建設業における2024年問題とは?具体的な対策方法も解説

Check!

  • 働き方改革関連法による時間外労働の上限規制は、人手不足の建設業への影響が大きい
  • 2024年問題により建設業が直面する課題として、労働者の収入減少などもある
  • 建設業の2024年問題に対処するには、適切な工期設定や労働時間の管理などが重要

働き方改革関連法の施行により、建設業も2024年問題の対象となっています。特に時間外労働の上限規制は、人手不足が深刻な建設業に大きな影響を及ぼしています。この記事では、建設業における2024年問題の詳細や具体的な対策などについて、わかりやすく解説します。

目次

開く

閉じる

  1. 建設業でも対応が迫られる2024年問題
  2. 建設業に適用される働き方改革関連法の内容
  3. 2024年問題によって建設業が直面する課題
  4. 建設業が取り組むべき2024年問題への対策
  5. まとめ

建設業でも対応が迫られる2024年問題

2024年問題とは、日本の少子高齢化に伴う深刻な労働力不足が顕在化する年として注目される問題です。2024年4月からの労働基準法改正により、時間外労働の上限規制が全業種への適用が決定しており、これが労働環境の大幅な変革を迫る要因となっています。

特に建設業は、長時間労働が常態化している業界であり、この規制の影響を大きく受けることが予想されています。時間外労働の上限規制により、建設現場では工期の遅延や人材不足がより深刻化し、企業の収益や競争力に影響を与える可能性があります。

そのため、建設業は、働き方改革に対応するための新しい取り組みを導入し、生産性の向上や人材の確保への取り組みが求められています。本記事では、建設業における2024年問題の詳細や具体的な対策などについて分かりやすく解説します。

2024年問題とは?物流業界への影響や対処法をわかりやすく解説

2024年問題とは、働き方改革法案により、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が課されたことで生じる問題を指します。この記事では、2024年問題の概要や、2024年問題によって何が起きるのか、また諸問題への対処方法などについて解説します。

建設業に適用される働き方改革関連法の内容

働き方改革関連法は、労働環境の改善と多様な働き方の促進を目的とし、2019年より段階的に施行されています。その主要な内容として、時間外労働の上限規制、有給休暇の取得義務化、そして同一労働同一賃金などの実現が挙げられます。

特に建設業界においては、2024年4月から時間外労働の上限規制と割増賃金の引き上げが適用される点が極めて重要です。この変更により、建設プロジェクトの進行に影響が生じる可能性があるため、労働環境の再評価や生産性の向上が強く求められます。

ここからは、建設業における働き方改革関連法の重要なポイントについて詳しく解説します。

参考:「働き方改革関連法」の概要|厚生労働省

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

建設業に適用される働き方改革関連法の内容

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 割増賃金の引き上げ

時間外労働の上限規制

建設業における時間外労働の上限規制は、2024年4月から適用され、労働時間の管理が一層厳格化されます。この規制では、月45時間・年間360時間を上限とし、特例として繁忙期においても月100時間未満、年間720時間を超えないように定められています。

建設業は、長時間労働が常態化している業界の一つです。しかし、長時間労働は、労働者の健康被害や生産性の低下、人材の離職などの問題を引き起こします。そのため、労働者の健康と安全を確保して働きやすい環境を実現するため、これらの規制が導入されました。

この規制を超える時間外労働を行わせた場合、企業には罰則が課される可能性があります。具体的には、企業や経営者に対して罰金や懲役が科されることもあります。また、労働基準監督署による指導や勧告が行われる場合もあり、法令順守の徹底が求められます。

参考:建設業|建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制 特設サイト はたらきかたススメ|厚生労働省

割増賃金の引き上げ

2023年4月の労働基準法改正により、中小企業において60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金率が従来の25%から50%へ引き上げられました。中小の建設業として定義されるのは、資本金または出資金が3億円以下、または従業員数が300人以下の企業です。

建設業では、すでに大企業が2010年から50%の割増賃金を適用していましたが、中小の建設業者にはこれまで猶予が与えられていました。

しかし、2023年4月以降、建設業においても企業規模に関係なく、月60時間を超える時間外労働には50%の割増賃金を支払う義務が生じています。

参考:建設会社の「働き方」が変わります!! 工事発注者の皆様へ|厚生労働省

2024年問題によって建設業が直面する課題

建設業においては、法令の適用まで5年間の猶予期間が設けられていましたが、依然として深刻な課題が残っています。まず、長時間労働が常態化している現場では、時間外労働の削減が難しく、割増賃金の支払いが企業の財務負担となる懸念があります。

また、労働力不足が続いている環境から人員確保が困難であり、生産性の向上が追いつかない状況です。特に中小企業にとっては、コスト増加や生産性の低下が競争力の弱体化に繋がる可能性があり、対策が急務となっています。

ここからは、2024年問題によって建設業が直面する課題について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

さらなる人手不足

2024年問題により、建設業界が直面する課題は深刻です。もともと建設業は、就業者の高齢化が進行しており、若年層が離職しやすい業種のため人手不足が顕著でした。しかし、働き方改革に伴い、労働時間の低減によってさらなる人手不足が加速されています。

具体的には、時間外労働の上限規制が導入されるため、従来よりも少ない労働時間での業務の遂行が求められます。これにより、現場の生産性に対するプレッシャーが増大し、プロジェクトの遅延やコストの増加が懸念されます。

さらに、人手不足を補うための新たな労働力の確保が困難となり、企業にとっては作業の効率化や技術導入などの対応が求められる状況です。こうした課題に対処するためには、建設業界全体での戦略的な取り組みが不可欠です。

長時間労働の是正が難しい

建設業界では、人手不足や短すぎる工期が原因で長時間労働が常態化しています。多くの現場では、限られた人員で厳しい工期を守るために、労働者が過度な時間外労働を強いられる状況が続いています。

こうした背景の中、働き方改革に基づく長時間労働の是正が求められていますが、現行の業務を維持しながら、この問題に対処するのは非常に困難です。特に中小規模の建設企業では、労働力の確保が一層厳しい状況に置かれています。

そのため、プロジェクトの遅延を避けるために、労働時間の削減と効率化を同時に達成する必要があります。しかし、現在の人員配置や生産性では、労働時間の削減がプロジェクトの進行に悪影響を与える可能性が高く、業界全体での抜本的な対策が求められています。

労働者の収入が減少する

建設業では、日給や月給制、出来高制など、時間外労働の有無によって収入が大きく変動する雇用形態が一般的です。働き方改革による時間外労働の上限規制は、こうした労働者にとって、生活への影響が大きいという問題があります。

特に、時間外労働で収入の大部分を補填している労働者にとっては、残業時間の制限によって、生活が成り立たなくなる可能性も懸念されます。

そのため、単純に時間外労働を減らすだけでなく、賃金体系の見直しや労働生産性の向上など、多角的な視点から対策を講じる必要があります。

建設業が取り組むべき2024年問題への対策

建設業界は2024年に直面する多くの課題に対応するため、包括的な対策が必要です。特に労働環境の改善や働き方の見直しが急務です。新しい労働基準法の施行や生産性向上のための技術導入は、業界全体に大きな影響を及ぼします。

これからの時代に適応するためには、労働者の生活安定と業務効率を両立させるために、業界全体での戦略が求められます。ここからは、建設業が取り組むべき2024年問題への対策について解説します。

参考:建設業働き方改革加速化プログラム|国土交通省

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

適正な工期を設定する

建設業が取り組むべき2024年問題への対策として、従業員の週休2日制の確保や長時間労働の防止が挙げられます。そのためには、適正な工期の設定が不可欠です。適切な工期の設定により、現場の負担を軽減し、作業効率の向上が期待されます。

短期など不適切な納期に追われると、労働時間が長引き、従業員の健康や生活に悪影響を及ぼす可能性があります。適切な工期の見直しと計画的な工程管理により、従業員の労働条件の改善と、持続可能な業務運営の導入が求められます。

また、適正な工期の設定によって、従業員はゆとりを持って仕事に取り組めるので、作業の質向上や安全性も確保されます。さらに、適正な工期設定は人材確保や定着にも貢献し、建設業界全体の活性化も期待されます。

参考:建設工事における適正な工期の確保に向けて |国土交通省

労働時間の管理を徹底する

建設業における労働時間の管理を徹底するためには、原則として自己申告による時間管理は避けるべきです。自己申告は誤りや不正確な申告のリスクがあり、実態に即した労働時間の把握が難しくなります。

そのため、建設業においては勤怠管理システムの導入により、労働時間の客観的な記録や適切な管理が求められます。これにより、長時間労働の防止や法令遵守の徹底が実現できます。

さらに、勤怠管理システムは、残業時間の削減やシフト管理の効率化にも役立ちます。また、GPS機能付きのシステムの利用によって、現場での作業時間や移動時間の正確な把握も可能になります。

参考:労働時間の適正な把握のために|厚生労働省

建設業におすすめの勤怠管理システム10選|2024年問題や勤怠管理の課題も解説

直行直帰の多い建設業界は、勤怠時間の管理や勤務状況の把握が難しいといった課題があります。本記事では、建設業における勤怠管理の課題や、2024年からの働き方改革に伴った建設業の労働上限について解説し、勤怠管理システムを導入するメリットとおすすめの製品を紹介します。

「建設キャリアアップシステム」に加入する

建設キャリアアップシステムは、建設業に従事する労働者のキャリアとスキルを可視化し、効率的に管理するためのシステムです。

このシステムは、労働者の資格や技能、職務経験を詳細に記録し、スキルアップの進捗状況の把握によって、業界全体の品質向上と労働者のキャリアパスの確立を支援します。

このシステムへの加入によって、労働者のスキルを正確に評価できるだけでなく、労働条件の改善や適正な人材配置が可能となり、業界全体の信頼性向上にも寄与します。そのため、すべての建設業者に対して、システムへの加入が強く推奨されます。

参考:建設キャリアアップシステム|国土交通省

社会保険への加入を進める

建設業界では社会保険加入率が低いという現状があり、労働者の健康や生活保障に対するリスクが懸念されています。社会保険への加入は、労働者が疾病や事故に遭った際の支援や、老後の安定した生活を確保するために不可欠です。

また、社会保険の加入によって、労働者の安全が守られるだけでなく、企業の信頼性や社会的責任の向上にも繋がります。したがって、全ての建設業者は社会保険への加入を推奨し、業界全体の労働環境改善への取り組みが求められます。

IoTを導入する

IoT(Internet of Things)は、あらゆる物がインターネットを介してデータを収集・交換できる技術を指します。センサーやデバイスがネットワークに接続され、リアルタイムでの情報の送受信が可能です。

建設業界では、IoTの活用によって、様々な場面で効率化や安全性向上を実現できます。例えば、建設現場の機械にセンサーを取り付け、稼働状況をリアルタイムで監視することで、メンテナンス時期の予測や、異常を早期に検知して事故の防止にも役立ちます。

また、ドローンにカメラを搭載し、遠隔で現場の進捗状況の確認や、3Dモデルの作成も可能です。そのため、IoTは建設業界の生産性向上と安全性向上に大きく貢献する技術と言えるでしょう。

IoTとは?IoTの意味やビジネスにおける活用事例を解説

IoTとは、モノのインターネットという意味で、家電製品や自動車といったモノをインターネットに接続する技術を指します。本記事では、IoTの仕組みやIoTの活用事例を交え、ビジネスにおける活用方法などを簡単に分かりやすく解説します。

ICT建機を活用する

ICT建機とは、情報通信技術(Information and Communication Technology)を組み込んだ建設機械を指し、建設現場での作業効率や精度の向上が図れます。

これらの機械は、GPSやセンサー、通信機能を搭載し、リアルタイムで位置情報や作業データの取得や分析が可能なため、作業精度の向上や施工ミスの減少などが実現されます。

さらに、ICT建機は機械の稼働状況や故障の予兆をリアルタイムで把握できるため、メンテナンスのタイミングを適切に管理できます。また、作業データの分析により、効率的な工程管理やコスト削減を実現し、工事の品質向上とプロジェクトの迅速化を支援します。

多様な勤務形態を導入する

建設業界における多様な勤務形態の導入は、業界の生産性と働き方改革に大きく寄与します。フレックスタイム制度により、作業員は現場のピーク時間に合わせて柔軟に勤務でき、作業の効率化が図れます。

ワークシェアリングは、複数人での業務分担によって作業負担を軽減し、業務のスムーズな進行が可能になります。また、テレワークの導入によって、現場に常駐しなくても設計や管理業務を遠隔で実施でき、業務を効率よく進められます。

これらの勤務形態を導入することで、作業員の負担軽減と業務のフレキシビリティが向上し、労働環境の改善が期待されます。

まとめ

建設業における「2024年問題」とは、2024年4月からの労働基準法改正によって、残業時間の上限規制が厳格化される問題です。これにより、建設業界は作業時間の管理が厳しくなり、労働時間の短縮や生産性の向上が求められます。

特に建設業界では現場の作業員が多く、長時間労働が常態化しているため、労働力不足や効率的な作業手法の導入が急務となります。そのため、ICT技術や自動化の導入、効率的なプロジェクト管理が重要な対応策となり、業界全体での改革が必要です。

適切な対策を講じることによって、建設業界における労働環境の改善と業務の効率化を実現し、持続可能な業界の発展が期待されます。

Share

top