2024年問題に関する罰則とは?違反しないための対策も解説

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  • 働き方改革関連法により、物流・建設業界などに時間外労働の上限規制が適用された
  • 上限規制に違反すると、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金という罰則がある
  • 規制に違反しないためには、給与改善などによる増員や勤怠管理の徹底などの対策が有効

働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が適用されたことで、2024年問題への対処が急務となっています。違反すると罰則もあるため、徹底した対策が必要です。この記事では、2024年問題の概要や規制に違反した際の罰則、違反を避けるための対策について解説します。

目次

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  1. 2024年問題と時間外労働の上限規制の概要
  2. 時間外労働時間の上限規制に違反した場合の罰則
  3. 時間外労働時間の上限規制に違反しないための対策
  4. 物流業界は「荷主勧告制度」にも注意
  5. まとめ

2024年問題と時間外労働の上限規制の概要

2024年問題とは、2024年4月1日から施行される「時間外労働の上限規制」に関連して、物流・建設・医療業界で懸念されるさまざまな課題のことを指します。この規制では、長時間労働が当たり前とされてきたこれらの業界にも、残業の制限が適用されます。

まずは、物流・建設・医療の各業界においてどのような規制が設けられたのかについて、以下に解説します。

参考:働き方改革関連法に関するハンドブック|厚生労働省

2024年問題とは?物流業界への影響や対処法をわかりやすく解説

2024年問題とは、働き方改革法案により、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が課されたことで生じる問題を指します。この記事では、2024年問題の概要や、2024年問題によって何が起きるのか、また諸問題への対処方法などについて解説します。

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物流・建設・医療業界で懸念されるさまざまな課題

  1. 物流業界の場合
  2. 建設業界の場合
  3. 医療業界の場合

物流業界の場合

物流業界の上限規制では、トラックドライバーの時間外労働は月45時間、年間360時間が基本的な上限とされました。ただし、特別な事情がある場合でも、年間で960時間を超えることはできません。

また、1日の労働時間(拘束時間)は13時間以内が原則で、最大でも15時間までと制限されます。さらに、休息期間は9時間以上を確保する必要があり、努力目標として11時間を目指すことも求められています。

この規制により、これまで長時間働いていたドライバーの労働時間が短縮されるため、運べる荷物の量が減少し、運送会社の売上や利益に影響が出ると懸念されています。

特にトラックドライバーの賃金は、長時間労働に依存している部分が大きいため、労働時間が減ることで賃金が減少し、さらにドライバー不足が深刻化する可能性もあります。

建設業界の場合

労働時間の上限規制の下では、時間外労働の上限は原則として月45時間、年間360時間となります。ただし、特別な事情がある場合は、労使協定(36協定)を結んで上限を引き上げることができます。

それでも年間720時間、月45時間を超える残業ができるのは年間6回までに制限されています。また、時間外労働と休日労働の合計は、1か月で100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内に抑えなければなりません。

建設業界は、他業種に比べて長時間労働が常態化しており、特に中小企業では短納期要請に応えるために、労働時間の削減が難しい状況です。そのため、今回の規制に対応するためには、適切な工期設定や労働管理の見直しが不可欠です。

また、割増賃金率の引き上げも進められており、労働時間の短縮と効率化が求められています。

医療業界の場合

医師の時間外労働の上限は、原則として月45時間、年間360時間です。ただし、医療業界の特性を考慮して、特別な事情がある場合には、医療機関の特性や医師の役割(A・B・Cの3つの水準に分けられる)に応じて上限が緩和されます。

一般的な業種と同様の規制が適用されるA水準では、時間外労働は年間960時間、月100時間未満まで緩和されます。特別な事情が考慮されるB水準およびC水準では、年間1860時間、月100時間未満です。これらの上限には休日労働も含まれます。

なお、救急医療などの緊急対応を必要とする医療機関や特定地域の医療機関はB水準とされ、高度な技能を求められる医療機関はC水準とされます。

時間外労働の上限規制は、地方や救急医療を担当する医療機関にとっては負担となる可能性があります。そのため、タスクシフトやICTの活用など、業務の効率化が求められています。労働時間の適切な管理を行うため、労働時間管理システムの導入も推奨されます。

時間外労働時間の上限規制に違反した場合の罰則

時間外労働の上限規制に違反した場合には、企業に対して懲役・罰金・行政指導・企業名の公表など、厳しい罰則が科されます。

懲役または罰金については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。違反の発覚後は、労働基準監督署による行政指導が行われますが、改善が見られない場合や違反が悪質であると判断された場合には、企業名が公表されることもあります。

違反の例として、労使協定(36協定)を締結せずに従業員を時間外労働させたり、特別条項付き36協定を結んでいても、上限を超えて労働させたりした場合が該当します。罰則を避けるためには、労働時間の適切な管理と労使協定の厳格な運用が求められます。

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov 法令検索

時間外労働時間の上限規制に違反しないための対策

不適切な時間外労働は、従業員の健康や生産性に悪影響を及ぼすことに加え、企業にとって法的リスクが大きくなります。時間外労働時間の上限規制に違反しないためには、以下のような対策が有効です。

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給与などを改善して増員を図る

時間外労働の上限規制に対応するため、企業はこれまでと同じように業務を行うために増員が必要となることが多いです。しかし、現代の日本では労働力不足が深刻な問題となっており、新たな人材を確保するのは簡単ではありません。

増員が難しい企業では、既存の従業員を維持し、新たな人材を引き付けるために、給与の改善が効果的です。特に、時間外労働が減少することで給与が減る可能性がある場合、基本給を見直して、従業員が安心して働ける環境を提供することが求められます。

また、労働環境の改善も、従業員の健康と生産性を向上させるために不可欠です。勤務間インターバルの導入は、従業員が十分な休息を取れるようにし、疲労の蓄積を防ぐための有効な手段です。これにより、長期的に安定した労働力を確保することができます。

参考:勤務間インターバル制度について|厚生労働省

勤怠管理を徹底する

従来の手作業や紙ベースの勤怠管理では、労働時間の集計ミスやタイムリーな把握が難しいため、長時間労働を見逃すリスクがあります。したがって、正確に労働時間を管理するためには、勤怠管理システムの導入が推奨されます。

勤怠管理システムは自動で労働時間や休暇の管理を行い、管理者は迅速に従業員の状況を把握できます。これにより、正確なデータに基づいて労働時間を調整でき、従業員の健康管理も徹底されます。

特にクラウド型のシステムなら、スマホやタブレットなどのモバイル端末に対応し、どこからでも出退勤の打刻ができるメリットがあります。

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DX推進により生産性向上を図る

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業活動を革新することです。DXの導入により、業務プロセスの自動化が進み、従業員の負担を軽減したり、新しい顧客体験を提供して競争力を高めたりすることが期待できます。

労働時間の上限規制に対応するためには、DXを活用して業務のデジタル化を進めることが有効です。手作業の大部分が自動化され作業効率が向上するため、人手不足の解消や残業時間の削減が可能となり、働き方改革に寄与します。

さらに、DXにより業務の可視化が実現すれば、属人化している作業の標準化が進み、特定の社員に業務が集中するリスクを軽減できます。情報をデジタルデータとして一元管理することで、社内での情報共有が円滑になり、意思決定の迅速化やミスの減少にも繋がります。

これらのDX推進によって、企業は生産性を高めつつ労働時間の短縮を図ることができ、時間外労働の上限規制への違反リスクを低減できます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは|課題や手順を解説

DXは、デジタル技術によりビジネススタイルを変えていくものです。日本でも浸透し始めてきていますが、推進の遅れの課題が残っています。本記事では、DXが求められる理由と、DXでできること、DXを支えるデジタル技術の他、DX推進を成功させるポイントを解説します。

労働時間の長さで従業員を評価しない

かつては長時間労働をする従業員が高く評価される風潮がありましたが、これでは無駄な超過労働を助長し、労働者の健康や企業の生産性にも悪影響を及ぼします。そのため、従業員の評価基準は、労働時間の長さではなく成果や業務効率であることが大切です。

従業員が短い時間でいかに効率的に業務をこなせるか、そしてどのような成果を上げているかに基づく評価制度であることが求められます。これにより、従業員は限られた時間内で生産性を最大化し、会社全体の効率向上に繋がります。

残業を許可制にする

残業許可制とは、労働者が事前に上司に申請し、承認を得た場合にのみ残業を行う仕組みで、無駄な残業を防ぐ効果があります。残業許可制を導入すると、従業員が勝手に残業することがなくなります。

また、事前の申請と承認により、管理者は従業員の残業時間を把握しやすくなります。これにより、法定の時間外労働の上限を超えないよう労働時間を管理しやすくなります。

ただし、残業許可制には注意点があり、許可制のルールを就業規則に明記し、全従業員にしっかりと周知することが大切です。これは、口頭での指示だけでは制度が形骸化し、無効になるリスクがあるためです。

残業申請書や承認書を用意し、その手続きが適切に運用されていることを定期的に確認することも実態把握の上で重要です。

物流業界は「荷主勧告制度」にも注意

荷主勧告制度とは、トラック運送業者の法令違反に対して、荷主(物流の依頼者)が関与している場合に国土交通大臣から荷主に勧告が行われる制度です。これは、時間外労働の上限規制に対応するために導入された制度です。

ドライバーが法定の労働時間を超えて働いた際、荷主がその状況に影響を与えていると判断されると、勧告の対象となり得ます。

荷主がトラック運転手に対して過度な労働を要求したり、無理な納品スケジュールを設定したりした場合、改善が求められます。もしも改善がなされない場合、荷主名と違反内容が公表され、社会的な信用を失うリスクがあります。

荷主が勧告を受けないためには、トラックドライバーの労働環境を考慮したスケジュール管理が必要です。例えば、荷待ち時間を短縮するための取り組みや、合理的な運行スケジュールの設定を心掛けることが重要です。

参考:荷主の皆様ヘ…|国土交通省

まとめ

2024年問題は、2024年4月1日から物流・建設・医療業界に適用される時間外労働の上限規制に関連する課題を指します。この規制では、長時間労働が常態化していたこれらの業界にも、時間外労働に厳しい制限が設けられました。

違反した場合には、企業に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があり、労働基準監督署による行政指導や企業名の公表など、厳しい処罰もあります。違反を避けるためには、労働時間の管理や適切な労使協定の運用が求められています。

また、企業には労働時間の適正化に向けた管理体制の強化が必要であり、増員・労働環境の改善・勤怠管理システムの導入などが対策として有効です。本記事の内容を参考に、労働時間の短縮と生産性の向上を両立し、時間外労働規制の遵守を目指しましょう。

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