ログ管理システムとは?導入の必要性やメリット・デメリットを解説

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  • 業務を安全に行うためのログ管理業務は負担が大きく、システムの導入が有効
  • 情報漏洩や内部不正の防止だけでなく、労働状況を管理できるなどのメリットもある
  • 導入する際には、自社のニーズを事前にしっかりと把握しておくことが重要

ログ管理システムは、サーバーや端末上で行った操作履歴を収集し、監視・分析・管理するシステムです。この記事では、ログ管理システムの必要性やシステム導入によるメリット・デメリット、主な機能や選定のポイントなどを詳しく解説していきます。

目次

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  1. ログ管理システムとは?
  2. ログ管理システムの主な機能
  3. ログ管理システムで管理する主なログ
  4. ログ管理システムのメリット
  5. ログ管理システムのデメリット
  6. ログ管理ツール選定の比較ポイント
  7. まとめ

ログ管理システムとは?

ログ管理システムは、企業においてパソコン・スマートフォンなどの端末のほかクラウドサービスやサーバなどのシステムから出されるログを収集・管理するシステムです。

システムに障害が起きたとき、原因の解明や分析にはログに記録された情報が必要です。サイバー攻撃などのリスクが高い現在ではログの管理が重要ですが、手作業で処理すると多くの時間と人手がかかります。

安定したシステム運用をするには、障害によるシステム停止やデータ消失などの被害を抑えなければなりません。そのため、ログを自動で収集・管理できるログ管理システムの導入には、多くの利点があります。

ログ管理とは

ログ管理システムの「ログ」とは、コンピュータの操作およびデータの送受信履歴や情報の記録を取ることです。ログには操作や送受信などが行われた日時とその内容などが記録されます。

たとえば、パソコンなどの端末なら、電源を入れてから切るまでの操作、業務上のシステムなら誰が・いつ・どの端末やアカウントで何をしたのかという情報です。

そのため、このログを適切に管理・分析すると、従業員の勤務時間を把握したり発生したトラブルの原因を解明したりするのにも役立ちます。

ログの管理は、システム以外に無料のOSSでも可能ですが、導入には知識と技術が必要です。ログの管理にはコストと専門知識のどちらかが必要といえるでしょう。

何故ログ管理が必要なのか

そもそも、ログ管理は業務上必須のことではありません。企業では多くの端末やシステムを所持し多数の従業員がさまざまな操作をしているため、どうしてもトラブルが発生しがちです。

また、ITが発達した現在ではサイバー攻撃など外部からのリスクも増えています。このようなトラブルやリスクに対応するためにもログ管理は効果的です。ここではログ管理の必要な理由を具体的に見ていきます。

セキュリティ対策のため

システムなどにアクセスがあった場合、その履歴がログに残ります。ログを管理していると不審なアクセスに気づきやすく、遮断などの対処が可能です。また情報漏洩などの事故が起こった場合も、原因の調査がしやすくなります。

情報漏洩などの原因になる企業へのサイバー攻撃は増加しています。サイバー攻撃は大企業が多いイメージを持たれがちですが、近年では対策が不十分な中小企業を狙うケースが増えています

そのため、企業の規模にかかわらずセキュリティ対策が必要です。膨大なログを自動で収集・管理できるシステムは、セキュリティ対策を補助できる手段と言えます。

情報資産を管理するため

情報資産とは、たとえば事業計画や財務・技術などの情報、顧客や従業員の個人情報など企業にとって価値のある情報のことです。

この情報は紙・データといった媒体を問わず、漏洩・流出すると企業の信用を落とすことになります。このような情報資産の管理にもログ管理は有用です。

従業員が端末やシステムに保存されている情報資産を適切に利用しているか、外からの不正なアクセスがないかなどが確認できます。また、障害が起きたときも何が原因なのかを調査しやすく、対策が立てやすくなります。

監査対策のため

ログ管理システムは、主に情報セキュリティ監査に役立ちます。経営者やシステム管理担当者は、情報漏洩やセキュリティに関する対策を講じる責任があります。ログ管理システムの導入は、情報を正しく運用しているという証明の1つになります

適切なセキュリティ対策を行っているという事実は、顧客や取引先からの信頼にもつながります。情報セキュリティ監査は年に1度の実施が理想とされているため、企業の規模を問わず適切な頻度で監査を受けましょう。

情報セキュリティ監査について総務省がガイドラインを公開しているため、企業立ち上げ前で情報の取り扱いに悩んでいる方は確認してください。

参考:地方公共団体における情報セキュリティ監査に関するガイドライン|総務省

統合ログ管理システムとSIEMの違い

ログ管理システムには、「統合ログ管理システム」と「SIEM」の2つがあり、取得できるログが異なるのが主な違いです。社内のあらゆるログを管理できる統合ログ管理システムに対し、SIEMはサイバー攻撃や内部不正などのセキュリティ関連のログに特化しています。

機密性を問わずログを管理したいなら統合ログ管理システムを、セキュリティに関わるログのみ管理したいならSIEMがおすすめです。

ログ管理システムの主な機能

ログ管理システムは、さまざまなログを自動で収集・管理できるシステムです。ログ管理には下記のような機能があります。しかし、無料のログ管理システムの場合、使えない機能もあるので注意しましょう。

機能概要
ログの取得端末やシステムに個別に記録されるログを一括して取得する
ログの保管・削除取得したログを一括で保存するシステムによっては一定期間が過ぎたログを自動的に削除する機能も備える
ログの監視・分析ログをリアルタイムで監視する取得したログを検索して分析を行い、レポートを出す
通知エラーログや不審なログが記録されたときに管理者に通知する

ログ管理システムで管理する主なログ

ログ管理システムで管理できる主なログは次のようなログです。ただし、どのログ管理システムでも下記のログ管理がすべて可能というわけではありません。導入するツールによって管理できるログが違うので、目的に合ったツールを選択する必要があります。

種類概要
操作ログシステムやパソコンなどの端末を誰がどのように操作したかを記録
認証ログ端末やシステム、インターネットサイトへ誰がログインしたかを記録ログインエラーが多すぎると不正アクセスの可能性がある
アクセスログシステムにアクセスしたユーザーの情報や操作の内容、データ送受信の容量などを記録システムなどの不具合を調査するのにも役立つ
イベントログコンピュータ上で発生した特定の事象を記録一般的にセキュリティ上の重要な情報や異常が記録され、解析することで障害発生に対応できる
通信ログパソコンなどの端末とサーバとのデータの送受信を記録インターネットの接続時間や通信の内容が記録される
通話ログ電話サービスによる発信・着信・不在着信の履歴を記録電話によるやりとりを把握でき、情報漏洩や内部不正の調査に役立つ
印刷ログ印刷を行ったユーザー名・プリンター名・印刷された文書名・印刷枚数・印刷時刻などを記録電子データや紙による情報漏洩の調査に役立つ
設定変更ログシステムやネットワークの設定変更が行われた際に記録設定変更によるデータの改ざんや不正な変更を調べるのに役立つ
エラーログ端末やシステムなどにエラーが発生したときに記録不具合や障害の原因を特定するのに役立つ
物理的なログ監視カメラの映像や部屋への入退室など物理的な動作を記録不審人物の特定や機密情報持ち出しの情報を調査できる

ログ管理システムのメリット

ログ管理を行うことで、端末やシステムの使用状況を知ることができます。適切なログ管理を行うと、次のようなメリットがあります。

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情報漏洩・内部不正の防止

ログにはいつ・誰が・何に・どのような操作をしたのかが記録されます。そのため、外部からサイバー攻撃を受けていないか、または受けた場合にはどこからどのような攻撃を受けたかが分かります。

もちろん、従業員など内部の使用状況もログに記録されているので、内部不正による情報漏洩などの原因特定が可能です。また、「ログを監視している」と周知することで内部不正の抑止にも役立ちます。

労働状況の管理

在宅勤務が広がり、監督者の目の届かない場所で仕事をすることが増えました。このような場合、業務時間内に仕事をしなかったり、反対に時間外労働をしたりする従業員が出る可能性があります。

ログ管理をしておくと、端末やシステムの使用状況から労働の状態を知ることができます。従業員と直接顔を合わせなくても労働状況を管理できるので、従業員への適切な指導が可能です。

データの分析・活用

ログ管理システムはログの取得や保存を一括して管理します。必要なログを簡単に確認し分析できるため、システム障害の原因究明などに役立ちます。

また、外部から自社サイトにアクセスしたログも取得できます。ログからはアクセスの日時や訪問者が最初にアクセスしたページ・滞在時間・離脱ページなど、多くの情報取得が可能です。このログを分析していくことで、マーケティング対策を効果的に行えます。

ログ管理システムのデメリット

ログ管理を行うとセキュリティの向上や業務改善に役立ちます。ただし、ログ管理システムを導入するには、次のような注意点やデメリットを理解しておきましょう。

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社内ネットワークへの負荷が大きくなる

特に操作ログの管理システムでは、ログをサーバで一元管理しているため、社内ネットワークを通じてログをサーバに送信しなければなりません。

そのため、端末やシステムが多くなるほど通信量が増加し、通信速度が遅くなりがちです。この場合、ログの取得範囲制限などで通信量を抑える対策が必要になります。

完全なセキュリティ対策にはならない

ログ管理システムは不審なアクセスなどがあった場合通知する機能があります。しかし、あくまでログに記録されてからの通知なので、基本的に事後対応になってしまいます。ログ管理システムを導入しても、セキュリティ対策が万全になるわけでないので注意が必要です。

ログ管理ツール選定の比較ポイント

ログ管理を行うツールは、運用形態や機能などがそれぞれ異なります。選び方を失敗すると、望みのものが得られず運用コストがかかるだけになりかねません。次のことに注意して、自社に合ったツールを選びましょう。

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自社に合った運用形態(クラウド型かオンプレミス型か)を選択する

ログ管理システムには、自社サーバを設置して運用するオンプレミス型とサービス提供元のサーバにアクセスして機能やサービスを利用するクラウド型があります。導入コストの低さや運用開始までの期間が短いことなどから、最近ではクラウド型を選ぶ企業が増えています。

しかし、クラウド型は月額料金制のため、企業の規模が大きいと長期的にはオンプレミス型の運用コストの方が低くなる場合があります。従業員数やログを取得する端末、システムの種類・数などを考慮に入れて選ぶようにしましょう。

どこまでログ管理すべきかを確認する

ログ管理システムが取得できるログの種類や範囲は、ツールによって異なります。しかし、取得するログが多い方が優れているわけではなく、種類が多いと管理が難しくなりがちです。

また、種類が多いとログの量が膨大になるため、サーバの容量を圧迫しかねません。企業の規模や管理するログの種類によっては、シンプルな機能の方が向いている場合もあります。どのログを管理すべきか、導入前に確認しておきましょう。

リアルタイムでログを収集できるか確認する

ログ管理を行う目的の1つとして、不正アクセスやシステム障害を早めに発見することが挙げられます。ただし、ログ取得の周期が長いと、事故の発見が遅れ、早い対応ができずに被害が拡大してしまいます。

特に従業員や利用するシステムの数が多い企業の場合、トラブル発生の可能性も増加します。そのため、リアルタイムでログ取得ができるツールを利用する方が安心です。

ログの容量を確認する

取得したログはサーバに保存されるので、ログが多いほど保存する容量が多くなります。サーバの容量が小さいと、保存データがサーバを圧迫してシステム稼働にも悪影響が出てきます。

使用規模に応じて必要なログの容量を事前に見積もり、最適な容量の製品を選ぶ必要があります。

まとめ

ログ管理システムはパソコンなどの端末やサーバなどのログを取得・管理するシステムです。ログを一括で管理すると、トラブルが起きた際にログを分析して原因を調査しやすくなります。また、自社サイトの訪問者の分析などマーケティング対策にも役立ちます。

一方で、ログ管理システムを導入してもログは事故発生後しか確認できないのでセキュリティ対策として完全と言えません。また、ログの収集が通信の負担になることもあります。

ログ管理システムを構築する方法には従来のオンプレミス型と最近普及してきたクラウド型があります。どちらも機能は一長一短なので、サーバの容量・管理したいログの種類、導入コストの予算などを考慮して選択するようにしましょう。

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