DX(デジタルトランスフォーメーション)とは|課題や手順を解説
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- DXとは、デジタル技術を浸透させてビジネスをより良いものへと変革することである
- 変化するビジネス環境・顧客ニーズに対応していくためには、DXが必要である
- DXを実現する技術には、AI・IoT・クラウド・5Gなどがある
DXは、デジタル技術によりビジネススタイルを変えていくものです。日本でも浸透し始めてきていますが、推進の遅れの課題が残っています。本記事では、DXが求められる理由と、DXでできること、DXを支えるデジタル技術の他、DX推進を成功させるポイントを解説します。
目次
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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術とイノベーションを活用して、組織のプロセスやビジネスモデルを変革することを言います。組織に、効率性の向上、顧客体験の向上、競争力の強化を促します。ここでは、DXを詳しく解説します。
DXの意味と定義
そもそもDXとは、デジタル技術を活用して組織やビジネスのあり方を根本的に変革する取り組みのことで、「Digital Transformation」の略です。
DXにおいて「DXのXとは」という質問が多いですが、英語圏では「Trans」を「X」と省略するため、DXのXは「変容」を意味するTransformationを指します。
DXではデータ分析・AI・IoT・クラウドなどのテクノロジーを組織内の全ての領域に活用し、業務プロセスの最適化や新たなサービスとビジネスモデルの創造、顧客体験の向上などを実現します。
これにより、競争力の強化や市場の変化に柔軟に対応する力を確保し、持続的な成長を実現します。DXは単なるテクノロジーの導入ではなく、組織文化の変革や人材の育成と結びついた総合的な取り組みです。
DXとIT化の違い
DXは、デジタル技術を活用して組織やビジネスの改革を実現することを指し、広範な変容を追求します。一方、IT化は情報技術を導入して業務プロセスやシステムを効率化・自動化することを目的とします。
DXは単にITを導入するだけでなく、組織の変革やビジネスモデルの再構築にも取り組みます。DXはより総合的かつ戦略的なアプローチであり、IT化は機能やプロセスの改善に焦点を当てたものです。
DXが求められる理由
イノベーションを促進するDXは、企業の成長を促す重要な要素となっています。競争激化による顧客ニーズの変化や効率と生産性の向上、市場対応の迅速化などこれらに対応するためには、DXの推進が不可欠です。ここでは、DXが求められる理由について解説します。
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DXが求められる理由
「2025年の崖」の克服
「2025年の崖」とは、日本において2025年以降に迫るデジタル技術の普及と人材育成の課題を指します。日本企業のデジタル化の進捗は他国に比べて遅れており、デジタル技術の活用やデータの最適活用が不十分な状況です。
DX化の遅れからは、競争力の低下や経済成長の停滞が懸念されます。2025年の崖を克服するためには、デジタル化への取り組みの加速や優秀なデジタル人材の育成・獲得が必要です。
また、イノベーションを促進する政策や環境整備も重要です。この課題を克服することで、持続的な成長と社会の発展が実現できると期待されています。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)|経済産業省
市場競争力の強化
企業がDX化を行うことは、激化する国内外の競争で遅れを取らないための競争力を確保し、市場競争力を強化するために必要不可欠です。AI技術やIoT・5Gなど最新技術を活用した製品の提供は、市場競争力の強化に直結します。
DX化に伴うデジタル技術の活用により、開発時間の短縮やコスト削減が実現され、生産性が向上し、顧客満足度の向上に繋がります。DX化により企業の業務改革が行われ、新たな価値が創出されるでしょう。
BCP対策に繋がる
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害やテロ・システム障害などのトラブルに直面した際に、被害を最小限に抑えて企業活動を継続し、素早い復旧を図ることです。また、そのために行う対策のことをBCP対策と言います。
日本は自然災害に見舞われやすい環境であり、また、近年の感染症流行の観点からも、インターネットとデジタル技術の活用が企業の事業継続のカギを握るとして注目されています。BCP対策においてもDX化は重要です。
DX推進の課題と現状
現在、日本ではDX推進の重要性が認識され、取り組みが進んでいますが、課題解決と持続的な取り組みが求められます。ここでは、DX推進の課題と現状について解説します。
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DX推進の課題と現状
既存システムの老朽化
多くの日本企業では、長年にわたって使用されてきたシステムがあり、技術や機能の面で時代に合わなくなっています。これらのシステムはメンテナンスやアップデートが困難であり、柔軟性や拡張性に欠けることがあります。
また、新たなデジタル技術やビジネスニーズに対応することも難しく、組織の効率性やイノベーションの妨げとなっています。DXの推進には既存システムの刷新が必要であり、新たなテクノロジーに対応する柔軟な基盤の整備が求められています。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)|経済産業省
IT人材不足
DXを促進するには、高度な技術スキルを持った専門家が必要ですが、その需要に対して供給が追いついていません。企業が求めるデジタル化に関する知識やスキルを持った人材を確保することが難しく、競争が激化しています。
特に、AIやビッグデータなどの新たな技術領域の人材不足が予想されており、企業のデジタル化のスピードを落とすことが懸念されています。
日本企業のDX推進の遅れ
現状では、他の先進国に比べて日本企業のデジタル化の進捗が遅れています。多くの日本企業は伝統的なビジネスモデルや過去の成功体験に依存し、新たなデジタル技術の導入に消極的な傾向があります。
また、IT人材の不足やデジタル化に対する意識の低さも課題です。さらに、情報共有や意思決定のプロセスが煩雑で迅速な判断が困難なこともあります。これらの課題を解決するためには、組織の意識改革やデジタル化への投資などが必要です。
DXを通じてできること
DXを促進することで、ビジネスや社会のさまざまな領域で、大きな変化が期待されています。ここでは、DXを通じて行えることについて解説します。
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ビジネスプロセスを効率化できる
DXを促進することでビジネスプロセスが効率化でき、組織に多くのメリットをもたらします。例えば、自動化やデジタル化によって、煩雑なタスクや手作業を削減し、作業時間を短縮できます。
また、データ分析や予測モデルを活用して、需要予測や在庫最適化などの業務上の課題に対する最適な解決策を導き出せます。ビジネスプロセスの効率化により、組織は競争力を高め、より効率的な運営が可能となります。
見込み顧客をより獲得できるようになる
デジタルマーケティングやオンライン広告、ソーシャルメディアなどのデジタルチャネルを活用することで、広範なオーディエンスにリーチし、ターゲットとなる顧客にアプローチできます。
また、データの活用によって見込み顧客の行動や嗜好を把握し、個別にターゲティングできます。これにより、個別化されたメッセージやオファーを提供し、顧客の関心を引きつけます。
さらに、デジタルチャネルの計測・分析によって、マーケティング活動の効果をリアルタイムで評価し、改善策を即座に実施することも可能です。見込み顧客をより効果的に獲得するためには、デジタルマーケティングの戦略やテクノロジーの活用が不可欠です。
利益が拡大する
デジタル技術の活用により、効率的な業務プロセスや生産性の向上が実現します。自動化によって人的ミスを減らし、コストの削減が可能です。また、デジタルチャネルを活用した販売やマーケティングによって、顧客層の拡大や売上の増加も見込めます。
さらに、デジタルプラットフォームを活用した、新たなビジネスモデルの構築やイノベーションを推進することで、新たな収益源を創出できます。
素早い意思決定ができるようになる
DX化により、リアルタイムでの情報共有やデータの集約・可視化が実現します。これにより、管理者や関係者が必要な情報に迅速にアクセスし、適切な判断を行えます。
また、自動化されたワークフローや、デジタルコラボレーションツールを活用することで、意思決定プロセスが迅速化し、効率的な意思決定が可能となります。さらに、AIやデータ分析によって予測やシミュレーションを行い、意思決定のサポートをすることもできます。
予測やシミュレーションはリアルタイムなビジネス環境の変化に迅速かつ適切に対応し、競争力を維持するだけでなく向上させることも可能です。素早い意思決定は、迅速なビジネス判断や市場対応につながり、企業の成長と競争力強化に貢献します。
変化するビジネス環境に対応していける
デジタル化により企業は柔軟性と適応力を高め、迅速に市場ニーズやトレンドの変化を捉えて、製品やサービスを素早く改善・開発することが可能となります。
データ分析やAI技術によって、顧客行動や市場動向を把握し、リアルタイムにフィードバックを受けることで、ビジネス戦略を柔軟に調整することもできます。これにより、迅速なイノベーションや市場参入が行えます。
DX実現を支えるデジタル技術
DX実現を叶えるためには、さまざまなデジタル技術の活用が必要です。これらの技術は、ビジネスの変革や効率化を実現するための重要なツールとなります。ここでは、DX実現を支えるデジタル技術について解説します。
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AI
AIはデジタル技術の中でも特に重要で、DX実現を支える役割を果たします。AIは大量のデータを高速に処理し、パターンや傾向を抽出します。また、自己学習機能を持ち、経験から学習して問題を解決したり予測を行ったりすることで、自動化や効率化を図ります。
AIにより顧客の行動や嗜好を予測でき、個別化されたマーケティングやカスタマーサポートを提供することが可能になります。AIの力を借りることで、企業はより効果的な意思決定を行い、競争力を高められます。
IoT
IoTは、さまざまな物理的なデバイスや機器をインターネットに接続し、相互に情報をやり取りする技術です。IoTによりセンサーやデバイスがデータを収集し、情報を送受信することが可能となります。
これにより、物理的な環境やデバイスの状態をリアルタイムでモニタリングし、遠隔から制御を行えます。
遠隔操作を活用しているわかりやすい例は、工場の機械や設備の稼働状況を監視して効率的なメンテナンスを行ったり、スマートフォンで家電製品を遠隔操作したりすることなどです。
また、IoTデバイスが膨大なデータを収集することで、ビッグデータ解析や予測分析に活用できます。IoTの活用により、効率化や品質向上、新たなサービスの提供など、さまざまな可能性が広がります。
クラウド
クラウドは、インターネットを通じてデータやアプリケーションを保存・処理する技術です。クラウドを活用することで、企業は自社のデータやアプリケーションをオンライン上に保管し、必要な時に柔軟にアクセスできます。
また、クラウドはスケーラビリティに優れており、需要の増減に応じてリソースを拡大・縮小することが可能です。これにより、コスト効率の向上やビジネスの迅速な拡大が期待できます。
5G
5Gは、高速かつ安定した無線通信を実現する技術です。5Gは、従来の通信規格よりも高速なデータ転送を可能にします。これにより、大容量データのリアルタイム処理や高品質な映像ストリーミングが可能となります。
また、5Gは大量のデバイスを同時接続できるため、IoTやスマートデバイスの活用が進みます。これにより、遠隔医療や自動運転などの新たなサービスやビジネスモデルが生まれ、イノベーションが加速されます。
DXの進め方
DXの進め方には様々なアプローチがありますが、企業が成功するためには、綿密な計画と実行が必要です。ここでは、DXの進め方について解説します。
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自社の現状を把握する
DXを進める際は、まずは自社の現状を把握しましょう。これにより、具体的な課題や改善点を特定し、戦略的な取り組みを計画できます。現状把握では、ビジネスプロセスやITインフラの評価、データの分析、組織の文化やスキルセットの確認などを行います。
また、顧客や競合他社の動向も調査し、市場のトレンドやニーズを理解することも重要です。自社の強みや弱みを正確に把握し、変革の方向性を明確にすることで、DXの戦略を立てる基盤が整います。
アナログのものをデジタル化する
アナログのものをデジタル化することで、情報の一元化やデータの活用などにより業務が効率化します。例えば、紙の書類を電子化することで情報の共有や検索が容易になり、作業効率が向上します。
また、アナログのプロセスをデジタル化することで、自動化やオートメーションが可能になり、ヒューマンエラーの削減やタスクの迅速化が実現します。
データを活用する
DXを促進するために、データを効率的に活用しましょう。デジタイゼーションによってアナログな情報がデジタルデータとして蓄積され、デジタライゼーションによってそのデータが活用されます。
デジタイゼーションは、アナログや物理的なデータをデジタル形式に変換することを指します。データの保管やアクセスが容易になり、情報共有が効率化します。
一方、デジタライゼーションは、デジタル技術を活用してビジネスモデルやサービスを改善できます。既存のビジネスプロセスやサービスを見直し、デジタル技術の活用によって新たな価値や顧客体験を提供することを目指します。
ビジネス・組織を変革させる
ビジネスモデルの変革には、従来の枠組みにとらわれず、積極的なデジタル技術の活用が必要です。顧客体験の向上や新たなサービスの提供により、競争力を高められます。
また、デジタル技術を活用するためには、組織の人材育成が欠かせません。新たなスキルや知識を身につけさせる教育プログラムの充実や、DXを推進するリーダーの育成が必要です。
組織全体がデジタルトランスフォーメーションに対する意識を高め、積極的に変革に取り組むことで、持続的な成長と競争力の強化が可能となります。
DX推進を成功させるポイント
DXは組織やビジネスの変革であることから、ただシステムを導入するだけでは実現しません。ここでは、DX推進を成功させる2つのポイントを解説します。
経営戦略とビジョンを明確にする
DX推進を成功させるには経営戦略とビジョンの明確化が重要であり、企業が明確な方向性を示し、DXが企業の長期的な目標と一致していることが必要です。ビジョンを設定することで、全社員が共通の目標に向かって取り組めます。
また、経営戦略とビジョンに基づいて具体的なDXの目標や戦術を策定し、それを実現するためのリソースやスケジュールを明確にすることも重要です。
明確な経営戦略とビジョンに基づいた計画に基づき、組織全体が一体となってDXを推進することで、業務の効率化と成果の最大化を目指します。
無料のアプリを積極的に使用する
DXの推進は、デジタル技術を活用して組織やビジネスのあり方を変革していくことであり、システムの導入はあくまでもDXを推進する手段の1つにすぎません。そのため、自社に適していて使用感などに問題がないのであれば、無料のアプリでもDXは推進できます。
高性能・高機能なシステムが不要な場合、高額なシステムを導入しても活用することが難しく、形骸化しDX化が進まないといった結果につながります。
特に中小企業は無料のアプリや格安のシステムで十分なことが多いため、システムの導入を検討する際は無料のものも選択肢に入れて検討しましょう。
まとめ
急速なテクノロジーの進化や競争激化によるビジネス環境の変化により、DXの促進が求められています。DXにより、ビジネスプロセスの効率化や見込み顧客の獲得、利益の拡大、迅速な意思決定、変化への適応などが可能になります。
DXに取り組むことで企業は競争力を高め、持続的な成長を実現可能です。時代の変化に対応し、ビジネスを未来につなげるために、DXへの積極的な取り組みをしていきましょう。