MVPとは|意味や開発の進め方、ビジネス上のメリットを解説

Check!

  • MVP開発を行うことで、スピーディーな開発を行いながら、顧客ニーズを把握できる
  • MVP開発においては、仮説の設定から検証、改善などの繰り返しといった進め方がある
  • MVPを開発を成功させるためには、ターゲットをアーリーアダプターにすると効果的

MVPは、ユーザーが実際に使える必要最小限の機能を備えたプロダクトです。フィードバックを通じて、徐々に完成に近づけていくという特徴があります。本記事では、MVPについてや、MVP開発を行うメリット・デメリット、成功させるポイントと注意点を解説します。

目次

開く

閉じる

  1. MVPとは
  2. MVPを開発するメリット
  3. MVPを開発するデメリット
  4. MVP開発の進め方
  5. MVPの種類
  6. MVPで役立つフレームワーク「MVPキャンバス」
  7. MVPで開発を成功させるポイント
  8. MVP開発の注意点
  9. まとめ

MVPとは

MVPは「Minimum Viable Product」の略で、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトのことを指します。 完璧な製品やサービスを目指すのではなく、顧客が抱える課題を解決できる最低限の状態で提供することを目的とします。

提供後は、顧客からのフィードバックなどを参考にし、新機能の追加や改善点の見直しを図る必要があります。新規事業を立ち上げる際、MVPの考え方を活用することで、リスクを最小限に抑えながら市場でのニーズを把握できるのがメリットです。

さらに、使い方によっては開発コストや開発期間を削減でき、市場でのニーズを素早く把握できます。また、開発方向の修正が容易になる点も特徴の1つです。このように、新規事業を立ち上げる際にMVPの考え方を活用すれば、成功の確率を高められるでしょう。

MVPとリーンスタートアップの関係性

リーンスタートアップとは、新規事業を立ち上げる際に仮説と検証を繰り返すことで、失敗を最小限に抑えながら成功確率を高める手法です。MVPはリーンスタートアップの重要な要素の1つであり、顧客のニーズを把握して修正を行う際に大きく役立ちます。

リーンスタートアップでは、最初に顧客のニーズを調査して仮説を立てますが、その仮説を検証するためにMVPを開発します。MVPを顧客に提供した上でフィードバックを得ることで、仮説を検証して改善を繰り返していくのが一連の流れです。

このプロセスを繰り返すことで、最終的に成功する新規事業を立ち上げられるようになります。失敗を最小限に抑えながら、成功率を大きくアップさせるためにも、新規事業立ち上げの際にはMVPの考え方を活用してみましょう。

MVPとPMFの関係性

PMFは「Product Market Fit」の略で、顧客が満足する商品を最適な市場で提供できている状態を指します。MVPの開発によって顧客のニーズを把握できれば、開発方向を修正することができ、商品やサービスをより完成に近い状態にできるでしょう。

つまり、MVPはPMFを達成するために欠かせないものの1つです。また、顧客が満足できる商品を最適な市場で提供するためには、顧客ニーズの把握が必要です。自社の商品やサービスの品質向上に向けてMVPの開発を行い、PMFを目指しましょう。

MVPを開発するメリット

MVPの開発には、コストを押さえて顧客の反響を計測できる、顧客ニーズをスムーズに把握できるなどのメリットがあります。以下で、詳しいメリットを4つ紹介します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

コストを抑えて顧客の反響を計測できる

MVPを開発するメリットとして、コストを抑えながら顧客の反響を計測できる点が挙げられます。通常の開発方法では、プロダクトを完成させてからリリースする必要がありました。しかし、それでは顧客の反応を計測するまでにコストと時間がかかります。

そして、完成させてからのリリースではコストがかかりすぎてしまい、失敗した際のリスクも大きいでしょう。一方、MVPを開発した場合には、最低限の機能のみで顧客に提供するため、コストを抑えつつ顧客の反響を計測して改善に役立てられます。

このように、プロダクトの改善点を低コストで知ることができ、検証と改善を繰り返しながら完成に近付けていけるのはMVPの大きなメリットです。

顧客ニーズを把握できる

顧客ニーズを正しく把握しながら、プロダクトを改善していけるのもMVPの大きなメリットの1つです。通常のプロダクト開発では完成してからリリースするため、開発段階では顧客ニーズを知ることができず、本来のニーズから外れる可能性があります。

また、顧客ニーズから大きく外れたプロダクトは、顧客満足度を大幅に低下させてしまうでしょう。そのため、MVPの開発初期から顧客のフィードバックを得ながら顧客ニーズを把握し、改善を繰り返していく必要があります。

スピーディーに開発できる

MVPを用いた開発では、短期間での開発が可能です。プロダクトを完成させてからではなく、最低限の機能のみを実装して提供するため、低コストかつスピーディーに開発が進められます。いち早く試作品を投下することで、先行者利益を獲得できるのがメリットです。

先行者利益とは競争優位性や早期収益者を意味し、先行者利益を獲得することで優位性を発揮したまま市場をリードできる可能性が高くなります。競合他社との開発競争において、早期から競争力を高められることは、大きなメリットと言えるでしょう。

軌道修正しやすくなる

MVP開発では、最小限の開発を行いながらユーザーからフィードバックをもらいます。開発段階で細かくユーザー視点をチェックできるため、認識のずれを最小限に抑えられ、軌道修正しやすいことがメリットです。

また、開発期間が短いことで、市場の変化や競合他社の動向に迅速に対応することも可能です。新たな情報やトレンドに基づいて、その都度開発の方向を修正できます。

MVPを開発するデメリット

MVPの開発には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットがあります。ここでは、MVPを開発するデメリットを解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

ウォーターフォールの手法と合わない

MVPは、ウォーターフォールの手法には向いていません。ウォーターフォールとは、ソフトウェア開発のプロジェクト管理手法の1つです。プロジェクトを要件定義・設計・実装・テスト・運用・保守などの工程に分け、順に進めていきます。

ウォーターフォール型では、プロジェクトの計画や管理がしやすいものの、変更が困難で柔軟性に欠けるため、MVP開発には向かないでしょう。

大規模な開発には適していない

MVPは、開発に時間がかかる複雑かつ大規模なプロダクトには不向きです。例えば、開発に時間がかかる複雑なプロダクトでは、MVPを開発するまでに時間がかかりすぎる可能性があります。

さらに、大規模な開発にMVPを採用しようとすると、市場が求める要件を満たさない可能性が高いです。そのため、MVP開発によるメリットを十分に得られず、コストだけがかかることに繋がってしまいます。

MVP開発の進め方

MVP開発は順を追って進めていく必要があります。ここでは、MVP開発の進め方について詳しく解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

仮説の設定

MVP開発を行うためには、先に仮説を設定する必要があります。まずは、開発する製品を使って顧客が解決したい課題を明確にしましょう。その後、「課題をどのように解決するのか」「どんな価値が提供できるのか」「差別できる部分はどこか」などの仮説を立てます。

MVP開発においては、仮説を立てることが重要なプロセスとなるため、できるだけ明確な仮説を立てるのがおすすめです。なお、差別化に関しては、既存の類似商品やサービスと比較した際に、自社の製品が勝る部分がどこなのかを考えてみてください。

実装機能の策定

次に、最初に立てた仮説を検証するために、MVPに実装しなければならない必要最低限の機能を策定しましょう。どのような機能を実装すれば仮説を検証できるのか、顧客ニーズを知ることができるのか、といったことを考えながら策定する必要があります。

MVPでは、改善を繰り返しながら完成に近付けていくため、最初は最低限の機能のみで問題ありません。ただし「必要最低限の機能」が何かについて、明確に定義しましょう。

ここでしっかり策定しておかなければ、開発コストや時間ばかりがかかってしまい、MVP本来のメリットが得られなくなるでしょう。

MVPの開発

必要最低限の機能の策定が終わったら、いよいよMVPの開発へと進みましょう。MVPの開発では策定した機能の実装をベースに、最初に立てた仮説を検証できるだけのクオリティに仕上げていきます。

その際、時間やコストをかけすぎず、あくまでも最低限の機能でスピーディーな開発を心がけることが重要です。検証と改善を繰り返していくためにも、できるだけ早く開発を進めて仮説の検証へと進められるようにしましょう。

仮説検証

MVPの開発ができたら、ユーザーにリリースした上で仮説の検証を行います。実装した機能は十分だったか、不足している部分がないかなどを検証していきましょう。仮説検証では、実際にユーザーに利用してもらうことで、製品に対するフィードバックを集めます。

フィードバックをヒアリングする際には、できるだけ定量的な回答ができる質問を用意するのがおすすめです。仮説の検証を行った上で、その内容をもとに改善を繰り返していくため、細かなフィードバックが得られるとスムーズに開発方向の修正ができるでしょう。

フィードバックの収集方法

ユーザーからフィードバックを収集するためには、さまざまな方法が考えられます。例えば、ウェブサイトやアプリ内でアンケートやフィードバックフォームを提供し、ユーザーに製品やサービスについての意見や改善点を共有してもらう方法があります。

その他、顧客サポートへの問い合わせを通じてフィードバックを収集したり、アクセス解析ツールを使用してユーザーの行動を追跡したりすることも有効な手段です。これらの方法を用いて、ユーザーから有益なフィードバックを収集しましょう。

改善とリリースを繰り返す

フィードバックが得られたら、製品を改善した上で再度リリースします。そして、仮説検証や改善、リリースを繰り返していくことで徐々に完成へと近付けていくまでがMVP開発の流れです。製品を定期的にブラッシュアップし、より良いものへと改善していきましょう。

また、改善後に再度リリースした際には、ユーザーから初回と同じようにフィードバックをしてもらいます。毎回、細かなフィードバックを集めることで、徐々に良い製品へ近付けていくことができるでしょう。

MVPの種類

MVPには、プロトタイプやコンシェルジュ、オズの魔法使いなど多くの種類があります。ここでは、MVPの種類を7つに分けて見ていきましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

プロトタイプ

プロトタイプでは、プロダクトの原型や試作品を開発し、実際にユーザーに利用してもらう手法です。実際の使用感に関する正確なフィードバックが得られるため、プロダクトを具体化できるだけでなく、使用者との認識のズレなどを軽減できます。

ただし、プロトタイプは実際にプロダクトを開発するため、何度も仮説検証や改善を繰り返すとコストが大きくなりがちです。そのため、しっかりと仮説を立てた上で検証を行いましょう。

コンシェルジュ

コンシェルジュは、提供予定のプロダクトと同じ成果を手作業で提供する方法です。製品自体を制作する必要はなく、コンシェルジュが対応をします。コンシェルジュ型のMVPはユーザーからのフィードバックを得やすく、すぐに仮説検証を行って改善できます。

しかし、コストを抑えられる一方で、人件費が大きくかかる可能性がある点がデメリットです。

オズの魔法使い

オズの魔法使いとは、1900年に出版されたL.フランク・ボームの児童小説です。主人公のドロシーが、オズの魔法使いに会いに行く旅を通して友情や勇気、希望の大切さを学んでいきます。

これを踏まえて、作中で壮大な魔法使いだとされた人物が、実は平凡だったことから、MVPにおいては顧客のニーズを早期に把握し、開発方向を修正するための指標として名付けられたと言われています。

開発工数を抑えたプロダクトであっても、顧客のニーズを十分に満たすものであれば顧客満足度は向上できるでしょう。

ランディングページ

MVPにおけるランディングページとは、顧客にプロダクトの概要を伝え、興味を持ってもらうためのWebページです。ランディングページは、MVPを開発する際に、顧客のニーズを早期に把握し、開発方向を修正するために使用されます。

ランディングページ作成は、ユーザーの反応を検証するための方法であり、プロダクトが完成していない状態のまま、内容を説明する説明ページを作成します。そして、ランディングページを経由した購入が行われることにより、ニーズの大小などを測ることが可能です。

デモ動画

MVPにおけるデモ動画とは、プロダクトを説明した動画を作成した上で事前登録を促す方法です。基本的な情報や最低限の機能が伝われば問題ないため、正式に完成していない状態でも動画を作成できます。

デモ動画を作成するためには、まずプロダクトの核となる部分を作成しましょう。制作費がかかる点がデメリットではありますが、プロダクトの宣伝やマーケティングにも効果的です。

プレオーダー

MVPにおけるプレオーダーとは、プロダクトの発売前に、顧客に商品を予約してもらうための販売方法です。プレオーダーの代表例がクラウドファンディングであり、事前に商品の購入やサービスの利用予約をしてもらいます。

プレオーダーを活用することでユーザーからのフィードバックを得やすくなり、顧客のニーズを早期に把握した上での開発方向の修正が可能です。

競合ツール応用

競合ツール応用は、既存のツールを用いて代用する手法です。既存のツールをそのまま代用したり、カスタマイズしたりして使用します。なお、競合ツールを利用する場合には、プランの内容によってコストが大きくなるケースがあるため注意しましょう。

MVPで役立つフレームワーク「MVPキャンバス」

製品開発におけるプロセスにおいて、企業計画や企業戦略に活用できるフレームワークが存在します。ここでは、MVPで役立つフレームワーク「MVPキャンバス」について解説します。以下で、10個の要素をそれぞれまとめます。

MVPキャンバスの10個の要素

MVP開発を行う際に多く用いられるのが「MVPキャンパス」と呼ばれるフレームワークです。MVPキャンバスには、以下10個の要素があります。

要素特徴
仮説検証したい仮説を立てることで検証しやすくする
目的検証を通して学びたいことを設定する
方法仮説検証の方法を設定する
データ/条件(KPI)KPI(重要業績評価指標)を設定することで終了条件を指定する
どんなMVPを作るのか仮説検証のために作るMVPを設計する
コスト検証にかかるコストを設定する(開発工数・人員・人件費など)
時間検証に要する現実的な時間を設定する
リスク検証によって起こるリスク、回避可能なリスクを洗い出す
結果検証した結果を記載する
学び検証を通しての学びや課題を記載する

最初にユーザーニーズを理解して仮説を立てることで、MVP開発がスタートします。その後に、目的や方法、KPIなどを設定して仮説検証の終了条件を指定しましょう。また、どのようなMVPを作るのか細かな設計を行う際は、コストや時間も計算します。

検証によって起こるリスクや回避可能なリスクを知ることができれば、リスクヘッジが可能です。結果や学びについては、都度記載しておくことで今後の改善案や課題を洗い出す際に役立ちます。

MVPで開発を成功させるポイント

MVPで開発を成功させるためには、いくつかのポイントを注視する必要があります。ここでは、特に注目しておきたい2つのポイントを見ていきましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

影響力を持つ層をターゲットにする

1つ目のポイントは、影響力を持つ層をターゲットにすることです。流行りに敏感であり、周囲への影響力が大きい層のことをアーリーアダプターと呼びます。アーリーアダプターを優先的にターゲットにすることで、より良い仮説検証が行えるでしょう。

流行に敏感であり、影響力のあるターゲット層から良い反応が得られれば、一般的なターゲット層からも同じような反応が得られる可能性が高いです。また、MVPは最小限の機能でリリースする必要があるため、ある程度ターゲットを絞ることを意識しましょう。

ターゲットが広すぎると仮説検証が上手く行かず、開発までに時間がかかってしまう可能性があります。そのため、アーリーアダプターを優先的にターゲットにし、絞り込むことで効果的で素早い検証が可能です。

機能や要素を細かく検証する

MVP開発では、最小限の機能や要素で初回のリリースを行いますが、検証の際にスピード感を重視しすぎると、すべてをまとめて検証してしまうことがあります。しかし、まとめて検証すると、それぞれの要素や機能に関する検証結果が正確に出ない可能性があります。

よって、MVPによる検証を行う際には、必ず機能や要素を細かく検証しましょう。正確な検証結果が得られなければ、改善に余計な時間がかかってしまい、スピーディーな開発が実現しないため、一つひとつ細かく検証することが大切です。

MVP開発の注意点

MVP開発においては、成功させるポイントと合わせて認識しておきたい注意点が存在します。ここでは、MVP開発の注意点を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

最初から完璧である必要はない

MVP開発では、仮説の検証が最大の目的です。そのため、プロダクトの完成度にばかり目を向けてしまうと思わぬ結果を招いてしまう可能性があります。MVPの初期段階では完璧を目指しすぎず、仮説の検証に注力しましょう

仮に、初めから完璧を求めすぎると、機能が肥大化することで顧客が求めている機能に絞ったプロダクトにはなりません。開発初期は必要最低限の機能からスタートし、徐々に改善を繰り返していくなど、MVPの目的をしっかりと理解した上で開発に挑みましょう。

長期的な方向性を見失わない

ユーザーの声を取り入れすぎると、MVP開発の方向性を見失うことがあります。よって、仮説検証をしていくうちに、ユーザーの声に振り回されて本来の方向性からズレないように注意しましょう。

MVP開発は短期的な計画ではなく、長期的な戦略に基づいた方向性を定めるのが目的です。くれぐれも意見や要望を注視しすぎず、MVP開発の目的を見失わないようにしてください。

まとめ

MVPは必要最低限の機能の実装のみでリリースし、仮説検証と改善を繰り返していく開発方法であり、低コストでスピーディーな開発が可能です。顧客ニーズを把握しやすいため、改善を繰り返すうちにより良い製品の開発が目指せるでしょう。

ただし、フィードバックを注視するあまり、方向性を見失ったり完璧を求めすぎたりしないように注意する必要があります。MVP開発は新規事業にも向いている手法であるため、ぜひ本記事を参考に取り入れることを検討してみてください。

Share

top