スマートシティとは|意味と注目される背景、メリット・課題を解説
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- スマートシティでは、ICTなどの技術を活用して生活の利便性や快適性の向上を目指す
- 日本には、エコシティ・公共交通指向型開発・防災減災といった独自の構想が存在する
- スマートシティの取り組みにあたって、地域住民の理解やプライバシー保護の観点が必要
スマートシティは、ビッグデータを収集することで、より良い街づくりを実現できる都市や地域のことを意味しています。本記事では、スマートシティが注目される背景と、スマートシティを後押しする技術、日本独自の構想や実現によって得られるメリットについて解説します。
目次
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スマートシティとは
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スマートシティとは、IoTやAIなどのデジタル技術を使用して、あらゆるデータ・事例を収集し、都市や地域の抱えるさまざまな課題を解決・活用する、持続可能な都市や地域を指します。
ICTなどの技術を活用することで、個人・企業・団体活動のベクトルを揃え、より効果的にさまざまな問題の解決を行い、利便性・快適性の向上を実現できるとされています。
日本だけでなく世界各国で導入されており、中央政府や地方自治体をはじめとし、GoogleやAmazonなどの大手企業もスマートシティに取り組んでいます。
国土交通省によると「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義付けられています。
スーパーシティとの違い
スーパーシティとは、日本独自のスマートシティプロジェクトであり、世界各国でもそれぞれの特徴を活かしたプロジェクトが立ち上がっています。
スマートシティとは内容が全く異なっており、スマートシティはICTを活用することによって都市化を進めるのに対し、スーパーシティは最新の技術を活用して住民の暮らしや地域の問題などを解決することがベースになっています。
スーパーシティには都市OSという概念が導入されており、自治体をまたいでも各サービスを同じように利用できる基盤が構築されています。つまり、統一的な規格で日本全体の課題を解決しようという取り組みです。
その点スマートシティでは、それぞれの各自治体が独自に技術を利用してサービスの提供をしており、統一的な規格を導入しているスーパーシティとは大きな違いがあります。
スマートシティが注目される背景
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スマートシティは環境に配慮した経済発展や地球保護の観点から、今後の人々の生活を守る目的として注目されています。その他にも、スマートシティが注目される背景として以下のようなものが挙げられます。
世界的な人口の増加と労働力の減少
近年では世界の人口が増え続けており、近い将来において人々が都市部に集中し、世界の全人口の3分の2が都市部に居住すると言われています。そして、エネルギーの増加・環境の悪化・交通渋滞など、さまざまな問題が発生すると予想されています。
スマートシティは、エネルギー供給の見直しやインフラの効率化など、都市のさまざまな問題解決に取り組むため、世界中で推進されています。また、課題をまとめて解決できる手段としてもスマートシティが注目されています。
なお、人口の増加と比例して高齢化社会も加速を続けており、労働力の減少も大きな社会問題となっています。
貧困を解決して生活の質を向上させる
最先端の技術を活用できるスマートシティ構想は、誰もがより良い生活を維持し、質を向上させられる持続可能な都市の実現に向けて、世界中で重要な政策となっています。高齢化が進行して労働力が減少すると、生活の利便性が低下することが予想されます。
そこで、SDGsの実現などを考慮しながら、国単体としてだけでなく世界中の国々が協力して貧困や環境問題と向き合い、人々の持続可能な社会を作り出すことを目標としています。
スマートシティの種類
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スマートシティには大きく分けてブラウンフィールド型とグリーンフィールド型の2種類あります。それぞれの特徴をまとめます。
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スマートシティの種類
ブラウンフィールド型
ブラウンフィールド型のスマートシティは、住民が生活している既存の都市を対象に、都市が抱える問題を最先端のデジタル技術や新しいルールなどに適応して、住民の合意を形成しながら解決していくタイプのスマートシティです。
スマートシティは本来、都市のエネルギー問題をデジタル技術で解決する取り組みから始まっています。その後、環境全般に広がっていき、既存都市のあらゆる問題を解決する街づくりへと発展してきました。
ブラウンフィールド型のスマートシティは世界各地に存在しており、コペンハーゲンやニューヨーク、シンガポール、アムステルダムなどが代表的です。既存都市を上空から俯瞰した様子が褐色に見えることから、ブラウンフィールドと名付けられました。
グリーンフィールド型
グリーンフィールド型のスマートシティは、未開発で整備のされていない土地を使用し、ゼロからITを基準とした都市を開発していきます。草が生い茂っている空き地のイメージから、グリーンフィールドと呼ばれています。
グリーンフィールド型の最大のメリットは、住んでいる住人がいないところから新しい都市を作ることにより、大胆なデジタル化を計画可能な点です。
計画には自動運転やドローン物流など、MaaS・ヘルスケアサービス・デジタル地域通貨などの最先端技術が盛り込まれています。そして、全サービスを共通IDで連携することにより、住民の行動履歴などに基づくレコメンデーションサービスが提供できます。
グリーンフィールド型は未来都市に移住するスマートシティで、地域特性や住宅そのものの付加価値に加えて、新たに提供される都市サービスにおける住民が居住を選択するかの判断材料になります。
スマートシティの2フェーズ
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スマートシティは、テクノロジードリブン型のスマートシティ1.0からユーザードリブン型のスマートシティ2.0へ移行しています。
ここでは、ドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲン(Eberhard Karls Universität Tübingen)のヘニング・グンター(Henning Günter)教授が整理したものを説明します。
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スマートシティの2フェーズ
スマートシティ1.0
スマートシティの始まりは、エネルギー需給や温暖化問題などのさまざまな問題を解決する1つのアプローチからです。そのため、スマートシティ1.0では人を中心とした設計ではなく、テクノロジーを中心とした設計と開発が施されています。
スマートシティ2.0
スマートシティ2.0は、生活の隅々までIoTやAIなどの最新技術を導入することで、今まで解決できなかった複雑な問題を解決できる可能性が高まります。
人々の生活における質の向上など、スマートシティ2.0はあくまでもヒトが中心であり、人々を幸せにするために、IoTやAIなどのテクノロジーを導入するような設計になっています。
スマートシティを後押しする技術
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スマートシティを実現するためには、IoTやビッグデータ・AIといった技術を取り入れる必要があります。ここでは、スマートシティを後押しする技術の特徴を説明していきます。
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IoT
IoTとはモノのインターネットのことを指し、自動車・テレビ・家電など、あらゆるモノをインターネットに接続して通信を行う技術です。具体的には、センサーやカメラ、無線通信を搭載して利便性を高める技術を指します。
スマートシティでは、交通機関や地下街などにIoTを導入し、街中の施設におけるリアルタイムな状況の確認・データの収集が可能になります。
また、IoTの活用で遠隔地から対象物を計測・制御したり、モノ同士で通信を行ったりすることが可能になることから、さまざまな分野・領域での活用が期待されています。
ビッグデータ
ビッグデータは、量(volume)・種類(variety)・入出力や処理の速度(verocity)の3つの要素から成り立っており、さまざまな種類や形式のデータを含んだ巨大なデータ群のことです。
従来では活用が難しかった、動画や音声などの非構造化データやリアルタイム性のあるデータの蓄積を可能にします。さらに、DX推進における重要なファクターの1つとしても注目されており、IoTやAIを含めた他の先進技術とも深い関係にあります。
スマートシティでは街中から得られる膨大なデータを収集し、蓄積と可視化によって対策の立案に役立てられるため、より効果的な公的サービスの改善につなげられます。
AI
AIとは人工知能のことで、人間のような知能を持ったコンピューターのようなものを指し、自ら学習してミスをなくしていくことが大きな特徴です。スマートシティでも、自動化やデータ分析などを実現するための技術として重要視されています。
IoTでつながったあらゆるものにAIが組み込まれ、人力を必要とせず自律的にものが動作できる環境になることが期待されています。
日本独自のスマートシティ構想3つの基盤
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日本のスマートシティには、エコシティ(環境共生都市)・公共交通指向型開発(TOD)・防災減災の3つの強みがあります。
化石資源の乏しい日本では、エネルギー消費効率の向上に務めており、徹底した環境配慮を実現しています。その流れにより、低炭素社会・資源循環・環境負荷の低減等の環境に配慮した、エコシティの取り組みへとつながっています。
また、自動車に依存しない都市開発として、公共交通指向型開発(TOD)が進められています。鉄道駅を中心に、オフィスや商業施設・複合施設などを配置し、郊外には住宅地を配置します。こうした都市構造は、交通渋滞の緩和や高度な都市機能の集積につながります。
日本は自然条件から災害が発生しやすく、災害から身を守るためにも防災や減災に取り組んできました。安心した暮らしのために社会インフラを整備し、災害を予測・予防するシステムで、災害の被害を少しでも減らす街づくりに取り組んでいます。
エコシティ(環境共生都市)・公共交通指向型開発(TOD)・防災と減災を積み上げて都市設備の強みにすることで、日本独自のスマートシティ構築を推進しています。
- エコシティ(環境共生都市)
- 公共交通指向型開発(TOD)
- 防災減災
参考:日本のスマートシティ~SDGsなど世界が抱える課題を日本のSociety5.0で解決~|首相官邸
スマートシティ構想の実現で得られるメリット
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スマートシティ構想で具体的にどのようなメリットが生じるのか、住民視点と都市管理者視点でご説明します。
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スマートシティ構想の実現で得られるメリット
住民のメリット
住民視点でのスマートシティのメリットとして、QOL(生活の質)の向上が挙げられます。例えば、インターネット回線が発達していれば、働き方改革に対応するテレワークやリモートワークが容易になります。
また、自宅からでも役所や病院などの混雑状況を把握でき、待ち時間の削減によって通勤やプライベートの時間における有意義な活用ができるでしょう。
その他にも、将来的に自動車の自動運転やドローンが身近になれば、さらに自由度が増え、スムーズな人の流れ・活発なコミュニケーションにつながります。治安や防災の質が高くなることにより、安全面でのメリットにもなります。
都市管理側のメリット
都市管理側のメリットは、IoTからのデータを収集して精度の高い分析や予想ができ、道理的に都市管理計画が可能になるという点です。
従来なら大まかな視点でしかできなかった分析や判断も、ピンポイントな視点で分析と状況把握ができ、施設の規模や配置場所などを考慮した対処が可能になります。さらに、データを共有することで、さまざまな分野を横断した解決策が見つかる可能性もあります。
これまで経験則からしかできなかった判断が、明確なエビデンスに基づいて行われるようになり、住民の納得感が高まって円滑な同意形成が行われるようになります。
スマートシティの取り組みにあたっての課題
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スマートシティを実現するためにはクリアするべき課題があります。代表的な原因を3つ紹介します。
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スマートシティの取り組みにあたっての課題
地域住民の理解と参画
スマートシティにおいて大きな課題となるのが、対象地域住民の理解と参加です。住民の理解・参加が得られないとプロジェクトを進めることができず、中止においこまれてしまうケースもあります。
また、スマートシティ2.0では、最初から地域住民を巻き込んでディスカッションを行い合意を得ていきますが、日本では複数人によるディスカッションに慣れていない人が多いことも懸念されています。
収益化・マネタイズ
スマートシティは、ソフトウェアからハードウェアまでさまざまな最先端技術が利用されており、ビジネスとして成り立ちやすいと考えられがちです。
しかし、費用の負担率・利用者の支払いなど、まだまだ解決できない問題点が残されており、簡単には収益化・マネタイズが実現しないことが懸念点とされています。
プライバシー保護の視点
各種センサーで収集するデータと、個人のプライバシー保護のバランスにおける、プライバシー保護に関しても課題があります。駅前のカメラや購入履歴など、公的サービスにおける活用とはいっても、監視社会になることに対して懸念を感じる人も少なくありません。
したがって、プライバシーを保護しながらデータの活用ができる技術を導入し、技術的な部分でプライバシーの保護とデータの活用を両立させる必要があります。
まとめ
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スマートシティとは、その都市や地域のあらゆる問題を最先端の技術で解決する取り組みです。エネルギーの増加・環境の悪化などさまざまな問題を解決する手段として世界中で注目されています。
住民はQOLの向上に期待でき、生活が豊かになるだけではなく防災・減災にも貢献します。都市管理側も合理的な都市管理計画の実現で、円滑な同意形式が可能になります。ただし、住民や自治体・企業が一体となって取り組みを行っていかなければなりません。
スマートシティでは、新しいビジネスを生み出すポテンシャルを大いに秘めているため、時代の流れに乗り遅れないように注意しましょう。