院では数千万円のコストが生じるため、デジタルツールなどを導入することで経営を圧迫することもあるでしょう。

補助金の申請を検討する

国は、ITを導入する企業に対し、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する「IT導入補助金」を提供しています。予算をおさえるために、IT導入補助金の申請の検討がおすすめです。

こうした制度を活用することで、導入コストの負担を大幅に軽減できるでしょう。

参考:社会保険診療報酬支払基金医療機関等向け総合ポータルサイト

医療DXをはじめるにあたっての注意点

医療DXは、医療のあらゆる情報をデータ化することで、各機関や現場に必要な情報をいち早く届けられる便利なシステムです。しかし、医療情報のネットワーク構築にはインターネットの利用が必須となることから、セキュリティ面を不安視する意見もあります。

医療データには、個人情報が詰まっています。そのため、情報漏洩のリスクなどが懸念されます。したがって、医療DXの技術導入だけでなく、セキュリティ対策もあわせて取り組み、安全な運営・管理に力を注いでいく必要があります。

まとめ

近年、新型感染症や自然災害などにより、ひっ迫する医療業界の課題が浮き彫りとなりました。困難を乗り越えるためには、多くの医療機関がデジタル化の推進を行い、業務の効率化を目指すことが重要です。

医療DXの取り組みは、まだまだ始まったばかりです。しかし、その需要は高まりを見せており、今後加速度的に広がると予想されています。人材や労働力の不足など、国を挙げての対策を行う中、現場の医療従事者には、いまだに大変な苦労が押し寄せています。

医療DXの推進は、そんな現状を打破する上でも重要な施策です。超高齢者社会を迎えるにあたり、医療や福祉の現場では、確実に労働力不足が起きることが懸念されています。迅速に対策を行い、業務の効率アップを図りましょう。

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